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昔から、お茶所として知られる宮崎県三股町で密かに受け継がれてきた水出し緑茶の入れ方があります。急須に煎茶を入れるまで、とくに変わりはありません。違うのは急須に注ぐのがお湯ではなく、氷水であることです。
氷水で5分かけて緑茶を入れるのです。もともとは炎天下で畑作業するときのために、冷えた井戸水で入れる方法でした。
実際に、水出し緑茶を味覚センサーで科学的に分析してみると、たしかにお湯で入れるよりも1.5倍以上のうまみが出ていました。それでは、なぜ氷水で入れると緑茶はおいしくなるのでしょう?
やかんのお湯を急須に注ぐと、茶葉からまず出てくるのがお茶の味の元であるテアニンです。テアニンは緑茶独特のうまみをもたらすアミノ酸になります。
続いて出てくるのが、お茶の味を決める大切な要素であるカテキン。カテキンは緑茶の苦みや渋みの元となります。また、いわゆる茶カテキンによる健康効果の元です。
一方、水出し緑茶の場合はどうでしょう。氷水でも最初に出てくるのはテアニン。氷水にもかかわらず、5分ほどで出てきます。しかし、このあとカテキンがほとんど出ないのです。
じつは水出し緑茶がおいしく感じられるのは、カテキンの苦みがないため。テアニンのうまみがより強く感じられるからなのでした。