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国宝とは 「重要文化財のうち、世界文化から見ても価値が高く、たぐいない国民の宝」 (文化財保護法27条)と定義されています。
また、国宝を選び出す元となる重要文化財は「有形文化財のうち、重要なもの」(文化財保護法27条)とされています。
つまり 重要文化財の中でもさらに価値が高いものが「国宝」 です。
そして国宝や重要文化財はだれが決めているかというと、文部科学省に設置されている「文化審議会」が決めています。
文化審議会の委員が調査をし、文部科学大臣に答申を行ったうえで大臣が最終決定します。
国宝は、建造物・美術工芸品・書籍など様々な分野があり、2023年1月1日現在において1,132件の国宝が登録されています。
長野県には現在10つの国宝が登録されています。
今回は見学可能な7つの国宝をご紹介します。
長野県長野市にある善光寺は 創建1400年の歴史があり、特定の宗派に属さない無宗派の寺院 です。すべての人々を受け入れる寺院として全国的に知られていて、古くから 「一生に一度は参れ善光寺」「牛にひかれて善光寺参り」といわれるほど広く知られている寺院 です。
その善光寺の中心となる本堂は創建以来何度も大火に遭い再建されてきて、 現在の本堂は宝永4年(1707年)に建設されたもので、江戸時代中期を代表する仏教建築として昭和28年に国宝に指定されています。
本堂の大きさは間口約24m、高さ29m、奥行き約54mと東日本最大級の国宝木造建築であり、衆生の煩悩の数といわれる108本の柱で造られています。
本堂内では 「お戒壇巡り」 があり、真っ暗な本堂の床下の回廊を進むとご本尊の真下に通じていて、そこにある 「極楽の錠前」を触るとご本尊と縁が結ばれて極楽往生が約束される といわれています。
長野県長野市長野元善町491-イ
安楽寺は「信州の鎌倉」とも呼ばれる長野県上田市内にある別所温泉のそばにある禅宗の寺院で、 鎌倉の建長寺などと並ぶ日本で最も古い臨在禅宗寺院の一つ です。また、1588年ごろに曹洞宗に改めました。
その安楽寺の境内から奥に入った森の中に佇むのが 「八角三重塔」 で、 木造の八角塔は日本で唯一の大変貴重なものであり、長野県内では最も早く国宝に指定されました。
普通の塔は屋根が四角ですが、この塔は八角であることがポイントです。中国宋時代の禅宗様(唐様)という建築様式で、見た目は四重塔に見えますが一番下の屋根は裳階(もこし)と呼ばれるもので、ひさしにあたるため三重塔となります。
塔の内部は広い室になっていて、中央に仏さまが祀ってあり、大勢の人が室内で拝むことができる構造になっています。二階三階(二層三層)には窓が8つずつ開いています。
建築時期は近年の調査で1290年代(鎌倉時代末期)には建立されたことが明らかになっており、日本最古の禅宗様建築であることが証明されました。
長野県上田市別所温泉2361
大法寺(だいほうじ)は長野県上田市の郊外にある青木村にある天台宗の寺院です。 こちらは1400年前の飛鳥時代、大宝年間(701年~705年)に開山された信州でも屈指の古刹です。 藤原鎌足の子である定恵によって開山されました。
その境内に立つのが 1333年に建立された大法寺三重塔 です。高さ18.56mの三重塔は和洋の建築様式が正確に守られており、塔全体はどっしりと構えながらも空を舞う鳥の羽のようにのびのびと広がる三層の屋根と、すっきりとした内部の造りが絶妙なバランスで崇高な印象を与えます。 周囲の景色との調和により、美しさがさらに際立つことなどから国宝に指定されました。
近くを通る東山道の旅人は、その塔の美しさから思わず振り返ってしまったという言い伝えから 「見返りの塔」 という名前でも知られています。
長野県小県郡青木村当郷2052
車の場合:上信越道上田菅平ICより30分
電車の場合:JR上田駅より路線バスに乗り換え、当郷バス停下車後、徒歩15分
https://www.daihoujitemple.com/
仁科神明宮(にしなしんめいぐう)は、長野県大町市にある神社です。ご祭神は天照大神を祀っています。
大町市はかつては伊勢神宮の御厨と呼ばれる神への供え物を調達するための領地として麻と和紙を神宮へ献上していました。 創建は今から1000年前の平安時代の頃に、この地を治めていた仁科氏によって創祀されました。
伊勢神宮と同じく1000年以上にわたり20年に一度、式年遷宮が行われます。
社殿は伊勢神宮と同じ「神明造」で、国内で最も古い神社建築様式の一つ であり現在の建物は江戸時代はじめのものですが、 「神明宮」の様式を正確に伝えていることから国宝に指定されています。
