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そろそろ熱中症が気になる季節。今年、医師らによって特に注意喚起を呼びかける声が高まっていますが、その理由は、新型コロナの感染拡大が背景にあります。
今回は、「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長で医師の谷口英喜先生の監修のもと、今年、特に熱中症リスクが上がる理由や、熱中症対策のポイントをご紹介します。
●脱水になりやすい生活習慣
今、新型コロナによる外出自粛で、巣ごもり生活が続いていますが、春先から、汗をかく機会や、運動不足が続いていませんか? 汗をかく機会が減ると「暑熱馴化」という、身体の機能が暑さに慣れて、汗をかいて体温を下げる等の機能が衰えてしまいます。
また、運動不足が続くと、筋肉量が減ってしまいます。筋肉は身体に水分を貯めるもっとも大きな臓器であるため、筋肉量が少ないということは保持できる水分量が少ないということは、すなわち脱水になりやすいのだといいます。
●マスクをつけていることで脱水に気付きにくい
また、熱中症対策といえば、水分補給に気を付けなければなりませんが、マスクをつけていることが多い今、脱水に気付きにくいともいわれています。
まず、マスクをつけたままだと体内に熱がこもりやすくなってしまいます。さらにマスク内の湿度が上がっていることで、体の水分が減っているのにもかかわらず喉の渇きを感じづらくなる傾向にある可能性もあり、知らないうちに脱水が進み、熱中症となってしまうリスクも高まるかもしれないのだといいます。
外出時には、「マスクを外してはいけない」という思いがあり、気づかないうちに水分補給を避けてしまうことも脱水の一因になりえるといわれています。
このように、巣ごもり生活やマスクをつける習慣が、熱中症リスクを上げる可能性があるのだそうです。
今年は例年よりも、意識的に熱中症予防を実施しておく必要があります。巣ごもり生活をしながら、ぜひ熱中症予防のポイントを押さえて実施しましょう
●熱中症予防のポイント
1.三食きちんと食べる
2.喉が渇いたなと感じ始めたら水分摂取(多量のカフェイン摂取は控える)
マスクをしていると喉の渇きに気づきにくいので「時間を決めてこまめに水分補給」がおすすめ。
3.水分補給が十分できない時のために「OS-1」などの経口補水液を家族1人2本×3日分を常備
4.クーラーをすぐ点けられるよう調整しておき、暑いと感じる環境にいない
5.換気をこまめにし、湿度も高くならないように注意する
※温度・湿度は、環境省が毎日発表している暑さ指数(WBGT)※1もチェックしましょう。
6.快適な環境でよく睡眠をとる(疲労も熱中症リスクになるため)
7.人混みを避けた散歩や室内での軽い運動を行う
※1 暑さ指数(WBGT)とは?
暑さ指数(WBGT(湿球黒球温度):Wet Bulb Globe Temperature)は、熱中症を予防することを目的とした指標。 単位は気温と同じ摂氏度(℃)で示されますが、その値は気温とは異なります。暑さ指数(WBGT)は人体と外気との熱のやりとり(熱収支)に着目した指標で、人体の熱収支に与える影響の大きい(1)湿度、(2)日射・輻射(ふくしゃ)など周辺の熱環境、(3)気温 の3つを取り入れた指標です。
環境省WBGTサイト【https://www.wbgt.env.go.jp/wbgt_data.php】
特に水分摂取については、意識的に対策を実施していく必要がありそうです。
●基本は「麦茶・真水」を
健康な人は、3食の食事をきちんと摂り、喉がかわいたら飲み物を飲む、暑くなってきたら普段よりも多めに飲む、を心がける。カフェインには利尿作用があるので、なるべくカフェインの入っていない「麦茶・真水」などに。
●食事がきちんととれない、脱水かなと思ったときは「経口補水液」
食欲がないので3食きちんと食べられない、という状況では、脱水を起こさないよう、1日500mlの経口補水液を1本飲むなどして、水分と塩分を補うこと。(※経口補水液は高血圧の方など、塩分を制限しなくてはならない人は注意が必要です。医師・薬剤師に相談して飲むようにしましょう)
●「アルコール」は脱水状態を進めるため注意
アルコールはアルコールの分解に水分を多量に必要とするため、むしろ脱水状態を進めることになるので注意する。
今年はしっかりと一人一人が温度管理、水分補給などを意識的に実施していくことで、医療への負担も減り、良い結果につながります。ぜひ今年は、例年よりも意識的に水分補給をするなどして熱中症対策を万全にしましょう。
【監修】
「教えて!『かくれ脱水』委員会」副委員長 医師 谷口英喜先生
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長
専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。日本麻酔学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、TNT-Dメディカルアドバイザー。1991年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を応用した術前体液管理に関する研究」。著書「熱中症・脱水症に役立つ 経口補水療法ハンドブック 改訂版」『イラストでやさしく解説!「脱水症」と「経口補水液」のすべてがわかる本』