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京都市は、「西陣を中心とした地域活性化ビジョン」の推進を図るため、西陣の未来の担い手となる若者を地域に呼び込み「西陣 connect」を展開している。今回その一環として、西陣織の事業者3社と、異分野のクリエイター3者がチームを組んで独創的な3本の帯を開発する企画「三帯三」に取り組み、その作品やインタビュー動画を公開した。
「三帯三」は、西陣織の事業者3社と、「絵本作家」、「建築家」、「シンガーソングライター」という、敢えて伝統工芸とはかけ離れた分野で活躍する一流の クリエイター3人をマッチングさせ、和装等になじみの薄い層にも訴求する独創的なコンセプトの帯を開発する企画。
クリエイターの豊かな感性と西陣織の最高峰の技術を融合させ、これまでにない帯を生み出すとともに、西陣の魅力を様々な方に知っていただくきっかけとして、帯から得られた感情を表現した楽曲を制作するなど、帯に留まらない広がりのある企画に発展させた。
■開発者・作品の詳細
PROJECT #001
「帯に描く、ひとつなぎのストーリー」
絵本作家 谷口 智則
20歳の時にボローニャ国際絵本原画展を見て、独学で絵本を作り始める。金沢美術工芸大学で日本画を専攻しながら、絵本の制作を続け、日本画の持つ空間や色調を活かした今の作風を確立する。読んだ人が絵本の世界に入り込め、登場人物の想いや言葉が空間に浮かんでくるような絵本作りを心掛け、たとえ言葉が通じなくても、子どもから大人まで世界中の人々に想いと感動が伝わるような絵本作りを目指している。主な絵本に『100にんのサンタクロース』『サルくんとバナナのゆうえんち』など。『くいしんぼうのクジラ』(あかね書房)で第9回ようちえん絵本大賞受賞。フランス、イタリア、台湾、中国など海外でも数々の絵本を出版している。
株式会社西陣まいづる 代表取締役社長 舞鶴 政之
明治40年創業。
「ゴブラン紹巴」「三眠蚕」「耀虹螺鈿」「琴糸織」など時代にあわせた多様なものづくりを続ける西陣の織元の代表取締役社長をつとめる4代目。1984年12月14日生まれ京都市出身。
2007年龍谷大学国際文化学部卒業後、呉服小売店に就職。㈱西陣まいづる入社。2018年㈱西陣まいづる代表取締役就任。
【商品情報】
帯名は「つながるおもひ」
みんなで力を合わせてひとつのことを成し遂げる大切さという西陣織産業の説明にも、子供たちへのメッセージにもなるテーマ。
上端(手先)のサンタから見たストーリーと、下端(たれ先)の魚から見たストーリーはぞれぞれの方向から創造性を掻き立てて楽しめる物語となっている。
【コンセプト】
長さ3m80cmの帯に、ひとつの物語が描かれた絵本作家と西陣織のコラボレーション作品。
15〜20もの工程の分業制によって完成する西陣織がつくられる様子から着想し、谷口智則氏が 絵本作家としてみんなで力を合わせてひとつのことを成し遂げる大切さをストーリーにした。
「これまでこのようにひとつながりの模様になっているデザインを帯にしたことがない」と言うのは西陣織の老舗「西陣まいづる」の若き社長、舞鶴政之氏。
絵本独特のタッチを、いかに西陣織の帯のデザインとして仕上げるか「すべて手探りで着地点の見えないチャレンジだった」としながらも、プロダクト イノベーションを大切にする西陣織事業者として、身につけて良し、絵として展示して良しの全く新しいコンセプトの西陣織を完成させた。
また、2021年秋以降、この物語が絵本となって出版される予定。
PROJECT #002
「帯に浮かび上がる、進化再生を続ける西陣の街」
建築家 髙濱 史子
京都大学卒業。東京大学大学院に進学、スイス連邦工科大学チューリヒ校留学、Christian Kerez、HHF Architectsでのインターンシップを経て2007年同大学院修士課程修了。2007年より2012年までHerzog &de Meuron勤務。2012年 +ft+/髙濱史子建築設計事務所設立、神戸大学学術推進研究員。2013年-2015年東京大学特任研究員。2017年工学院大学非常勤講師、京都造形芸術大学非常勤講師。2015年35歳以下の若手建築家によるガラス建築の設計競技にて最優秀賞を受賞、AGC Studioにて実寸大展示を行った。
株式会社桝屋髙尾 代表取締役社長 高尾 朱子
1960年創業。「時に耐える美しさ」をもつ織物を生み出すという理念を創業の原点とする桝屋髙尾・髙尾弘の三女として京都に生まれる。京都女子大学卒。1995年 株式会社桝屋髙尾入社。2015年 トルコ訪問。高級時計メーカーフランクミューラーの依頼により、世界で一点だけの帯を制作。代表取締役社長就任。
