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「森のあかちゃん」(文:コゼッタ・ザノッティ 絵:ルチア・スクデーリ 訳: 佐藤まどか 出版社:BL出版)
ある夜。森にすむクマ夫婦のところに、夜空から赤ちゃんが届きます。ずっと子どもを欲しがっていた夫婦は大喜びでございます。ところが、その赤ちゃんは、クマではなく魚でした。クマ夫婦は、そんなことを気にすることなく水槽の中で泳ぐ魚を愛でます。しかし、二人を祝いに来た森の動物達は、その様子にとまどいます。そんななか、クマ夫婦は魚の入った水槽を抱いて、どこかに向かいます。魚の赤ちゃんにふさわしい場所に向かうのか、それとも……。クマ夫婦のこの行動がゴイスーに素敵なのございます。是非、読んで見て頂きたいのでございます。
ご想像のとおり、森の動物達が障がい者を取り巻く世の中を象徴しております。
大人はその辺りを意識して読むと思うので、より心に刺さるのでございます。
それだけではございません。お話の構成も大人っぽいのでございます。かっこいいのでございます。通常の日本の絵本は、小さいお子様を意識して、時間軸などストーリーの構成は極力シンプルに、わかりやすいものになっております。
しかし、こちらは上質な映画、ドラマを観ているような構成になっております。
さらに、絵も素敵ございます。こちらも大人好みでございます。ちなみに絵を担当されたルチアさまは、イタリア国内で最も優れたイラストレーターに授与されるイタリア・アンデルセン賞を受賞されております。
モデルとなったご夫婦は、2003年に、ダヴィデくんを養子として迎えます。
最初は順調でございましたが、そのうちに、ダヴィデくんが体と頭の動きがコントロールできないとこに気付きます。その後、難病のAHDS(アラン・ハーンドン・ダドリー症候群)という診断が下るまで12年かかったそうでございます。2015年のことでございます。それから、ご夫婦は協会を設立するなど、この病気のことを多くの人に知ってもらうための活動をされております。
ご夫婦は、この本に刊行にあたり、このようなコメントをされております。
「この本が、人生の驚きと向き合い、毎日を生きていくことへの招待状になってくれることを願います。困難な中でも、私たちにとってそうだったように」
かけがえのない命の大切さ、それを見守る大きくたくましい優しさが伝わる大人絵本でございます。
(文:絵本トレンドライター N田N昌)