11月10日、プロ野球のFA権の行使期間が終了した。

 権利を行使した大物選手は、松田宣浩内野手(32=ソフトバンク)、今江敏晃内野手(32=ロッテ)のみ。他に、高橋聡文投手(32=中日)、脇谷亮太内野手(34=西武)、木村昇吾内野手(35=広島)の3選手が権利を行使したのみで、今年は大きな動きはなかった。

 そんななか、最も注目を集めているのがメジャー移籍を視野に入れた松田だ。チーム愛も強い松田は、メジャーか残留かで揺れており、「自分がメジャーでどう評価されているか、メジャーでプレーする可能性があるかを探ってみたい」と発言。

 ソフトバンクは基本的にFA宣言残留を認めていないが、今回は特例的に容認する方針。今季年俸は2億2000万円プラス出来高だったが、4年契約で年俸大幅アップの破格の待遇を用意して慰留に努める。

 今季、全試合(143)に出場した松田は、打率こそ、.287で3割に満たなかったが、35本塁打、94打点でキャリアハイの成績をマーク。守備面でも、10日には4度目のゴールデングラブ賞の受賞が決まった。過去最高の成績を残したことで、「メジャーでの評価を聞いてみたい」との思いに至ったようだ。

 すでに、米球界ではパドレスが興味を示しているようだが、現実は甘くはない。メジャーでの日本人内野手の評価が極めて低いからだ。

 まずまずだったのは、松井稼頭央内野手(現楽天)と井口資仁内野手(現ロッテ)くらいのもの。ポスティングでツインズに移籍した西岡剛内野手(現阪神)は、1年目は故障で満足に働けず。2年目はわずか3試合の出場で、自ら契約解除を申し出て日本球界に戻った。

 西武からアスレチックスにFA移籍した中島裕之内野手は、2年間で1度もメジャー昇格を果たせず。3年目のオプションは行使されず、FAとなり破格の好条件を用意したオリックス入りした。

 マイナー契約ながら、メジャーに挑んだ元ソフトバンクの川崎宗則内野手は、マリナーズでもブルージェイズでもメジャーとマイナーを行ったり来たりで4年が経過した。

 日本ハムからジャイアンツに移籍した田中賢介内野手は、内野失格のらく印を押され、外野手としてメジャーで15試合に出場しただけ。2年目はレンジャーズに移ったが、メジャー昇格できず自由契約となり、古巣に戻った。

 昨オフには、鳥谷敬内野手が海外FA権を行使して、メジャー移籍を目指した。複数球団が食指を動かしたが、条件面で鳥谷側と大きな隔たりがあり、5年20億円の超大型契約を提示した阪神に残留した。

 「鳥谷も松田も、残した成績は同じようなもので同レベルの選手。守備面でも、遊撃と三塁の違いこそあれ、大差はありません。一つだけ大きな違いは、松田の方が長打力がある点。ただ、ここ数年、メジャーで日本人内野手が成功した例がなく、その評価は下がる一方です。興味を示す米球団はあるでしょうが、メジャー契約が勝ち取れても、とてもソフトバンクが提示するような好条件は出てこないのではないでしょうか。川崎や田中のように、年俸度外視で夢にチャレンジするなら別ですが、金銭面をシビアに考えるなら、結局、鳥谷のようにメジャー移籍を断念する可能性もありそうです」(某スポーツ紙記者)

 現時点で、早くも「メジャーがダメなら残留」の選択肢がちらついている松田。果たして、ソフトバンクが提示したとされる破格の契約を、上回る好条件を出す米球団はあるのだろうか?

※年俸は推定
(落合一郎)

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