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「日本酒が好き」という人は多いと思いますが、純米酒や本醸造酒といった種類の違いまでしっかり把握している人は少ないのではないでしょうか。今回はきき酒師漫才コンビ「にほんしゅ」のお二人に、日本酒選びが楽しくなる「失敗しない日本酒の選び方」を伝授していただきました!
今回日本酒について伝授いただく、漫才コンビの「にほんしゅ」さん。コンビ揃ってきき酒師の資格を持っています。
にほんしゅです! 日本酒は、外見で味がわかりづらいから自分では買わず、お店で飲むだけという人も多いと思うんですよね。
日本酒の味は、辛口甘口しかないと思ってる人も多かったりね! もうワンステップ上がって日本酒について知っておくと、日本酒選びが楽しくなりますよ。
酒類業組合法により、日本酒の中でも一定の基準をクリアしている日本酒を「特定名称酒」と呼びます。特定名称酒は、原料や製造方法、精米歩合などによって純米酒、吟醸酒、本醸造酒などに分類されています。
ややこしいな〜って思うかもしれませんが、特定名称酒は「純米酒系」「本醸造酒系」「吟醸酒系」の大きく分けて3タイプです。
これ覚えたら日本酒レベルがワンランクアップして、選ぶのも飲むのもたのしくなりますよ〜!
純米酒、特別純米酒、純米吟醸酒、純米大吟醸酒の「純米」と名前がついているお酒は純米酒系。お酒の原料が米と麹のみ。米と麹の旨みと甘みが感じやすいお酒です。
料理では肉じゃがやとりの照り焼きなど、味がしっかりしているものが合いますよ。
【純米酒系の一例】
「菊水の純米酒」菊水酒造株式会社 (新潟県)
良質な新潟県産米100%使用。濃厚なのに味わいは重くなく、しっかりとしたコクも味わえる純米酒です。「燗上がり(燗につけることで旨みのますお酒)なら菊水で一番と評判です。夏場、冷房で冷え切った身体を温めるためにあえてお燗するのもおすすめです。また、冷やではキレの良い飲み口をお楽しみいただけますよ」(菊水酒造株式会社広報担当)。1,012円(税込) / 720ml。
続いて本醸造酒、特別本醸造酒、吟醸酒、大吟醸酒は「本醸造酒系」。純米系との違いは、醸造アルコールを入れている点です。「醸造アルコールって何?」「添加物?」と思うかもしれません。醸造アルコールは糖蜜(廃糖蜜)やトウモロコシなどを原料に造られた蒸留酒です。ホッピーの中や、ウーロンハイ、レモンハイなどで入れられる、すっきりした焼酎と同じだとイメージしていただければ良いと思います。醸造アルコールを入れるとスッキリ感(ドライ感)が増しますよ。
入れている醸造アルコールは”悪”じゃないんです! 吟醸香という、吟醸酒のフルーティな香りを引き立ててくれる役割があります。酒造りでは、発酵が終了した醪(もろみ)を搾り、酒(清酒)と酒粕(さけかす)に分ける工程があります。その時に酒の香りが酒粕に残ってしまわないように、醸造アルコールが「こっちやで〜」とお酒の方に香りを引っ張ってくれるような役割があるんですよ。だから香りが華やかですっきりします。醸造アルコールを入れると飲み口がキリッとするので、すっきりした味わいが好きな方におすすめですよ。
【本醸造酒系の一例】
「本醸造 特撰真澄」宮坂醸造株式会社(長野県)
ほどよい吟醸香と軽快な後味が特徴。冷酒でも燗でもおいしく飲めるお酒です。全国燗酒コンテスト2017「お値打ちぬる燗部門」で金賞受賞。1,080円(税込) / 720ml。
「吟醸」って名前聞いただけでいかにも良さそうじゃないですか?
価格もちょっと高いんですよね〜。
味わいは「すっきり」。「吟醸」と名前がついている純米吟醸酒、純米大吟醸酒、吟醸酒、大吟醸酒は「吟醸酒系」のお酒です。吟醸酒系というのは、「吟醸造り」で造られたお酒のことです。お米をたくさん磨いて、長期低温発酵させ、手間暇かけて造ってるんです。フルーティな香りが特徴ですね。
甘みを感じるお酒も多いかもしれませんね!
