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ドライブ旅をはじめる前に、まずはリーさんの愛車からご紹介。
これまで「テラノ」「ハリアー」と乗り継ぎ、現在はホンダの「MDX」に乗っている。2000年代前半に生産されていた、いわゆる高級SUV。
いまでこそ聞き慣れた高級SUVというワードだけれど、その当時、そんなジャンルや言葉も一般的ではなく、時代が早過ぎたのか、惜しまれながら2006年に生産を終えている。
「購入したのは2021年なんですけど、当初は〈三菱〉の『チャレンジャー』が欲しかったんです。で、茨城で見つかって、クルマに詳しい友人と一緒に見に行ってみると状態が悪くて。なくなく諦めて、クルマで帰ってる途中に友人から『MDXとかいいじゃん』って言われたんです。ぼく、クルマに詳しくないから全然知らなかったんですけど、ちょうどそんな話をしているタイミングで入ったパーキングに、たまたまMDXがあって。これは縁だなと思って、そこからすぐ検索したら近くに取り扱ってる中古車を見つけて。即決でしたね」
DIY好きのリーさんだから、クルマを選ぶ基準は、まずはベニヤのサブロクサイズ(910mm × 1820mm)が入ること。「MDX」であれば、そのサイズも楽々積むことができる。家族と出かけることも多いから、みんなが快適に乗れるのも大切。もちろん見た目も。
「ただ、俺ひとりだったら、軽トラがいいですけどね(笑)」
ではでは、そんな愛車に乗って、いざ桐生へ出発。自由が丘で待ち合わせて、そこから桐生まで約2時間30分のドライブへ。ルートはざっくりこんな感じ。
関越道に乗って高速を順調に進んでいると、リーさんが中央分離帯にある小さな斜面を見ながら一言「あそこのバンク、いい感じだね」。
さすがはプロスケーター。スケートボードで攻めたいスポットが、街のなかで浮かびあがってくる。むしろ、それを探すためにドライブをすることもある。
「例えば、ちょっと前は千葉まで下道で行って、いろんな道を通ってポイントを探すようなこともしましたね。縁石とか、階段とか、バンクとか。だから高速に限らずなんだけど、やっぱり運転していても、自然とそういうポイントに目が行くんですよ」
途中、初見じゃなんて読むかわからないPAなんかに寄りながら(高速道路あるある)、無事、桐生市に到着。桐生と言えば、篠原涼子、織物、うどん。ということで、まずは名店「しみずや」で腹ごしらえ。
桐生の小麦で作られるうどんを求めて、県外からも多くのお客さんがやってくる「しみずや」。メニューも豊富で、なかには「くるめつけ汁 ブルーチーズ入り」なる、攻めたものもある。
リーさんのチョイスは、桑茶を使ったものと、桐生ならではのひもかわうどんがセットになった「2色盛り」。醤油の効いたシャッキリしたつけ汁に麺をくぐらせ、ズズズと流し込んだら、次に向かうは、今回のメインの目的地。
東京まで、その名が轟く桐生の名店「パーヴェイヤーズ」。リーさんのブランド〈AlexanderLeeChang〉も取り扱い中。
「オーナーの小林くんとは、この事業をする前から仕事を一緒にしていたりしていて。その縁もあって、お店を立ち上げるってなったときに、取り扱いたいと言ってくれたんです。でね、ここはアウトドアショップって言っときながら、アウトドアに限らず、雑貨だったり食品もあるんです。そのどれもが、スタッフが本当に好きなモノ。その考え方に、すごく賛同できるところがあって。なんかこう、1つひとつのブランドにすごい思いが詰まってるというかね」
アウトドアショップとして認知はされているけれど、リーさんが言うように、愛でたくなる器や雑貨、家具など、全国から選りすぐったのモノが、元鉄工所として使われていた広いスペースに陳列されている。この規模とラインナップは、首都圏ではなかなかお目にかかれない。
加えて、「パーヴェイヤーズ」はプロダクトを販売するだけじゃない。1階はカフェになっていて、コーヒーマシンはラテアートのチャンピオンシップで基準になっているマシン。コーヒー豆は、世界にその名が知られるバリスタ・澤田洋史さんがローストしたものが使われている。そこも一切、妥協なし。
そして、なにより、ビールだ。ここに来たら、ビールを飲むべし。
「パーヴェイヤーズ」は、2021年からFARCRY BREWINGを運営している。ブルワーは、麹を使ったビール醸造の第一人者である阿久澤健志さん。湧水源をいくつも有する水が豊かな桐生という土地で作られるビールは、どれもうまい!
