「先生ッ、血糖値が測れません!高すぎてエラーです」






意識を失った男性が救急車で運ばれてきました。運ばれてきた伊吹さん(仮名、44歳、男性)に持病はなく、通院歴もありません。





一緒に対応してくれているナースが血糖値を測ろうとすると、測定可能な範囲を振り切ってエラー表示。慌ただしく採血し、点滴の指示を出します。検査結果を見ると、伊吹さんの血糖値は1200mg/dL。異常な高血糖で、健常者の空腹時血糖値の10倍以上です。





診断は「高浸透圧高血糖症候群」。ICUに即入院です。異常に血糖値が高くなり、血液が酸性に偏った「ケトアシドーシス」という状態でした。





大量の点滴とインスリンの投与により伊吹さんの意識が戻ったのは2日後。彼の話を聞き、ようやく入院までの経緯が明らかになりました。



 



 



 



■熱中症対策で飲んでいたつもりが…



 





伊吹さんは週末、炎天下に会社のソフトボール大会に参加。熱中症対策としてスポーツドリンクを5リットルほど飲んだそうです。その夜も喉の渇きが収まらず、体もだるいため、熱中症を心配した伊吹さんはさらにスポーツドリンクを3リットルほど追加。しかし、喉の渇きは収まるどころか更に渇くいっぽう。





日に日に倦怠感が増し、食欲もなく、喉ばかりが渇いて、飲めば飲むほどトイレが近くなるばかり。数分おきにトイレに立つため仕事にならず、ようやく病院に行くため早退を申し出ようとした矢先、意識を失ったのでした……。





これ、典型的な「清涼飲料水ケトアシドーシス」の経過です。別名「ペットボトル症候群」とも呼ばれ、スポーツドリンクやソフトドリンクなど、糖質の多い飲料を大量に摂取することで急激な高血糖状態を引き起こし、最悪の場合、伊吹さんのような昏睡状態から死に至ることもあります。





熱中症対策として、良かれと思って飲んでいたスポーツドリンクが、飲み過ぎのあまり、思わぬ病を引き起こしたのです。





スポーツドリンクは電解質やエネルギーの補給に有用ではあるものの、そこに含まれる糖質が血糖値を上昇させます。あえてスポーツドリンクを飲まなくても、運動前からこまめに水分摂取し、普段どおり食事を摂っていれば、わたしたちの体は水分と電解質(ナトリウムやカリウム)のバランスを上手に調整してくれます。





日常的には水やお茶など、糖質の入っていないもので水分補給しつつ、たまに清涼飲料水を嗜んで、暑い夏を安全かつ快適に乗り切っていきたいものですね。その後、伊吹さんの血糖値は正常となり、退院して職場復帰しました。もうスポーツドリンクは飲まないそうです。



 



 



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情報提供元: citrus
記事名:「 熱中症対策のつもりが、2日間も意識を失うはめに…命までも脅かす恐ろしい飲み物とは?【Dr.山村の診察余録】