トヨタカローラ。 日本だけでなく世界のベーシックカーとして名を轟かせ続けている。 その名前は例えクルマに興味がない人でも耳にしたことはあるのではないだろうか? 1966年の登場以来、セダンを皮切りにさまざまなボディラインナップが登場。 時代にフィットしたさまざまな顔ぶれのなか、兄弟車としてスプリンターも追加される。 クーペ、ミニバン、ハッチバックに近年では派生車種としてSUVタイプのカローラ・クロスも加えられ、世界中のライフスタイルに合わせたクルマとして魅力を放ち続けている。 ■クーペ、SUVにライトバンまで!時代を越えたカローラのラインナップが集結! そんなカローラに愛好家は少なくなく、世界中にファンも多い。 インスタグラムを眺めれば、これまでにまったく見たことがないグレードや度肝を抜くようなカスタムが施された車両も数多く存在し、その歴史の深さと愛され方を伺うことができる。 去る2022年11月5日、日本屈指の自動車博物館としても名高い愛知県、トヨタ博物館にて第三回「COROLLA &SPRINTER DRIVERS MEETING」が開催された。 秋晴れの会場の中には美しく磨き上げられたノーマル個体から、思い思いにカスタムされた数多くのカローラとスプリンターの姿が快音を響かせ流れ込んでくる。 参加台数は総勢で68台。 遠くは九州からも参加者がおり、その熱意に感じ入るものがある。 来場者のラインナップは古くは70系のライトバンから、最新型のカローラクロスのハイブリッドまでざまざまな顔ぶれであり、会場はとても同一車種名のミーティング会場とは思えないほどだ。 会場内にはイギリスから輸入されたカローラツーリングスポーツなど、ワールドワイドに販売されている車種であることを改めて意識させられる車種もあり非常に興味深い。 ■モデルを越えた出会いの場になれば。カローラ・スプリンターの名のもとに集いしオーナーたち 主催であるKA-10さんは今回スプリンターGT(AE111)で参加。 この車両の他にも、サーキット走行用にスプリンタートレノも所有している。 新車当時にカローラレビンのBZ-Gを購入してから、兄弟車であるカローラ、スプリンター系の車種だけで5台も乗り継ぐというから驚きだ。 ▲主催のKA-10さんが所有するのはスプリンターGT(AE111)。引き締まった車高にコーナーポール、レースのシートカバーと、カスタムと往年のセダンらしさが融合する そんなKA-10さんにカローラ・スプリンターのイベントを開催するきっかけについて伺ってみることにした。 「“COROLLA &SPRINTER DRIVERS MEETING”は、2019年に初開催されたイベントです。カローラとスプリンターは長い歴史の中でざまざまなボディタイプが派生しており、それぞれの車種のオフ会は多数行われています。ただ、それらの車種や世代を越えた交流ができれば良いな、と思い、開催する運びとなりました」 新車で販売されている1998年からAE111のスプリンタートレノを所有していたKA-10さん。 インターネット黎明期だった当時、オンラインの掲示板で同車種の集まりが開催されていることを知り、イベントに参加するようになったそうだ。 しかし、時間を重ねるごとに当時のメンバーも次第に別車種に乗り換えるなど、集まる機会自体が自然消滅していってしまったのだとか。 そんな中、近年では車種を取り巻くユーザー層にも変化があり、イベントの在り方にも変化が訪れていったという。 「ここ数年で以前よりもレビンやトレノに乗る若い方々が再び増えてきたのです。しかもオーナー間で活発に交流をしていることを知りました。カローラ系の車種では共有している部品や共通の知識がカスタムやメンテナンスで活きることも多く、イベントの方向性もモデルごとに縛りをつけるのではなく、カローラ・スプリンターという広い括りのイベントとすることで幅広いオーナーさんやクルマと出会うことができる、そんなイベントとしています」 そう伺ってから会場を眺めると、ベテランオーナーさんの姿もあれば、初心者マークをつけたオーナーさんの姿も見える。 若者のクルマ離れなんて言葉が聞こえてきて久しいが、世代を超えて心を惹きつけて止まない力をこの会場からは感じることができる。 ▲まだまだ新しいと思っていた12#系も、国内での販売を終了してから既に16年が経過 ■そこにあるはずのないエンジン!?名機4A-G搭載の4WDワゴン! 会場を見回すと一台のカローラツーリングワゴン(AE104)へと妙に興味が惹かれた。 