出典:『夫のちんぽが入らない』特設サイトより


コミック化に続いて、来年の2019年には実写ドラマ化(ネット配信)までが決まったらしい、主婦の「こだま」さん(※ペンネーム)が2017年に出版した『夫のちんぽが入らない』(扶桑社)であるが、『弁護士ドットコム』よると、タイトルがあまりに直接的な表現であることから、出版当初から版元が「お客さまがタイトルを声に出して言わなくても書店に注文できる申込書」を用意するなど、いろんな配慮が成されてきた……のだそう。



 



ところが、書店では女性店員にこのタイトルをわざと言わせる男性客が続出しているという。作家の林真理子氏が『週刊文春』11月22日の連載コラムで、



 




ある地方の書店では、同書を販売したところ、若い女性店員を狙い、とぼけたふりをしてタイトルを言わせたり、問い合わせの電話をして発音させたりする男性客がわらわら寄ってきた。




 



……とし、「本を売る末端で、店員さんがこんな嫌な思いをしていることを、作者や編集者は知っているのだろうか」と疑問を投げかけた……んだとか。



 



それが本当なのだとしたら、とんでもなく悪趣味な男たちである。実際「女性店員自身がこのような嫌がらせを受けた場合、それが悪質すぎると法に触れる可能性もある」と(さすが!)『弁護士ドットコム』は指摘している。「なぜ変質者の人は、その発想や行動力をもっと良い意味でのクリエイティブなことに使わないのでしょう…」と辛酸なめ子氏も、とあるコラムで書いていたが、私もまったくもって同感だ。その労力をコンビニバイトにでも費やせば2時間分の時給あたりは軽く稼げてしまうのではないか?



 



しかし、林センセイがおっしゃるところの「店員さんがこんな嫌な思いをしていることを、作者や編集者は知っているのだろうか」……といった疑問に関しては、一応出版業界に携わる人間の端くれである私個人として、幾分かの違和感を感じざるを得ない。作家側は一人でも多くの読者の目に届くように、版元側は一冊でも多く本を売るために……そりゃあ、これくらいのことはするでしょ。



 



以前にもここcitrusでも書かせていただいたのだが、この「ちんぽ」という三文字は、インパクト、破壊力の面で他の追随を許さない唯一無二のキラーワードであり、これが仮に『夫の性器が入らない』だとか『夫のナニが入らない』だとか『夫の息子が入らない』だとか『夫の○○○が入らない』だったら、おそらく売り上げは半減どころではなかったに違いない。『夫とセックスができない』なんてえのは、もう問題外! 「ペニス」や「チンコ」でもダメだろう。「ぽ」に秘められた語感・音感が、より詳細に語れば「ちん」という珍な響きに、より深い味わいを加える「ぽ」の抜け感が人の心を打つのである。



 



この手のジェンダー問題(?)が世論に取り上げられる際、私は大勢の人たちが得てして、その批判対象を誤りがちなのではないかと私は指摘したい。たとえば、ミスコンを批判するなら開催者より嬉々として自主的に出場を志願している女性張本人に注意を促すべきなのと同様、今回の「夫のちんぽ事件」に関しても、批判されるべきなのは「ちんぽと女性書店員に言わせたい男ども」なのだ。その創意工夫をもって、もっと世のためになるNPOでもつくりなさい……と。


情報提供元: citrus
記事名:「 「夫のちんぽが入らない」と書店の女性店員に言わせたい男たちの罪