タップもあって、できたてのビールをいただける。夏なんかは、ほんっとうに最高なのだ。ただリーさん、この日は運転のためコーヒーで。
「ここって、何時間もいれちゃうんだよね。買い物したあと、ここでメシ食べて、コーヒー飲んでね」
ちなみに、パーヴェイヤーズは最近、店からクルマで30分ほどの場所にある「利平茶屋森林公園キャンプ場」をオープン。標高1,000メートルの赤城山登山口に位置し、キャンプやBBQをはじめ、釣りやテントサウナなどのアクティビティも楽しめる。
そこにも立ち寄りたいところだけど、今日の企画は1DAYドライブ。時間も限りがあるし、そろそろ次に、向かいましょ。
どこへ行ったって逃げ場がないくらい、とにかく暑い。クルマに乗っていたって、太陽がガラス越しに突き刺してくる。少しでも暑気払いをせねばとやってきたのは、ジェラート屋「WABISABIYA」。
ここがまた、うまいんだ。
本場イタリアでも修行経験のある高野欽市さんが、地元の食材で作るジェラート。定番が5種類で、月替りのフレーバーが5種類、常時用意されている。
リーさんが選んだのは、定番メニューの「桐生の牛乳」と「ヘーゼルナッツほうじ茶」をコーンで。コーンが焼きたてだと知って、リーさんも「焼きたてですか? 最高じゃないっすか!」
味はもう最高で、カリッカリのコーンとジェラートのマリアージュがたまらない。後味もすっきりしているから、コーヒーとか、不要です。
「ヘーゼルナッツほうじ茶」は、コンテストで受賞歴もあるこの店のスペシャリテ。桐生に来た際は、ぜひぜひ御賞味あれ。
時刻は15時過ぎ。「次、どこ行く?」なんて話していると、誰からともなく「パークにでも行く?」
リーさんと言えばスケートボード。そりゃ行くっきゃないのだけど、いかんせん、どこのパークも遠い。グーグルマップで見ると、桐生の隣、足利市の山奥に「足利スケートパーク」と出てきた。とりあえず、クルマを走らせることに。
近くまで行くと、木々が生い茂り、舗装もそこそこ。「こんな山奥にないでしょ〜」「むしろ、めちゃくちゃ人いて襲われたらどうする?」なんて会話をしていたら、ピンが指し示す場所に到着。おっ、なんか人がいる。おっ、パークっぽい!
「こんちわ〜」と入っていくと、ローカルたちがDIYで作ったパークが出現。そこでたまたま作業していたのが、足利市でスケートボードショップ「DAMAGED WORKS」を営む松井さん。彼を中心にパークの運営と管理を行っている。
7年前にオープンしたこのパークは「誰がきてもOKです。公園みたいな感じで使ってもらえたら」と松井さん。
あいさつもそこそこに、クルマに常に積んであるというスケートボードを取り出して早速滑り出すリーさん。「入院していて運動不足だったんで、いま、めちゃくちゃ下手なんです。なんで派手な技はなしで」と言いながらプッシュを繰り返す。ローカルが作った地面を味わうように、じっくり滑っていく。
「ここのパークは、決して新しくはないけど、愛がある感じがして好きですね。ローカルが大事にしている感じが伝わってくる。みんながDIYで作って、オリジナリティがあってね」
30分ほど楽しんで、気づけば時刻は17時。そろそろ帰路につく時間。
スケートパークをあとにし、写真はないのだけれどたまたま見つけたロードサイドのスリフトショップへ寄ったり、群馬名物の「登利平」の弁当をテイクアウトして、1DAYドライブは無事、終了。
食べて、買って、滑っての1日。リーさん、今日のドライブ、どうでした?
「ダメだったとは言えなくない?(笑) でも、本当に楽しかったですよ。いろいろ巡れたしね」
近くもなく、遠くもない。けれど2時間もクルマを走らせれば、都心とはまったく違う景色が見られて、文化も風土も様変わりして旅気分が味わえる。飛行機や電車に乗らなくたって、クルマでピューと行けば、そこは異文化。
クルマ離れが叫ばれて久しいけれど、やっぱりクルマは、自由でいい。思いつくまま、気の向くまま、どこまでだって行けちゃうから。パークなんて、クルマがなきゃ行けないし、そういうとこでこそ、いい出会いがあったりする。
最後に、リーさん流のドライブの醍醐味を。
「目的地に行くこともだけど、ドライブって、手は塞がってしまうけど頭の中は自由じゃない? その時間に楽しいアイデアとか、閃きとか、頭の整理ができる感じも好きなんですよね。特に帰り道は目的も果たしたあとだから、余計、頭の整理が捗るというか。その時間が次の仕事に繋がったり、自分の人生と向き合う時間にもなるから、ボクはドライブが好きなんですよ」
次回は、誰と、どんな愛車で、どこへ行くのか。乞うご期待。
Photo/Shouta Kikuchi
The post あの人と、あの愛車で行く、群馬・桐生日帰りツアー【ワンデイドライブ #1】 first appeared on GO OUT.