そして 神明造の建築物としては、日本で唯一の国宝 です。
古来より聖域として守られてきた境内には樹齢800年の熊野杉などの巨木がそびえ立ち、厳かな雰囲気が漂っています。
長野県大町市社宮本1159
https://www.sinmeigu.jp/index.html
松本城は長野県松本市にあり、 日本全国に5つある国宝の城の一つ です。現存する 五重六階の天守としては日本最古の城 です。松本市街の中心にあり、現在も松本のシンボルとして多くの人々に愛されています。
江戸時代以前に建設された天守が残る「現存12天守」の一つであり、 天守の築造年代は1593年~1594年頃と考えられています。 戦国時代の永正年間に造られた深志城が城の始まりといわれています。
松本城の特徴として、漆黒に塗られた外壁があります。これは豊臣秀吉が大阪城を黒で統一していたことから、秀吉への忠誠の意味を込めて黒く塗られたそうです。
白い漆喰と黒い漆塗りの外観のコントラストが美しく、北アルプスの山々を背景にした雄大な城の景色は見事であり、現在も四季を通じて多くの人々が訪れる人気のスポットです。
長野県松本市丸の内4-1
https://www.matsumoto-castle.jp/
旧開智学校(きゅうかいちがっこう)は長野県松本市にあり、 明治9年(1876年)に竣工し、昭和38年(1963年)までの90年間小学校校舎として使用されていました。
昭和39年に現在地に移築し復元され、教育・建築資料を展示する博物館として公開されています。
木造2階建ての塔屋付きの美しい建物で、文明開化の時代を象徴する「疑洋風建築」と呼ばれる洋風とも和風ともいえない不思議な建築様式が魅力です。 疑洋風建築の代表的な建築物として、令和元年(2019年)に近代学校建築としては国内で初めて国宝に指定されました。
ただし 現在は耐震工事のため休館となっていて建物内には入れません が、藤棚の下の休憩スペースを無料で開放しています。また、向かいの旧司祭館で旧開智学校の紹介展示や売店の営業は行っているので立ち寄ることは可能です。建物は2024年の秋頃の開館を予定しているそうです。
長野県松本市開智2-4-12
https://matsu-haku.com/kaichi/
長野県茅野市のある八ヶ岳山麓一帯は、縄文時代である今から5000年前の遺跡があちこちで発見されています。この地域に大集落が存在し反映していたことがわかる貴重な資料です。八ヶ岳の西側にあたる茅野市内にある「尖石遺跡(とがりいしいせき)」では縄文時代中期の頃に造られた土器や石器が多数出土しています。
その中で国宝に指定されているのが 「縄文のビーナス」と「仮面の女神」と名付けられた2体の土偶 です。
「縄文のビーナス」は高さ27cm、重量2.14kgの立像で、欠損のないほぼ完全な姿で出土されました。 妊婦をかたどったお腹やどっしりと構えた腰回りが特徴で、雲母が練りこまれた粘土が使用されているのでキラキラと輝いて見えます。
「仮面の女神」は高さ34cm、重さ2.7kgの大型土偶で、顔に仮面をつけた仮面土偶と呼ばれるタイプの土偶です。 発見時は右足が壊れて胴体が外れていたのですが、これは人為的に取り外していたことが明らかになっています。
2体の国宝は現在 「茅野市尖石縄文考古館」で展示されています。 ほぼ完全な姿で発掘された土偶を目の前にすると、数千年も前の情景や思いを強く感じることができることでしょう。
長野県茅野市豊平4734-132(茅野市尖石博物館)
https://www.city.chino.lg.jp/site/togariishi/
今回は長野県で見学可能な国宝7つを紹介してきました。長野県は大変広い地域なので、すべての国宝を一度に見に行く場合は宿泊での訪問となりますが、興味のある分野に絞っていけば2~3か所は日帰りで行くこともできます。
国宝とはその名の通り「国の宝」です。歴史的な価値や美しい景観に触れることによって、きっと心を癒されることでしょう。
今度の休日は「国宝」を見に長野県へ行ってみませんか。
余暇プランナー
元旅行会社勤務で今は山の中の観光施設で働きながら旅ライターを行っています。元々旅行好きで大学も地理学専攻と根っからの地理マニアです。大自然の絶景と寺社仏閣などの歴史建築が大好きで、連休などあればすぐに車中泊で出かけてしまいます。その他登山やランニングなどとにかく家に引きこもっていることが苦手で、常に自然の中で過ごしていることが私の癒しになっています。
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