巨人、阪神の両伝統球団がともに指揮官を代え、再スタートを切った。両球団と近い関係にある系列スポーツ新聞を見ると、連日“明るいニュース”に溢れている。新監督への期待論である。だが、これで本当に『チーム改革』は終わったのだろうか。

 巨人のチーム打率はリーグワーストだ(2割4分3厘)。総本塁打数(4位)、長打率(4位)も褒められたものではないが、深刻な状況ではない。総盗塁数はリーグトップ。得点圏打率が低く、大量得点のビッグイニングを作れないのだ。その打線の強化と、山口鉄也、マシソンのリリーバーで落とした試合数が「13」もある。首位ヤクルトとの最終ゲーム差は1.5。その救援陣で落とした試合数があと2つ少なければ、計算上では勝率でヤクルトを上回っていた。山口、マシソンらに頼りきっていた救援陣の補充も急がなければならないが、ドラフト会議を見る限りではリリーフタイプの投手は指名していない。
 高橋由伸監督(40)は練習内容を「厳しくする」とは語っていたが、どんな野球をするのかは明らかにしていない。

 「西武移籍後もヨシノブと自主トレをやってきた脇谷(亮太=34)がFA権を行使しました。巨人フロントは曖昧な言い方ですが(11月6日時点)、巨人ナインは脇谷がFA宣言した時点でピンと来たようですね。ヨシノブのために古巣帰還を希望しているんだと」(プロ野球解説者)
 巨人が補強するべきは、内野手と左の代打。
井端弘和(40)の引退で内野手が不足し、ヨシノブの現役引退によって、彼自身が務めていた“代打の切り札”が空席となった。脇谷はその要求に合う選手だが、チーム打率がリーグワーストの打線を救うまでには至らない。本格的な投打の補強は「これから」ということだろう。

 また、阪神もチーム再建の最大懸案については解消されていない。金本知憲新監督(47)は南信男前球団社長から指揮官就任の打診を受けた後、「チーム再建の必要性」を訴え、若手や中堅が伸び悩んでいる実態を憂いたという。その交渉内容を知る関係者がこう言う。
 「金本監督は『改革』と言いましたが、南前社長は『革命』という言葉を使っていました。二軍の在り方、指導内容の見直し、育成…。伝統チームなんで、勝たなければなりません。勝ちながら育てるというのは、本当に難しいこと」
 阪神の秋季キャンプは、良い意味で明るかった。陽川、江越、中谷といった長打力のある若手が打撃練習で飛距離を争うように力強くバットを振り、また、練習開始のランニング、ダッシュ運動にしても、「体を温める」のではなく、順位を争っていた。近年、これだけハツラツとした阪神の練習は見たことがなかった。
 「05年以来、優勝が遠ざかってしまいました。当時を知るOBたちに、コーチ帰還を要請しても何人かは受諾してくれませんでした。晩年、屈辱的な辞めさせられ方をしたOBもいますからね。金本帰還は指導者として適齢期にもある彼らとの和解の意味も含めていました」(前出・同)
 「金本サンが監督なら…」と言って“コーチ帰還”の交渉を受けたOBもいたそうだ。
 秋季キャンプでは早くも故障者が出て、別メニューに陥った選手もいないわけではなかった。しかし、阪神フロントが監督・金本に託したものが『意識改革』だとすれば、確実な一歩を見せてくれた。

 金本監督は大阪のテレビ局に出演した際、巨人・高橋監督の印象についても聞かれていた。同じ新人監督として「意識している」と答えていたが、2リーグ分立後、両伝統球団が同時期に指揮官を交代させたシーズンの成績は−−。

1950年 巨人82勝54敗4分け=3位 阪神70勝67敗3分け=4位
1975年 阪神68勝55敗7分け=3位 巨人47勝76敗7分け=6位
2002年 巨人86勝52敗2分け=優勝 阪神66勝70敗4分け=4位
2004年 巨人71勝64敗3分け=3位 阪神66勝70敗2分け=4位

 巨人側から見れば、監督の交代がライバル阪神と重なった年は優勝もしているが、球団史上初の最下位も経験している。
 巨人は若手野手が独り立ちしきれないでいる。彼らをレギュラーに育て上げるのがヨシノブに与えられた課題である。両伝統球団が同時期に新監督を迎えただけではなく、若手台頭の課題まで重なるとは単なる偶然だろうか。

【記事提供:リアルライブ】
情報提供元: リアルライブ