【吟醸酒系の一例】
「加賀鶴 純米吟醸」やちや酒造株式会社(石川県)
なめらかな口当たりと、米の旨味・香りのバランスのとれたお酒。1,728円(税込) / 720ml。
「特別純米酒や特別本醸造酒の特別ってなんなん? 」ってなりますよね。同じ酒蔵で、純米酒と特別純米酒があれば、特別純米酒の方がその酒蔵の純米酒より特別な何かがあるということ。例えば、よりお米を削っていたり、よりいい酒米使っているなどです。
【「特別」と名のつく日本酒の一例】
「一ノ蔵 特別純米酒 辛口」株式会社一ノ蔵(宮城県)
宮城県産米を100%使用した特別純米酒。和食系のつまみと相性が良く、冷酒から燗酒と幅広い温度帯で楽しめる辛口特別純米酒です。1,077円(税抜) / 720ml。
特別純米酒の紹介で説明した「お米を削る」という工程を説明しましょう。普段食べるお米だと、玄米の状態から外側の5〜8%くらいしか削っていません。でも日本酒を造る「酒米」はだいたい30%以上も削っていて、大吟醸を名乗るには50%以上も削ります。
日本酒の味をスッキリきれいにするために削っています。このお米の削り加減のことを「精米歩合」と言います。
ここから少し混乱すると思うんですけど、「数字がちっちゃい方」が削っていて味がよりスッキリしています。日本酒のラベルには精米歩合が書かれています。精米歩合70%と書いているお酒と50%と書いているお酒があったら、なんとなく70%の方が削ってそうと思いませんか。
正解は50%と書かれたお酒の方がお米を削っていて、よりスッキリしているんです。精米歩合70%のお酒と、50%のお酒があったら「50%の方がすっきりしてるな」とわかると楽しいですよ。
「お酒の違いが分かったけど、自分や家族の好きなお酒ってどれかわからへん」って人も多いですよね。そんな方は家で飲み比べしても楽しいですよ!
ここまでの説明で、日本酒のタイプの違いと精米歩合について分かったと思うので、甘口辛口だけに惑わされずに日本酒を飲んでみましょう。
飲み比べするなら、純米酒1つ、本醸造酒1つ、大吟醸系1つを買うのがおすすめ。720mlなら3000〜4000円くらいで3本買えますよ。家で3種類のお酒を旦那さんに出してみて、減り具合を見れば旦那さんの好みがすぐわかりますよ!
純米酒の減りがよければ、次に日本酒を買うときには、違う蔵の純米酒試してみようか。といった具合に、日本酒選びがはかどるし、楽しくなりますよ。奥さんも一緒に飲み比べしてみて欲しいですね。ただ、初めは減りが良くても、後半あんまり飲めなくなってくるお酒もあります。例えば、マグロの大トロと赤身はどちらが好きですか。大トロが好きな人でも、大トロってあんまりたくさん食べられないですよね。赤身の方が脂が少なく無理なく食べ進めることができます。これを日本酒に例えると、大トロは大吟醸酒、赤身は純米酒。初めはフルーティな大吟醸の香りが良くおいしいと感じても、香りは控え目でほどよく旨みを感じる純米酒の方が、食事をしながらゆったりと飲み続けやすかったりします。
食事中なら、あまり香りの強くない純米酒の方が進んだりしますね。飲み初めのお酒の減り具合を見つつ、最終的にどのお酒が減ったかを確認してみましょう。
日本酒の種類を解説した今回。次回は、日本酒と相性の良い料理や保存方法について解説していただきます。
ボケ担当あさやんさん。つっこみ担当北井一彰さん。コンビ揃ってきき酒師、日本酒ナビゲーターを取得。全国の日本酒にまつわるイベントでの酒漫才披露や司会、セミナー講師も務める。日本酒と漫才で多くの人に笑顔を届けている。