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1980年代はアイドルブームと言われていたが、誰もがブレークして人気者になれたわけではない。多くのアイドルがデビューはしたが、志半ばで芸能界を去って行った。むしろ売れていくアイドルの方が少ないくらいである。それでも世間は何の根拠も無くアイドルブームと呼んでいたこともあり、当時の私もそんな作られたようなアイドルブームにしっかり乗り、必死で追いかけていた。
もちろん常に気になるアイドルは存在していたのだが、今回ここでは志村香を紹介したいと思う。志村香って誰?って思う人は多数派だと思うが、私にとって思い入れはかなり強いアイドルである。志村は、85年4月に映画『パンツの穴 花柄畑でインプット』でデビュー。当時はアイドルが映画の主演をすることがステイタスであった。志村はかつて菊池桃子が主演した映画『パンツの穴』の続編の主演の抜擢であり、相手役は菊池桃子の相手役でもあった山本陽一が演じたことで、前作を凌ぐ作品になるのではないかとアイドルファンの間では大きな話題になっていた。
私も大きな期待を持って映画館に観に行ったのだが、決して駄作では無いのだが、前作で主演の菊池桃子が良すぎたので、続編の評価の低さも尋常では無かった。映画の公開から1週間後には、歌手デビューも決まった。デビューシングルは『曇り、のち晴れ』。この曲でオリコンチャート22位を獲得。ランキングとして決して上位ではないが、当時の売り上げなどを考えたら上出来の順位と言える。
このまま各テレビ局が主催する音楽祭にノミネートして、メディアの露出度を大幅にアップさせることで、アイドル歌手としてステップアップしていくかと思っていたが、志村は何とノミネートを辞退して、賞獲りレースには参加しなかった。かつて菊池桃子が辞退して話題になったこともあった。さらに志村はデビューが菊池が主演した映画の続編だったことで、その流れに乗ったのではないかと言われていた。志村の代わりというわけではないが、当時同じ事務所に所属していた芳本美代子は、賞獲りレースに参加。事務所の戦略なのかわからないが、この賞獲りレースに参加しなかったことが、志村のアイドル人生に大きく左右したとも言えるかもしれない。ちなみにこの年にデビューしたのは、芳本の他に、中山美穂・斉藤由貴・南野陽子・本田美奈子などの豪華な面々が揃っていた。
そんな志村と初めて遭遇したのは85年の10月だった。3rdシングル『秋風はあなた』の発売イベントが、亀戸エルナードで行われた。実はこのキャンペーンを亀戸でやることを知らなくて、偶然に通りかかったら丁度キャンペーンの真っ最中だったのだ。情弱すぎた私は、途中から後方のスペースで観覧することにした。時間にして10分くらいしか観覧していないが、これが私の志村との出会いである。
すごく中途半端な状態で出会ってしまったが、再会するまで時間を要することもなかった。この年の12月に文化放送主催のアイドルイベントが中野サンプラザで行われ、そのイベントに志村が登場した。歌ったのは『秋風はあなた』の1曲だけだったが、亀戸でしっかり聞けなかった曲なので、この日は私にとってリベンジでもあった。
翌年には『夏・体験物語2』の出演が決まるのだが、これもデビュー時の菊池桃子主演の『パンツの穴』のように、続編である。『夏・体験物語』の前作は中山美穂が主演ということで話題になったが、それは放送スタート時のみで、人気番組になることは無かった。その後もシングルレコードを出すのだが、86年8月に5枚目のレコード『知りたがり』を最後にリリースは無くなってしまった。
ここからアイドル歌手から女優へというステップアップするのかと思っていたが、間もなく引退してしまった。今後も復活して何かをやるということはおそらく無いと思うが、今でも志村のデビュー作『パンツの穴』は人気シリーズということもあり、若い世代にも受け継がれているので、それはそれで嬉しいことである。
(ブレーメン大島=毎週土曜日に掲載)
【ブレーメン大島】小学生の頃からアイドル現場に通い、高校時代は『夕やけニャンニャン』に素人ながらレギュラーで出演。同番組の「夕ニャン大相撲」では元レスリング部のテクニックを駆使して、暴れまわった。高校卒業後は芸人、プロレスのリングアナウンサー、放送作家として活動。現在は「プロのアイドルヲタク」としてアイドルをメインに取材するほか、かつて広島カープの応援団にも所属していたほどの熱狂的ファンとしての顔や、自称日本で唯一の盆踊りヲタとしての顔を持つことから、全国を飛び回る生活を送っている。最近、気になるアイドルはNMB48の三田麻央。
【記事提供:リアルライブ】