初代カローラツーリングワゴンは1991年に発売されたレジャー感溢れるステーションワゴンだ。 1997年に大幅なマイナーチェンジが施され、後期型のCMで篠原ともえとユースケサンタマリアが”カロゴン”と謳うモデルだ。 その違和感は年式不相応に綺麗なボディからではなく、そのボンネットフードの中にあった。 ▲外観はGツーリングだが、エンジンはカローラレビン。これまでサーキット走行なども楽しんできたという AE104型の前期カローラツーリングワゴンには4A-Gの設定はないはずだ。 中期型以降から搭載される4A-Gも黒ヘッドの前輪駆動。 こちらのモデルは銀ヘッドの4A-Gで車体側面にはFULLTIME4WDの文字が輝く。 この世界に存在しないはずの組み合わせだ。 すかさず近くにいたオーナーの”るるデブ”さんに話を伺った。 「こちらの車両は1996年に自分が新車で購入した車両です。ワンオーナーで26年間持っているのですが、2004年頃にエンジンのオーバーホールを行う際、AE101系レビンの解体車を丸ごと買い、エンジンやハーネス類、パワステの制御など他車流用の部品を含めて様々なものを移植して完成させました」 外観の変更はカンガルーバーとフォグランプやトムスのホイールに留められているだけに、そのエンジンスワップという行為に潔い輝きを放つ。 4A-Gと4WDとの組み合わせはトラクションも抜群で、雨の日の発進などはお手のものだという。 「排気量が同じ1600ccの4A-FEから4A-Gへと変更したのですが、最初の印象は”とにかく速い!”でした。音も違うし、アクセルの踏み方と速度感が異なることにも驚きがありました。通勤から遊びまでこれ一台でこなす万能マシンです。車体の走行距離は30万キロを越えましたが、カローラのミーティングにはさらに沢山走行している大先輩がいるのでまだまだ頑張りたいですね!」 そういえば、これまで他のカローラミーティングで50万キロ越えの個体を見せていただいたこともある。 頑丈さが都市伝説的に語られるカローラだが、日々の丁寧なメンテナンスや保守なしではここまで生き残ることはきっとできないはずだ。 ■クルマがオーナーを選んだかのような出会い!希少なスプリンターシエロと歩む 会場では普段の街並みではすれ違わないようなモデルと出会うこともある。こちらのスプリンター・シエロも歴代唯一となったモデルだ。 ▲1987年式のスプリンターシエロ、グレードはxi。これまで歴代の愛車は現行モデルなど新しめのクルマが多かったが、先輩の勧めで突如ネオクラ車に目覚めたという E80系をベースとしながら5ドアリフトバックのボディを採用した同車種。 オセアニア地域や欧州、北米ではジオ・プリズムハッチバックとして販売されていた。 いまだヨーロッパの片田舎でごく少数見かける機会があるが、本国の日本ではほぼ見かけることがないといっても過言ではないだろう。 オーナーの”見てのとおり”さんはシエロをインターネットを通じて2018年に入手。 元々クルマ好きではあったものの、旧車に属するクルマを趣味で買うつもりはなかったという。 「元々地方の旧車イベントに会社の先輩と一緒に足を運んでおり、話の流れで”古いクルマを買ってみたらどうか”となり、たまたまオークションで出品されていたシエロを購入する運びとなりました」 オークションでは当時でも驚くほどの安価な値段ながらも、長い間落札されることなく出品が繰り返されていた個体だったという。 そんな個体ながらも、出品者の方から「おおかたの整備は済んでいます。いい買い物でしたね!」といわれたそう。 実際、購入してからの4年間で交換したのはショックアブソーバーのみで現在までトラブルは皆無。 モールや樹脂類に至るまで艶やかさを失っておらず、これまで愛情が掛けられてきたことを感じる。 シエロは“見てのとおり”さんのもとに来てからというもの、各イベントに出没。 購入時からほぼそのままの状態で展示され、いくつかのアワードをも受賞している。 美しい状態で令和の時代まで生き残り、大切にしてくれるオーナーさんと出会うそのときまで待っていたのでは...。 なんて表現すると、少しファンタジックすぎるだろうか。 新旧、カローラとスプリンターに囲まれた一日。 クルマの数だけユーザーとの濃密な物語があるはずだ。 経験や知識の共有、新たな出会いも生まれるミーティングの場に感謝を感じ、これからもクルマと歴史の傍らにこんなイベントがあってくれたら嬉しいと感じてやまない。 [ライター・撮影:TUNA]
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