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一般的な戸建てに住む人の悩みとして、「屋根のトラブル」が挙げられます。ところが、国土交通省によると屋根工事業界の年間売上は年々衰退しているとのこと。2009年の5,123億円から比べ、2014年は3,208億円と約40%減少。今後もこの傾向が続くと、2020年には2,000億円を下回ると予想されています。
屋根工事業界の課題は市場規模だけではありません。労働力不足や後継者不足、高所作業の危険性も指摘されています。厚生労働省の「労働者死傷病報告による死傷災害発生状況(平成28年確定値)」をみると、2016年には屋根や梯子からの墜落・転落事故は846件。そのうち40人が死亡しています。
このような業界背景から3月1日、一般社団法人「日本屋根ドローン協会」が発足。同会は現代の成長産業である「ドローン」の技術を屋根業界に取り入れ、課題解決や発展を目指します。
具体的な活動内容は「ドローン利活用における技術・知識の習得と人材育成を目的としたセミナー実施」、「産学連携による技術交流、ノウハウ共有などの実行」、「屋根とドローンの適切な利用を認定する資格制度の確立」など。屋根点検とドローン技術に関わる有識者がメンバーとなっています。
当日は都内で設立発表会を実施。代表理事に就任した石川弘樹氏は「住人はトラブルが起きてから屋根業者に相談するケースが多い。屋根は定期的な点検が必要だが、業者でも簡単にはできない。ドローンなら従来2時間かかる点検を約10分で完了させることが可能」と話しました。
ドローン点検のメリットについては同会理事で、年間包括飛行承諾書を受けているプロのドローンパイロット、夏目和樹氏が説明。「カメラを搭載し空から撮影ができ、データ通信可能なドローンは“空飛ぶスマートフォン”。訓練すればiPadで簡単に操作できる」としています。
発表会では石川代表理事、夏目理事のほか5人の顧問を交えたトークセッションも行われました。東海大学名誉教授の石川廣三氏は「屋根の点検は安全面において重要。地震による破損や風による飛散がある。頻繁にチェックすること」としました。
神社仏閣や城郭など文化財における瓦施工を専門領域とする、全日本瓦工事業連盟顧問の山田勝雄氏は「ドローンによって足場を組む必要がなくなれば、コストも削減できる。軒先や鬼瓦の紋様など見えなかった部分も確認して復元できるようになる」と期待を寄せていました。
また、当初ドローンによる屋根点検に反対の意見を抱いていたという石川代表理事は「顧客にドローンで撮影した写真を見せて、『これが我が家の屋根か。これなら一目瞭然』と言われた。今まで屋根に上って、スマホで撮影した画像を見せて説明していたが、それでは理解されていなかった」と自身の経験談を披露していました。
伝統的な技術と革新的な技術が融合した同会。今後の展開が楽しみです。