作家・小川洋子氏、帝国劇場題材の小説「劇場という名の星座」来年2月連載開始「夢がかなった」
小説「博士の愛した数式」などで知られる作家の小川洋子氏(62)が、東京・帝国劇場を題材とした小説「劇場という名の星座」を執筆することが19日、分かった。来年2月、月刊文芸誌「すばる」(集英社)で連載が始まる。
25年2月をもって建て替えのため休館となる帝劇の“節目”。1966年(昭41)に開場して以来「レ・ミゼラブル」など、350もの多彩な演目を演じ継いできた演劇の殿堂と交わる人々の姿を描く。小川氏は執筆に当たり、帝劇を支える隅々までのスタッフに取材を慣行。客席の案内係、売店スタッフ、劇場専属カメラマン、楽屋エレベーター係の担当者といった裏方まで、劇場に関わるさまざまな人に話を聞いた。重ねて、役者として帝劇を彩ってきた松本白鸚(82)市村正親(75)堂本光一(45)井上芳雄(45)とも対面。ステージの表と裏、劇場に関わる多様な思いを聞き、創作イメージを膨らませた。
今作執筆のきっかけは、舞台を題材にした小説「掌に眠る舞台」で帝劇を訪れたこと。「劇場が持つ底知れない神秘に触れ、物語の泉を見つけたような気持ちになり、いつかもっとじっくりこの題材に取り組んでみたい、という夢を描きました。帝劇の建て替えのタイミングで、夢がかなえられ、大変光栄に思っています」と感謝した。「劇場は死者と生者、役者と観客が出会い、一つの世界をひととき旅する場所です。そのかけがえのなさを、小説によって描き出せたらと願っています」と呼びかけた。 東宝の松岡宏泰代表取締役社長は「小川洋子さんが織りなす帝国劇場の世界を、読者の皆さまにも存分にお楽しみいただければ幸いです」とコメントした。
「すばる」3月号(25年2月6日発売、集英社刊)掲載予定の第1回「ホタルさんへの手紙」は、ある日の帝国劇場で持たれた、ひとりの観客と客席の案内係とのささやかな交流を描く。小川氏は20日に発売される、帝国劇場の歴史を振り返る公式書籍「帝国劇場アニバーサリーブック NEW HISTORY COMING」でエッセーを寄稿しており、その中で今回の執筆について触れている。