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「先生、木曜日のカンファレンスって、いつも眠くなるんですぅ…」
私の所属する糖尿病内科で研修中の女医が、眠気に抗いながら、アンニュイに話しかけてきます。鳥居さん(仮名、25歳)は美容皮膚科志望、アイメイクバッチリのいかにも最近の女医といった感じの1年目研修医です。
暗い会議室に教授、准教授を迎えておこなわれるカンファレンスは、緊張感はあるものの、昼食後の満腹感と午後の陽気で睡魔に襲われることもしばしば。新米研修医が、専門的な議論が交わされるカンファレンスで眠くなるのは、容易に想像できます。ですが鳥居さんの話を聞くと、様子が違います。ほかの日のカンファレンスは眠くならない、「木曜日のカンファレンスだけ」眠くなる、というのです……。さて、木曜日のカンファレンスはほかの日と何が違うのでしょうか。
■毎週木曜日に病院の近くで……
彼女のシフトをチェックしました。当直が多いわけでもなく、糖尿病内科は激務というほど忙しい科ではありません。水曜日に夜遊びしているわけでもなさそうです。考えられるのはひとつ。カンファレンス前のランチです。
「セットのミニサラダから食べているから問題ないですよぉ」。女子にありがちな言い訳をしながら鳥居さんは語り始めました。ふだんはお弁当を持ってくることが多いのですが、木曜日だけは、病院近くのイタリアンレストランでパスタランチを食べているそうです。なぜ毎週木曜日かというと、そのお店で毎週木曜日「パスタ大盛り無料サービス」を行っていたからだとか。そのお店の大盛りパスタは結構な量です。満腹感プラス血糖値急上昇間違いなしの特大ランチ。これは眠くなります。
食後の眠気の一因に、血糖値の急激な上昇があります。昼食に丼ものや麺類といった炭水化物中心の食事を摂ったときほど、眠気を強く感じないでしょうか? 糖尿病でない人でも、食事内容によっては急激に血糖値が上昇し、糖尿病と大差ないほどの高い血糖値に達することがあります。
わたしは糖尿病ではありませんが、毎日24時間、血糖値を測定していると、ラーメン、うどん、カレーライスといった炭水化物中心の食事の直後には血糖値が200mg/dL近くまで上がることがあります。そして、そういうときはとりわけ強い睡魔に襲われます。
■対策は簡単。アレを無しにするだけでOK
私は鳥居さんに課題を出しました。カンファレンス前、同じイタリアンのお店で出来るだけ炭水化物を控えて腹八分目のランチにトライしてもらったのです。
小麦粉から作られたピザやパスタが並ぶイタリアンで,炭水化物を控えるのはなかなか難しい課題です。鳥居さんのチョイスは、トマトとモッツァレラチーズ、タコとイカのマリネ、サーモンのエスカベッシュ(イタリア風南蛮漬)、ブラックコーヒー、ティラミス。
ティラミス以外は、メインの食材に小麦、米、芋類といった炭水化物は使われておらず、野菜とタンパク質中心のナイスチョイスです。ティラミスについて指摘すると,「食後のデザートないと,女子は働けません!」というよくわからない言い訳……。
“炭水化物控えめランチ”の成果はというと、その日の午後、彼女はカンファレンスで眠くならなかったとのこと。彼女もわたしと同様、血糖値が急上昇すると眠くなるタイプのようです。
午後の眠気が強い方は、ランチの内容を見直すことで睡魔から逃れられるかもしれません。調味料や調理に使う糖質まで厳密に控える必要はありません。いつもパスタやラーメンで大盛りを頼む方は並み盛りに。そもそも並み盛りの方は炭水化物のないメニューにするのです。定食屋さんならばライス無しにしてしまえば簡単です。
「生姜焼き定食、ライス無し!」「アジの開き定食、ライス無し!」「ステーキランチ、ライス無し!」――「ライス無し!」の響きで,健康意識高い系として周囲から一目置かれることでしょう。
よく聞かれるのですが、たっぷりの炭水化物を食べたあとに血糖値の上昇を食い止める飲み物や食べ物ははありません。ザンネンですが……。午後に眠くなりそうな会議が待っている日には,ランチの炭水化物を控えることで有意義に仕事ができると良いですね。