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■寂しさを紛らわせる恋愛は幸せにはなれない
親との折り合いが悪く、大卒後、ひとり暮らしを始めたのはアヤノさん(29歳)。ところが平日は仕事と家の往復、週末は部屋にこもることが多く、寂しくてたまらなくなっていった。そんなとき知り合ったのが、会社近くでばったり会った中学時代の同級生だった。
「彼は当時、クラスで目立っていた勉強もスポーツもできるタイプの男の子でした。会社が近いことがわかって、ランチをしたり飲みに行ったりしてつきあうようになりました。彼は明るくて、私が親と折り合いが悪いと暗い話をすると、逆におもしろい話をして慰めてくれる。この人と一緒にいたら、自分も明るく変われると思ったんです」
ところが実はとんでもないヤツだったと彼女は言う。
「ひとりで寂しいから、毎日のように彼が来てくれるのがうれしくて。1ヶ月後には私の部屋で一緒に住むようになっていました。その1ヶ月後には会社を辞めていたようですね。ただ、いつも私のほうが先に家を出ていたのでわからなかった」
一緒に住んで半年ほどたったころ、彼女が帰宅すると、彼が真っ暗な部屋の中で膝を抱えていた。
「どうしたのと聞いたら、会社でミスをして1,000万単位の損失を出してしまった、せめて半分くらい弁償しろと言われている、と。彼は泣いていました。私、すごくショックで。彼はいつもの明るさも失っていた。私がなんとかしなければと思って、高校生のころから大事にためてきた300万円を渡したんです。彼は号泣しながら、『君には迷惑をかけたくなかったのに』って。『本気で愛してる。問題が解決したら結婚しよう』とも。私は彼のためになるお金なら惜しいとは思いませんでした」
だが、翌日から彼とはまったく連絡が取れなくなった。彼が勤めているはずの会社に電話をすると、ずいぶん前にやめましたよという話。
「だまされたなんて思いもよらなかったから、警察に相談したし、彼の実家を探したりしたんですが、実家もかなり前に越していたようで、親の行方もわからない」
それが4年前のこと。そして2年前にも彼女は独身だと言っていた男に実は妻子がいることがわかり、大失恋。
「最近、ようやくわかったんです。寂しいからつけ込まれるんだと。ひとりで生きていけるようにならないといけないんですよね。やっと目が覚めました」
孤独は自分自身の深いところに存在している。それは誰かに頼ることで消えるものではないのだ。誰かといれば一瞬、気はまぎれるが「孤独」はなくならない。そして「孤独」は、決して悪いものだとは言い切れないのだ。
孤独をうまく楽しみ、コントロールすることで、人生はより豊かになっていくのではないだろうか。
■母の再婚で家にいられなくなって
幼いころに親の離婚で、母ひとり子ひとりの生活を続けてきたハルミさん(25歳)。高校卒業後、専門学校に入学。20歳のときに学校でとった資格を生かして働き始めた。
「苦労してきた母にラクをさせてあげたい。そう思っていました。初任給で近くの温泉へ一泊旅行したときは、母は泣いて喜んでくれました」
それなのに、その旅行から帰ってきたとき、母は再婚すると彼女に告げた。これからは自分が母をフォローしていきたいと思っていたハルミさんは、少なからずショックを受けた。母は「女」として生きようとしたのだ、自分の母ではなくて。
「20歳とはいえまだ親離れしていなかったんでしょうね。母が再婚すると聞いて、私は家を出る決意をしました。それ以来、母に会うのは年に1度くらいですね。母の再婚相手は悪い人ではないけど、私にとっては赤の他人ですから」
当時はラブラブな45歳の母を、20歳の娘はやや冷淡に眺めていた。ひとりで生きてやると覚悟も決めていた。だが最近になって、ひとり暮らしが心の負担になっている。
「寂しいんです、やはり。恋人がいた時期もあったけど、その彼には家庭があった。家庭に戻っていく彼を見送るのがつらかったし、私の父の浮気で離婚したと聞いていたので、私自身が不倫していたら負の連鎖だわと思って、私から別れました」
仕事はやりがいもあったが、何かが足りない、満たされない。
半年ほど前、彼女は新しい町に引っ越した。たまたま隣に30代前半の女性がいて、彼女に誘われて地元のバーに行った。
「それからたまにそこに寄るようになりました。地元の常連さんと知り合い、秋にはみんなでキャンプに行って。家族ほど濃い関係ではないけど、単なる友だちよりは深くつきあえる。こういう疑似家族的な関係が、私には向いているんだなと思いました」
人は完全にひとりでは生きていけない。ひとりで行き詰まらないよう、いろいろなところに自分の居場所を作っておくことが重要なのだ。