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絶版になった書籍を復刊させるのは容易ではない。古ければ古いほど面倒なのは当たり前で、例えば、当時は緩かった差別的な部分をどうするかなど内容に関してチェックは多々有り、また、権利関係のシビアな面では、かつての出版元や著者、著作権管理者を訪ね歩いて交渉を重ねるなど、再出版はイバラの道ばかり。スタッフの苦労は相当なものである。
しかし、リクエストが多い作品ほど喜ぶ人が多いのは当たり前で、また話題にもなりやすい。需要も見込める。近年、書店で「あ!これ昔読んだ!」という多くの衝撃をくれるのは、ほぼ、この復刊ドットコムの仕業だ(笑)。
復刊が話題になった代表例は、2002年アニメ『ロミオの青い空』の原作であるリザ・テツナーの『黒い兄弟』だ。実は、リクエストがあってから約1年経過しての復刊で、これが多くの図書館に海外文学・児童書として配置された。
また、差別が問い質され廃刊を迫られた岩波書店版『ちびくろ・さんぼ』は、2000年にリクエストされてから約5年後に復刊。続編を含め20万部以上を売り上げるヒットとなった。
そんな中で、リクエストで多いのは、マンガ・アニメ関係が多いそうだ。子供の頃に読んだものを懐かしんで、今また手に入れて読みたいと思う人は多い。HPで検索すると、昔持っていたコミック、お金がなくて買えなかった本などが沢山ヒットする。一度アクセスして覗いて見るだけでも面白いはずだ。
そのHPの検索キーワードに【レア本(仮予約)企画などでよみがえった「復刻本」】というものがある。ここをクリックすると、特に昭和時代に青春を過ごした人たちの、更にちょっとマニアックな部分のハートをワシづかみにするタイトルが並ぶ。中でも今、話題になっているのが、手塚治虫の異色作「MW(ムウ)」。
【「MW(ムウ)オリジナル版BOX】¥11,988―(税込)
1976年から約1年5ヶ月「ビックコミック」(小学館)で連載された。マンガの神様と言われる手塚治虫は、鉄腕アトムやリボンの騎士といった子供ウケする主人公の作品が表立つが、一方で人間の心に潜むダークな部分をえぐり出す恐ろしい作品も多い。ファンはそれを“黒手塚”と呼ぶこともあるが、その黒手塚と称される作品で最高の悪徳(ピカレスク)とも言われる。
~「MW(ムウ)」ストーリー~
「エリート銀行マンで連続殺人者の美形青年・結城美知夫(ゆうきみちお)。幼少期に化学兵器「MW」を浴び、善悪の区別を失った彼の悪魔的犯罪を阻もうとする、正義感の神父・賀来巌(がらいいわお)。二人の同性愛関係、美知夫に魅せられて滅ぶ美女たち。複雑な男女の憎悪と、政財界や某軍事大国の巨大権力とが綾なす、狂気と頽廃のアラベスク。軍事基地から「MW」を奪った美知夫は、全人類に対してテロを企むが・・・!?のちの未来図を鋭く予言した、恐るべき傑作SFサスペンス」(※復刻ドットコムより)
「MW」は、2009年に映画化されているが、暴力的な描写や残酷な殺人描写があるため映倫のRG12指定を受けている。この事実を知るだけでも、一般的に知れ渡る手塚治虫のイメージが覆るだろう。
この復刊は、手塚治虫生誕90周年を記念し700セット限定で販売。5月21日から予約受付を開始したが、この原稿を書いている5月31日現在、残り53セット。様々な特典も用意され、超レアモノとなりそう。
今後も、“まさかこれが!?”と思うような復刊があった時は取り上げたいと思う。