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熊野詣(くまのもうで)とは、平安時代の浄土信仰の広がりをきっかけに始まった本宮・新宮・那智の熊野三山に参拝することです。「 伊勢ヘ七度、熊野へ三度 」という言葉にもあるように、歴代の法皇や上皇たちを含め大勢の人が、救いや浄土への蘇りを祈って訪れた歴史があります。
紀伊半島南部に位置する熊野は、四季の移り変わりによる自然の美しさが魅力的です。その反面で険しい道のりが続き、苦行の果てに悟りと不思議な力が手に入る浄土の地と考えられてきました。
熊野三山とは、 熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社の3つの神社に那智山青岸渡寺を加えた4か所の総称 です。
熊野本宮大社 は、熊野三山の中でも神秘性が高い雰囲気を漂わせる場所です。全国の「熊野神社」の総本宮にあたります。
もともと社殿は、現在の位置から500mほど離れた神が舞い降りた伝説が残る 大斎原(おおゆのはら) にありました。しかし、明治時代に起こった大洪水により、現在の姿へと変わったのです。大鳥居と石造りの小さな祠がある 大斎原は、近年パワースポットとして注目 され、熊野本宮大社と共に多くの人が訪れています。
https://www.hongu.jp/kumanokodo/hongu-taisya/
熊野速玉大社 は、新宮市の街中にある熊野三山の1つです。熊野権現の称号を真っ先に賜った場所で、平安時代の初期には現在の12の神殿が完成されていました。
境内には 樹齢1,000年の大きな梛の木 があり、熊野権現の象徴として熊野詣の道中安全を祈られてきました。また、 熊野牛王(くまのごおう) という護符がいただけるのも速玉大社ならではの特徴です。病気平癒や災難除け以外にも忠誠心や絆を強く結ぶ力があるとされ、 豊臣秀吉が大名との誓約に使った という歴史もあります。
熊野那智大社 は、那智山の中腹にある神社。他の熊野三山と違い、社殿が横一列に並んでいない点や、日本一の名瀑として知られる 那智の滝 がある点に違いがあります。熊野十二所権現を祀っているのは同じですが、那智の滝を別宮の飛瀧神社の御神体として祀っていることから 十三所権現 との呼び名も持っています。
また、那智の滝の 滝つぼにある水 にも注目です。延命長寿の水として伝えられており、拝観舞台へ向かう途中で飲むことができます。水を使ったおみくじもあるので訪れた際には 舞台への参入 を忘れないようにしましょう。
https://kumanonachitaisha.or.jp/
那智山青岸渡寺(なちさんせいがんとじ) は、熊野那智大社に隣接しているお寺です。インドからやってきた裸形上人が那智の滝で観世音菩薩を感じて庵を構えたのが始まりとされています。
現在の本堂は豊臣秀吉が再建したもの で、堂内にある大鰐口には秀吉の願いにより再興したという趣旨が刻まれています。また、本堂の後方には朱色の 三重の塔 が立っており、 那智の滝とのフォトスポット としても有名です。
熊野三山の周辺には温泉地も近くにあり、中でもおすすめなのが本宮周辺にある湯の峰温泉・わたらせ温泉・川湯温泉の3か所と、勝浦に広がる那智勝浦温泉です。
湯の峰温泉 は、約1,800年前に発見されたと言われる 日本最古の温泉 。かつて熊野を詣でる多くの人々がここで身を清めていた歴史がある由緒ある温泉です。
特に注目したいのが、天然の岩風呂である 「つぼ湯」 で、1日に7回も色が変化すると言われています。説教説や歌舞伎の世界で語り継がれるほどの伝説がある場所でもあり、 世界遺産としては唯一入浴できる温泉 として登録されています。
https://www.hongu.jp/onsen/yunomine/
リゾート感覚で楽しめる温泉地なら、わたらせ温泉がダントツです。本宮にある3つの温泉の中でも、 肌がなめらかになる美人の湯 として知られています。
釣りや川遊びが楽しめるエリアにあり、 源泉かけ流しの大露天風呂 と 家族専用貸切露天風呂 は宿泊しなくても利用できます。また、コテージとキャンプ場がある 渡瀬温泉センター「おとなしの郷」 でも日帰り入浴ができるのでおすすめです。
https://www.hongu.jp/onsen/wataze/
川湯温泉 は熊野川の支流である大塔川と、川底から常に湧き出る70度以上の源泉が混ざり合うことでできた温泉地です。 川原を掘るだけで自分だけの露天風呂が作れる 全国的にも珍しい場所でもあります。
夏は川遊びをしながら温泉を楽しめますが、12月から2月にかけて川を一部せき止めて 「仙人風呂」 という露天風呂をオープンします。ぜひ水着を用意して訪れてほしい冬の風物詩です。
https://www.hongu.jp/onsen/kawayu/
那智勝浦温泉 は、熊野那智大社・青岸渡寺から近い県内一の源泉数を誇る温泉地です。日帰り入浴ができる施設もあるので、熊野詣で溜まった足の疲れを 海が見える露天風呂 や 洞窟風呂 で癒せます。
また、那智勝浦町は 生マグロの水揚げ量が日本一の町 でもあります。新鮮なマグロを使ったおいしい料理も楽しめます。
いざ熊野詣をしようと思っても、移動方法や日数に不安を覚える人も多いでしょう。そこで、特に気になりそうな3点について解説します。
熊野詣には、平安時代の法皇貴族が巡礼した時の 熊野本宮大社→熊野速玉大社→熊野那智大社 の順番が元々の習わしとされています。しっかりとご利益を授かりたい方や、熊野三山のそれぞれの場所をつなぐ熊野古道も歩きたい方には、この順番がおすすめです。
しかし、あくまでこの順番は絶対ではなく、利便性を優先したいなら順番を変えても問題ありません。 最初に熊野那智大社から始めて、熊野速玉大社→熊野本宮大社 の方が温泉宿にも立ち寄りやすくなっています。
熊野三山は電車と路線バスを使ってそれぞれにアクセスできますが、注意点が2つあります。
熊野詣は、自家用車やレンタカーを使えば1日で周れます。 ただし、参拝や飲食にかかる時間も考えるとタイトスケジュールになるため、朝の早い時間から1か所目を訪ねて時間に余裕をもたせておいた方が安心です。
車の運転免許がなく、あまり時間が取れないという方におすすめなのが、 紀伊勝浦駅発着のバスツアー を利用する方法です。熊野古道のハイライトである 大門坂と那智の滝の見学も入ったコース となっており、効率よく周遊できます。
かつての熊野詣は険しい道なりを歩く苦行でしたが、交通網が整えられた現在では公共交通機関だけでも熊野三山を巡りやすくなっています。しかし、1日で周るよりもどこかの温泉地で1泊して日頃の疲れも癒しながらの方がおすすめです。
新たな自分への再出発に向けてパワーがもらえるように、どこか神秘的で澄み切った空気を感じられる熊野詣の計画を立ててみてください。
出典・参考
余暇プランナー
1987年生まれの和歌山県在住のフリーライター、C.Wakisakaと申します。季節の風景・歴史・スイーツが好きで、カメラを持ってよくおでかけしています。関西を中心に一人旅や家族で日帰り旅行をするのが大抵ですが、時には夜行バスを使っての東京への弾丸日帰り旅行も。海外旅行はマカオ・パリ・南ドイツ周遊の経験があり、特にドラクエの雰囲気やメルヘンらしさを感じられるドイツを愛しています。「行ってみたい!」と思える情報を発信できればと思っています。
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