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3月25日に放送されたTOKYO MXの朝のニュース生番組『モーニングCROSS』で、『FINDERS』の創刊編集長・米田智彦さんが、漫画やドラマにおけるタバコ描写規制の是非について持論を語った……らしい。
少女漫画誌『りぼん』で、1995年からギャグ漫画『ハイスコア』を連載している漫画家の津山ちなみさんが、タバコ描写規制によって、作品に登場する34歳のキャラクターにキセルを持たせることができなくなったと、自身のツイッターであきらかに。このツイートは瞬く間に拡散され「大人のキャラクターへの規制はやりすぎ」、「表現の自由を守る立場であるはずの出版社の姿勢に驚き」など、さまざまな声があがったという。
さらには、公益社団法人『受動喫煙撲滅機構』が、NHK大河ドラマ『いだてん』の喫煙場面に抗議申し立ても──これらの風潮を受け、米田さんが番組中で、
「明治時代、舶来ものの贅沢品として、タバコを嗜むというのは紳士の楽しみだったわけです」
「暴力や残虐なシーンはOKで、タバコはダメなのか、お酒はダメなのか」
……と、問題提起をし、それを受けてジャーナリストの中村竜太さんも
「やり過ぎだと思う」
「結局は自粛を決断しているところの責任逃れ。何か言われたら困るから、過剰にそうしているだけ」
……と、表現の自由を守るべき出版社の対応を批判した……のだそう。
新作でこれから生まれてくる、現在ないし近未来を舞台とするニューキャラにタバコを吸わせないようにするのは、“時流にマッチした配慮”という意味で、むしろそうすべきだと私も思う。が、前出のもう20年以上(まだタバコに対するコンプライアンスが、さして厳しくなかったころから)続いている『ハイスコア』のキャラ、そして『ルパン三世』の次元大介、『ワンピース』のサンジ……と、タバコをトレードマークとする古参キャラに、今さら禁煙させんでも……。あと、新作であっても、時代背景がたとえばそれこそ、どの飲食店でも駅のプラットホームでもタバコが吸い放題だった「昭和」ならば、そこからヒステリックに“リアリティ”を奪い取ってしまうのは、いかながものか? 漫画にしてもドラマにしても映画にしても、原則として、フィクションの作品は「大きな嘘はついてもいいけど小さな嘘はついてはいけない」のがテッパンのセオリーなのだからして……。
ようやく……ではあるのかもしれないが、ちまたの愛煙家もだいぶマナーが良くなってきているではないか。(少なくとも都心では)歩きタバコをする人もほとんど見かけないし、タバコが吸えるお店や喫煙所を目敏く探しながら、きちんと棲み分け、分煙をしている。これでも嫌煙家の皆さまがご不満ならば、何度も何度も私があらゆるメディアで書きちぎってきたとおり、タバコを大麻や覚醒剤やコカイン同様、違法にしちゃえばいいのである。
つい最近観た地上波のドラマ『二つの祖国』(山崎豊子原作)では、主役の小栗旬をはじめとする然るべき登場人物が、然るべき場面でタバコを小道具として、じつに上手く使っていた。素晴らしい英断だと言えよう。戦後まもなくあたりのタバコとは、在日米軍や日本国民のあいだでもポイ捨てが当たり前の“日常品”だったのだ。そんな細部へのこだわりを安易にないがしろにしてしまうロジックは「作品」……どころか「歴史」に対する冒涜だとすら、私は猛然と主張したい。最悪でも「本作品は当時を忠実に再現するため、喫煙シーンが多く登場します」のテロップ一つでも流しときゃあ、それで充分でしょ!