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新型コロナウイルス流行拡大を受けて、世界経済は深刻なダメージを受けています。一方、M&A業界においては暗いニュースばかりではありません。日本企業によるM&Aは、国内案件の回復とクロスボーダー案件の増加により、案件・金額ともに急増しています。3月の緊急事態宣言もあり、2020年第2四半期の案件は金額ベースで78億6,000万ドル。これに対し第3四半期は541億1,000万ドルと、大幅に数を増やしています。
さて、このような状況の中で2020年第4四半期以降の情勢はどうなるのでしょう。11月26日に「M&Aディール・ドライバー:ジャパン2021」オンラインカンファレンスが実施され、有識者らが意見を交わしました。
スピーカーは大和証券株式会社専務取締役の赤井雄一氏、ルネサスエレクトロニクス株式会社コーポレートアライアンス部長の林義和氏、西村あさひ法律事務所の志村直子氏、株式会社KPMG FASディールアドバイザリー石井秀幸氏、Datasite日本責任者である清水洋一郎氏の5人。
赤井氏は「緊急事態宣言によって、大半のM&A案件はスケジュールを後ろ倒しにした。第3四半期の案件増については、宣言解除を受けてペンディングされていたプロジェクトが案件されたのでは。また、コロナ禍の中で経営者のマインドにも変化が見られる」と指摘。林氏は「M&Aの需要が高まり、競争力が生まれている」とし「コロナ禍という状況が案件を加速させている」と見解を述べました。
外出自粛、在宅ワーク、ソーシャルディスタンスが叫ばれる社会状況の中で、M&A案件の進め方にも変化が見られます。「コロナ禍でのM&Aは、意思決定や対応にスピードが求められる。多くの人がリモートによる商談や取引を経験し、Webミーティングに慣れてきたのでは」と志村氏。仮想データルームを構築し、スムーズなオンライン取引を支援するDatasiteの清水氏も「できるだけ早く、リモートで案件を進めたいという声が増えている」と語りました。
従来の対面式から、リモートによる商談や取引がニューノーマルとなりつつある中、有識者は声を揃えて「事前準備の重要性」を訴えています。「対象となる企業へのアプローチや承認プロセスの共有が大切。案件をこなして経験値を上げるべき」と赤井氏。志村氏は「しっかりと準備している企業は多くない。コロナ禍でも、十分なコミュニケーションを取れる環境の構築が成功につながる」と述べました。
M&Aは対象会社の意向や事業内容の精査だけでなく、事業転換や業界再編、コーポレートガバナンスの改革など様々な要素を検討しなくてはなりません。対面でのミーティングが難しい昨今、リモートによる社内外のコミュニケーションツールはM&Aを進める上で一層、重要になってくるでしょう。