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この実際の事件というのが、とにかく陰惨で救いがないんです。
本作の題材になった事件は誘拐事件です。1993年11月23日のシチリア。13歳の男の子ジュゼッペ君が誘拐されました。犯人はマフィア。ジュゼッペ君の父親もマフィアであり、検察への内部告発を考えていました。その口封じの為に息子のジュゼッペ君が誘拐されたのです。
ジュゼッペ君はその後、779日間に及び監禁されました。それでも、内部告発することをやめなかったジュゼッペ君の父親。
1996年1月11日。マフィアは、とうとうジュゼッペ君の首を絞めて殺害。証拠隠滅の為、遺体は酸で溶かされました。骨と皮しかないくらいに痩せこけた体は体重30キロ程しかなかったそうです。溶け残った遺体がシチリア・パレルモ近くの湖で発見されました。
その湖は90年代にマフィアが何人もの遺体を酸で溶かして流していた場所と発覚。想像しただけでゾッとする、陰惨で恐ろしい話です。
本作の中でも、救いのない重たい題材を扱ってる事に変わりないのですが、それを緩和させるのが幻想的な世界観。
本作は、ジュゼッペくんに想いを寄せる架空の少女ルナちゃんの目線を通して語られます。ある日、突然、姿を消したジュゼッペくん。大人たちは真実を話そうとしません。思春期で荒れていくルナちゃん。そんな最中、夢とも白昼夢とも判別つかない世界で2人は再会します。それは、もしかしたら現世と死の世界の間なのかもしれません。
ジュゼッペくんの行方を追うルナちゃん。それはルナちゃんの成長物語にも繋がっていくんですね。そこが、本作の面白い所です。青春ドラマでもあり、ラブストーリーでもあるんです。
メガホンを取ったのは、本作で取り扱っている誘拐事件の起きたシチリア・パレルモ出身のファビオ・グラッサドニアとアントニオ・ピアッツァのコンビ監督。地元で起きた本作の誘拐事件は、トラウマだったと言います。
2人は、一緒に脚本を書き、撮影現場では俳優への演技指導とモニター前での映像チェックに分担しての共同作業を20年近く続けているとの事。
さらに、本作に関して特筆すべきは、イタリアのベテラン・キャメラマンであるルカ・ビガッツィが撮影監督を担当した事。ルカ・ビガッツィは光と影が混在した映像を駆使。美しく妖艶な映像美により、幻想的な夢とも現実ともつかない作品世界へ誘い込みます。
本作は、2017年イタリア批評家協会賞撮影賞、2018年ゴールデンCIAK賞撮影賞を受賞しました。
さらに、2017年カンヌ国際映画祭批評家週間のオープニングを飾り、各国で高評価を得ました。説明の少ない作風には、好きor嫌いが別れる所ではあると思いますが、大変、カロリーが高いので精神的&肉体的に余裕がある日の観賞をオススメします!!
映画『シシリアン・ゴースト・ストーリー』は、新宿シネマカリテほか、絶賛公開中になります。
ギボ・ログ★★★☆☆(星3つ)
C)2017 INDIGO FILM CRISTALDI PICS MACT PRODUCTIONS JPG FILMS VENTURA FILM