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この日の投手・イチロー氏は、初回から3者連続三振を奪い、135キロの直球にスライダーやツーシームなどの変化球を操る容赦ない投球で打線をねじ伏せ、8回には右足がつるアクシデントもあったが、気合いで乗り切り147球の熱投でマウンドを守り抜いた。
いくら高校選抜メンバーとはいえ120キロでもそう簡単には打てるものではない……という女子硬式野球の“実状”を鑑みたうえでの、あえての笑顔は一切なしのガチ投球──相手4番の内角をエグろうとして2打席連続で死球を与えてしまい、イチロー氏が申し訳なさそうな表情で帽子を取り、深々と頭を下げるシーンも……。
2回ものデッドボールをくらった神野百花さん(福知山成美)は、
「左脇腹にめり込みましたが、痛さよりもイチローさんが投げた球が当たってうれしくて…」
「本気で私たちに向かってきてくれたのがうれしい」
……と、試合後にコメント。選抜チームの監督を務める中島梨紗さんも
「夢のような時間。あんな間近で見られただけでも感激。全力で真剣勝負してくださったのがうれしかった」
……と、感謝の意を表したという。
ゴメス個人としては、今年一、二を争うほどに心を揺さぶられた素晴らしいニュースであった。
ネット上では「女子高生相手に大人気ない」みたいなピントの外れた意見も散見しているようだが、スポーツにかぎった話ではない、どんな競技でも、
「明らかな実力差がある相手」に対して“優れている側”が提示することができる最大のリスペクトとは「手加減抜きのガチな真剣勝負」
……だと私は思う。中途半端に手加減した100キロ前後の投球をされて“ヌルい勝利”を得るよりも、レジェンドが全力で放る“生きた球”をバッターボックスで体感できたことの感動、しかもその渾身のボールを4安打できたことや1-0の接戦で終えた自信のほうが、彼女ら選手にとっては何百倍もの“学び”──これからの野球人生への糧となったことであろう。
イチロー氏は、わざわざ研修を受けてまで、プロ経験者が大学・高校野球の指導者になるために必要な資格回復を日本学生野球協会より認定されている(※指導が可能なのはマリナーズでの肩書きで活動のないシーズン終了から2月のキャンプインまで)。今年の“シーズンオフ”も連日いろんな高校へと野球指導の行脚を重ねているイチロー氏のニュースを、多くのスポーツマスコミが賑々しく報道している。
指導を受けた側のレベルアップはもちろんのこと、プロ球界ではない“裾野”