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File no. 156
《ZACHER/ザッハー》
本連載では、クロージングやシューズ、バッグの老舗ブランドに加えて、メガネや腕時計、フレグランスといった日常小物系のブランドも多数紹介してきた。
その中には創業200年以上の歴史を誇る名門も。
……と、そんなことを考えていたら"あれ?
それらの小物を保管するためのケースにも、歴史のある素敵なブランドが絶対に存在するはずだ"と思い立ち、探して辿り着いたのが今回紹介するドイツ発のブランド《ザッハー》だ。
ドイツという国の歴史に翻弄されながらも、奇跡的に受け継がれた伝統と技術に迫る。
まずは《ザッハー》の歴史を語る上で欠かせない、2つの工場について触れておきたい。
1つ目は、1846年にドイツのザクセン州・アンナベルクに設立された製函工場『ゲオルグ・アドラー』だ。
このアドラー社は伝統と品質を重んじたトラディショナルな製品づくりに邁進、真摯なものづくりと高い品質が認められ、業界内において確固とした地位を確立。
その後は段ボールの製造会社としても名を馳せることとなる。
そして2つ目は、1880年にアドラー社と同様に、製函工場として設立された『ロベルト・フリードリッヒ』。
こちらのフリードリッヒ社はアドラー社とは異なり、常識に捉われない斬新な発想から開発した製品を提供し、話題に事欠かない存在だった。
一部の特製ケースに関しては"フリードリッヒの気品あふれる作品"と称されるほど人気となった。
同業種だったアドラー社とフリードリッヒ社はお互いに切磋琢磨し、技術・品質・機能・デザインを高め合いながら成長を続けた。
しかし、第一次世界大戦、世界規模のインフレ、第二次世界大戦など、回避不可能な困難が次々と二社に降り掛かった。
さらに、1972年にはドイツの共産主義体制への移行により、なんと国営化されてしまうのだ。
しかし、1989年の再統一を機に、長年にわたるケース製造のノウハウを途絶えさせないため、ゲルヒルト・ザッハーがベンチャー企業として新会社を設立する。
こうして、歴史ある2つの工場の経験や技術、それを受け継ぐ熟練職人といった人材までを失うことなく、《ザッハー》ブランドが誕生した。
日本で手に入る《ザッハー》製品のほぼすべてがメイド・イン・ジャーマニーで、熟練職人の手を介して一点一点丁寧に仕上げられている。
写真の「メンズトレイ」は、同社の長い歴史と伝統、高い技術力、優れた素材を堪能できる逸品。大切な小物たちの保管用として、ぜひとも手に入れておきたい。
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