小泉今日子、19年ぶりブルーリボン賞は助演女優賞「辞退したい気持ち」の裏に師匠の言葉
東京映画記者会(日刊スポーツなど在京スポーツ紙7紙の映画担当記者で構成)主催の第67回(24年度)ブルーリボン賞が28日までに決定した。授賞式は2月12日に都内で開催する。
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小泉今日子(58)が、2005年(平17)に「空中庭園」で主演女優賞を受賞から19年の時を経て、助演女優賞を受賞した。
ナレーションを含め、7本の作品に出演し「碁盤斬り」(白石和彌監督)で遊郭の大おかみ、「海の沈黙」(若松節朗監督)では“花の82年組”の同期・本木雅弘(59)が演じた画家のかつての恋人を、それぞれ演じた。人生の年輪を重ねた女性を演じた、絶大な存在感が受賞につながった。
受賞の一報を聞いた時の思いを聞かれると「何か、辞退したい気持ちになって何日か(連絡の)メールを見ないくらいでした」と口にした。各社の記者が一瞬、顔を見合わせると「昨年は上映作が多く、それぞれ違う役をやらせてもらい、面白かった。ただ、演じ切れたかと思うと、そうでもなくて。そんな風に思って返事をしなかったら、プロデューサーから『堂々ともらってこい』と言われ…」と賞を受けようと思えた経緯を明かした。「賞をいただけるような仕事、できているのかなと。引っ込みたくなるような気持ちは、いつもあります」と本音を吐露した。
「碁盤斬り」で、主演の草なぎ剛(50)と95年のフジテレビ系ドラマ「まだ恋は始まらない」以来29年ぶり、「海の沈黙」では、本木と92年のフジテレビ系ドラマ「あなただけ見えない」以来、約32年ぶりの共演を果たした。アイドルとして生きた時代を持つ同期、後輩と、より大人の俳優となって、真正面から芝居でぶつかり合う機会を得た。「本木さんは同期ですし、年齢も一緒なので感慨深いものがありました」と、まず本木と共演した思いを振り返った。
草なぎとの共演については「その時は、まだグループ(SMAP)自体が国民的なスターじゃなくて、草なぎさんも主演では全然なく、小さな役でしたが、彼が良いので出番がドンドン増えていった」と初共演時を振り返った。「その後のご活躍は、そうだよなと思って見ていた。今回は草なぎさんの方が主役になって、たたずまい、背中で皆を引っ張っていく頼もしい姿で立っていました」とたたえた。
ブルーリボン賞を最初に受賞したタイミングで、演じる際に常に胸の奥に思い起こすメッセージができたという。17歳で出演した83年のテレビ朝日系ドラマ「あとは寝るだけ」で演出を受けて以来、恩師と仰ぐ久世光彦さんから「空中庭園」で主演女優賞を受賞した際、手紙が届いた。そこに書かれた
「いろいろな演技ができるようになって、鼻高だかな気持ちもあるけど、小泉はいつも不安で揺れたりしていて。そういう、あなたがすてきだって僕は思っているから、あまりうまくならないでね。うまいの先に広い世界はないですよ」
という言葉だ。
久世さんは翌06年に急逝したが、そのメッセージは「いつも、何をしても必ず自分の頭の中に降りてくる。一生忘れずに、リフレインされる感覚がある」という。久世さんは、今回の受賞を喜ぶか? と聞かれると「『お前は賞をもらってうれしいと思うけど、あの作品はこうすべきだ』と、細かく言われそう」と笑った。
デビューから42年。「どうせやるなら、一生懸命、面白く、楽しくやりたいと思って生きてきた」と振り返る。あと2年で還暦を迎える。「そろそろ、私たち、おじいちゃん、おばあちゃんの域に入ってくるので、まだまだできることがあるんだろうなと思って。静かな小津映画みたいなのを、大好きな先輩方とやってみたいという思いがあります」と笑みを浮かべた。【村上幸将】