組み合わせ次第であらゆる環境に対応可能な、画期的レイヤリングシステム。



アウトドアウエアのレイヤリングから着想を得て開発されたアメリカ軍の戦闘服システムECWCS(エクワックス)。極端な寒冷地でも対応できるよう、レベル1〜レベル7まで段階的にアイテムが用意されており、それらの組み合わせにより、あらゆる環境に対応できるようになっている。


今回は、この7段階のアイテムを、レベル1のベースレイヤーから順を追ってご紹介していく。


ECWCSの背景やポイントについてはこちらの記事をチェック!


LEVEL 1 身体にもっとも近いベースレイヤー。


レベル1は基本的にほとんどの状況で着用することになるベースレイヤー。化繊の吸汗速乾生地を採用し、汗をかいても体をドライに保つのはアウトドアウェアの考え方とまったく一緒。薄くて軽いシルクウェイトタイプから少し厚手のものまで、いくつかの種類がある。


SILKWEIGHT UNDERSHIRT &DRAWERS
ポーラーテックのポリエステル素材によるアンダーウエアの上下セット。摩擦防止のフラットロックシーム、袖口にサムホール付き。PECKHAM社製。’06年、 第二世代。¥5616

 


LEVEL 2 保温性を高めるセカンドレイヤー。


氷点下になる環境で着用を推奨されているセカンドレイヤー。保温性が高いだけでなく、通気性や吸汗性にも優れるポーラーテック社 のパワーグリッドが採用されており、レベル1やレベル3と組み合わせるだけでなく、単体でベースレイヤーとして使うこともある。


COLD WEATHER MID WEIGHT SHIRT
ポーラーテック社のパワーグリッドフリ ースを採用。袖口にサムホール、衿元にはファスナートップが肌に干渉しないようにカバーを装備。PECKHAM社製。 ’07年、第三世代。¥3024

 


LEVEL 3 万能で耐久性に優れるフリース。


アウトドアウエアの世界では化繊インサレーションの台頭により、 主流ではなくなってきたフリースだが、軍用品としては未だ健在。やはりタフで扱いやすい点が重宝するのだろう。擦り切れやすい袖が補強されていたり、ワッペンベースが備わるのも軍用品ならでは。


COLD WEATHER FLEECE JACKET
ボアフリースをベースにパワーグリッドフリースを身頃脇に採用した。首や肩、腕には補強用ナイロンも装備。GOODWILL INDUSTRIES OF SOUTH FLORIDA社製。’07年、第三世代。¥13824

COLD WEATHER SYNTHETIC FLEECE SHIRT
第一世代のミッドレイヤーはパイル素材だったが、この第二世代ではじめてフリースが採用された。近年のものとはディテールに違いが見られる。PECK HAM社製。’03年。¥10584

 


LEVEL 4〜6は、次ページをチェック!


 



LEVEL 4 薄くて軽いウインドシェル。


気温が氷点下を下回らない、比較的暖かい気候の際に着用が推奨されているレベル4。いわゆるウインドシェルの類だが、ポケットやワッペンベースの配置は軍用品ならでは。また生地もアウトドア用のものに比べると、やや厚手で堅牢性の高いものが使われている。


WIND SHIRT
ECWCSアイテムで唯一パタゴニアが供給していたのがこちらのウインドシャツ。迷彩はUCP(Universal Camouflage Pattern)と呼ばれるデジタルカモ。’05年、第三世代。¥21600

 


COLD WEATHER WIND JACKET
撥水加工が施された、薄くストレッチ性のあるマルチカム迷彩生地を使ったウインドジャケット。BLIND INDUSTRIES AND SERVICES OF MARYLAND社製。’11年、第三世代。¥19440

 


LEVEL 5 快適性に優れるソフトシェル。


第二世代までアウターはゴアテックスのハードシェルのみだったが、2007年に登場した第三世代では撥水加工を施したソフトシェルがレベル5として登場。悪天候時以外の寒冷下では、ゴアテックスのレベル6ではなく、こちらの着用が推奨されるようになった。


COLD WEATHER SOFT SHELL JACKET &TROUSERS
防風・通気性を持ち伸縮性にも優れたソフトシェルのセットアップ。ボトムは靴を履いたまま脱着できるようファスナーが付属。上/’14年・下/ ’13年、第三世代。¥47304

 


LEVEL 6 ゴアテックス採用のハードシェル。


1985年の登場以来、ECWCSを象徴するアイテムとなっているのが、このゴアテックスパーカ。ウッドランド迷彩のものは古いモデルだが、これが真っ先に思い浮かぶというヒトは多いだろう。最初期のモデルはマーモット社のレインシェルがデザインの元になっている。


COLD WEATHER PARKA(2nd)
右の前期型に続く中期型はフードの脱着式ファーが 最大の特徴。前立てが太くなるなどの細かい変更も見られる。TENNESSEE APPAREL社製。’00年、 第一世代。¥19990

 


US NAVY WORKING PARKA
こちらもECWCSのジャケットから派生した海軍仕様のもの。右の空軍仕様もそうだが、陸軍のものとはディテールに違いが見られる。TENNESSEE APPAREL社製。’08年。¥15120

 


次ページでは、最強の防寒性を誇るLEVEL 7をご紹介。



LEVEL 7 高い防寒性を誇る最終レイヤー。


第三世代で登場したプリマロフトを採用するアウターウエアがレベル7。レベル1、2、3、5と重ねて着用することで、-46°Cまで対応が可能だ。


ワイルドシングス社の最初期のUSMC向けレベル7モデルは、品質表示ラベルにスマイルマークがプリントされていた。これが通称ハッピースーツと呼ばれるようになった理由。

開発はプリマロフトをいち早く採用したワイルドシングス社の主導で行われ、海兵隊向けの通称ハッピースーツは特に有名。


 


EXTREME COLD WEATHER PARKA
ワイルドシングスのハッピージャケットの後期型。撥水生地エピックや保温材プリマロフトはそのままにファスナーの仕様など一部に変更が見られる。’07年。参考商品

 


この他にも、特殊部隊用にさらに先鋭的なPCUというシステムも開発されている。こちらについては、次回の記事でご紹介するので、乞うご期待!



  • Edit/Takatoshi Akutagawa(Thunderbird Design)

  • Photo/Hiroyuki Yamada Styling/Takahiro Nakajima


 


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情報提供元: GO OUT
記事名:「 極地まで対応する、7段階のレイヤリングシステムを解剖。【米軍の戦闘服「ECWCS」とは?】