【商品情報】
帯名は「無題」
同じ柄で、色は黒・白の2色。金継ぎからインスピレーションを得て、場所と場所、家と家、人と人をつなぐ、京都特有のグリッド構造の「通り」をねん金糸を使った金色に、帯の太鼓の部分にあたる西陣エリアには色を加えることによって、西陣を中心に発信・発展していくイメージを表現した。
【コンセプト】
都市構造のことを建築業界では「アーバンファブリック」と呼ぶ。建築家髙濱史子氏は、応仁の乱をはじめ,幾多の困難に直面しながら、常に進化・更新し続けてきた京都西陣エリアを歩き周り、西陣織の帯について桝屋高尾の高尾朱子社長より聞き、京都西陣エリアの都市構造をまさに言葉通り“ファブリック”として表現することにチャレンジした。
帯は平面ではなく「数々の糸が交差して生まれる構造物である」と捉え、京都市内を東西に走る今出川通に沿って撮地図のように真俯瞰で見下ろしたデザインを考案。
一方、桝屋高尾を特徴づけるオリジナルの金糸である「ねん金糸」は、その製造過程で大量の“糸くず”が発生することに着目し、これをリサイクルした「再生糸」をコラボレーション帯の一部に活用することを朱子社長が考案。進化・再生をテーマにしたアーバンファブリックにふさわしい帯になった。
PROJECT #003
「帯から溢れ出す、いのちの音」
シンガーソングライター 佐藤 ひらり
2001年5月28日新潟県三条市生まれ。武蔵野音楽大学総合音楽学科作曲コースに在学中。
視神経低形成により、生まれつき全盲。5歳の時、ピアノに触れ音楽に目覚める。小学校入学後、アルビレックスBB・BCにて国歌斉唱。2013年 ニューヨーク アポロシアターにてアマチュア・ナイトに挑戦し、ウィークリー・チャンピオン獲得。第34回 国民文化祭にて天皇皇后両陛下の御前で国歌斉唱。「東京2020NIPPONフェスティバル」の世界配信に出演予定。他、イタリア、ネパールなど国内外で活躍中。
株式会社秦流舎 代表取締役 野中 順子
京都・西陣の着物をとりあつかう織元ブランド「秦流舎」は、織物生産をおこなう織元としてのこだわりを持ち、撚糸・織・染・繍までをも含む全ての製造工程を自社で行っている点が特徴。1995年に秦流舎を設立。1959年1月生まれ。京都の祇園で生まれ、大学卒業後、西陣御召の織元に嫁ぎ、稼業に従事する。
【商品情報】
帯名は「鼓動」
赤は動脈、青は静脈を表している。佐藤ひらりさんの「機音が4拍子に聞こえる」というコメントから4拍子のタクトをイメージした金彩が施されている。
鮮やかな色彩だけではなく、「しぼ」を使った豊かな手触りが魅力。
【コンセプト】
生まれつき目の見えないシンガーソングライター佐藤ひらりさんは、西陣のまちを歩き、機織りの音を聞き、糸染めの湿気や匂いを感じ、そして秦流舎野中順子氏から西陣織の話を聞いた。そして彼女が口にしたのは「爽やかだけど元気になれる、未来へと歩み続ける鼓動」のように感じるということ。西陣のまちから体全体で感じ取ったことを、「鼓動」という楽曲に仕上げた。
秦流舎は「西陣御召」の会社であり、さまざまな手触り・風合いを生地で表現することが得意。自社で開発した様々な生地を触ってもらい、佐藤ひらりさんが手をとめたのが「しぼ」と呼ばれる強い撚りをかけた糸が用いられた特徴的な風合いの生地だった。「鼓動を表現する動脈の赤と、静脈の青を基調にしたデザイン」を考案した野中氏は、太鼓の部分に「しぼ」で作った素材を縫いこんで鮮やかで、しかも他にない触り心地の1本を完成させた。
※ 「つながるおもひ」は、「谷口智則展~絵本の世界~」(於:総本山三井寺観音堂書院。5月9日(日)まで開催)において、展示及び先行予約販売を行う。
※ 「無題」は、「桝屋髙尾の過去,現在,未来」(於:丸善・日本橋3階ギャラリー。4月13日(火)まで開催)において、お披露目される。
※ 「鼓動」は、高龍神社御鎮座630年御遷座100年奉祝大祭(於:新潟県高龍神社。4月18日(日)に開催。)において、お披露目される。
そして本日4月9日から、制作過程や開発者のインタビューをまとめたメイキング映像も公開された。
佐藤ひらり×秦流舎バージョン
3つの作品は、本日4月9日から「西陣connect」ブランドサイトにおいて、展示するとともに、販売予約の受付を開始。詳細はブランドサイトを確認していただきたい。
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