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総務省が公表している家計調査(2016~2018年平均)によると、佐賀市に住む1世帯(2人以上)当たりのようかん購入金額が年平均1,367円と、全国平均706円を大きく上回って全国1位となっています。佐賀県でようかんを作って120年、ようかん・和菓子の専門店「村岡総本舗」に、佐賀でようかんが愛される理由やその歴史について話を伺いました。
佐賀でなぜようかんの購入額が高いのでしょうか。購入金額が高い理由をひも解くために、今年で創業120年を迎える老舗菓子店・村岡総本舗の歴史を見てみましょう。同館羊羹資料館によると、ようかんの作り方は長崎から伝えられました。1899年(明治32)年2月に創業者の村岡安吉さんが本格的にようかん製造業を始めると、1922年(大正11年)には機械を導入して大量生産を図って需要に大きく応え、ようかん販売に力を注いできました。
村岡総本舗で作られているようかんは「小城ようかん」と呼ばれ、江戸時代からの伝統製法で作られています。当初は、小京都として知られた小城が桜の名所であったことから「桜ようかん」と呼ばれていましたが、創業者の村岡さんが「小城のようかん」と商品にレッテルを貼ったことをきっかけに、行く先々で「小城ようかん」と呼ばれるようになりました。
ようかんのルーツについて、村岡総本舗資材課の大家幸弘さんは「一説によると中国・北京名物の羊肉料理と言われています」。かつては羊肉と野菜などを入れたスープでしたが、今ではしゃぶしゃぶのようにして食べられる鍋料理になったとか。ようかんは、その羊肉の色合いをまねたり、その煮こごりを参考にして作られたものと言われているそうです。
小城ようかんの特徴は、3種類の食感を楽しめることにあります。できたては「柔らかくみずみずしい」状態で、少し時間が経つと「薄氷のように表面が少し糖化」します。さらに時間が経過すると「表面にシャリ感が出ながらも、中は柔らかい」状態に。
大家さんは「私どもは出来たてのみずみずしいようかんを竹の皮で包んで包装し、それが自然に糖化していくという形で販売しております。製造日から時間の経過とともに食感を楽しめます」と説明。最もおいしい状態は「出来たてのみずみずしい状態が、生菓子感覚で一番おいしい」と教えてくれました。
100年前は高級菓子だった「ようかん」。太平洋戦争中は、軍の携行食としても普及されました。戦後は庶民の間にも浸透し、現在ではおやつや贈答用にと親しまれています。
佐賀でようかんが最も購入されている理由について、大家さんは「伝統製法と現代製法で作られるようかんが、広く佐賀の皆さんに受け入れられているのでは」と話します。「昔からの作り方が変わらない伝統的なようかんと、ガゼットに密封して作られる現代的なようかんのどちらも存在しているのは、全国でも唯一の地域だと思います。そういう意味からも、贈答品だけでなく、家庭でも嗜好品として好まれているのではないでしょうか。佐賀の風土がようかん愛好者をはぐくんだと言えると思います」
村岡総本舗で最も人気の高いようかんは「特製切り羊羹」です。原料は北海道産小豆や同産大手亡豆、備中産白小豆など。味は「小倉」「紅煉(べにねり)」「本煉(ほんねり)」「きびざとう」「抹茶」「青えんどう」と6種類あります。江戸時代から続く伝統製法で作られるため、冬場でも賞味期限はたったの20日間ですが、独特の食感と豊かな風味で人気があります。価格は1本800~900円(税込)です。
また、手土産や携帯用に「小型小城羊羹」も好評だそう。こちらは1本130円(税込)。
小型小城羊羹は、粒あんの小倉とこしあんの本煉、抹茶の3種類。ガゼットと呼ばれる銀色の包装紙でようかんを密封しているので、賞味期限は製造日から180日間と長く、贈答用にも便利です。
「小城ようかんは、できたてのみずみずしい豊潤な味わいをはじめ、時間の経過とともに砂糖のシャリ感など3種の味を楽しめます。ぜひ伝統製法ならではの村岡総本舗のようかんをお召し上がりください」と大家さん。江戸時代からの伝統製法で守られてきたようかん。ぜひ一度味わってみたいですね。