- 週間ランキング
埼工大が自動運転自動車開発に力を入れる理由とはなにか? 先日、埼工大内「ものづくり研究センター」にて「自動運転実証実験始走式」が開催されると聞き、さっそく取材に伺った。
埼工大では、「自動走行システムに関する公道実証実験のためのガイドライン」(警察庁)に基づき、深谷市の協力のもと2017年12月~2019年3月31日までの期間、公道での実証実験を行う。
始走式では、小島進 深谷市長が実験車に乗り込み自動運転車を体験しました。
埼工大が取り組む主な実証実験は、高精度3次元地図試作データの実走行検証(ダイナミックマップ)における「お台場においての公道実証実験」と、「深谷市における公道実証実験」の2つだ。
研究チームの責任者であり、同大学工学部 情報システム学科 渡部大志教授によると、「お台場においての公道実証実験」では、主に信号機を含む交差点における静的高精度3D 地図データの仕様・精度の検証。そして「深谷市における公道実証実験」においては、インフラが整う都心や自動車専用道路にはない特殊環境下での走行実験を行うという。
埼工大のある深谷市では、群馬県からの“空っ風”が関東ローム層に吹き付け、年に数回、まったく視界が遮られるような「大砂嵐」を巻き起こす。
現在、国交省では、信号機などに情報を発信する装置を取り付け、その電波をクルマが受信して走行を制御する『ITS』(高度道路交通システム)の実現を目指しているが、都市部の一部以外、情報を発信する装置のある信号機は、まだ設置されていない。そのため、画像認識で信号機の色情報を解析する必要があるが、深谷市のような特殊な天候条件、また逆光下などでは正確に色情報を認識できないことがある。
まるで砂漠の国のような、深谷の「大砂嵐」
渡部教授は「恐らく、都市部や自動車専用道路などでは自動運転の実現は早い。しかし、深谷市をはじめ特殊な天候や1車線が3.5m以下の旧道や畑道の多い地域では、5年~10年先を見据え長期的なスパンで自動運転の課題を解決してゆく必要があり、研究対象として大きな意義があると思う」と話し、超高齢化社会をむかえる未来において、自動走行は自動車に頼ることの多い地方都市や山間部の街にこそ必要であり、改善・対応策は開発の大きなテーマだとした。
一方で、どこまでが“運転可能領域の限界”かを探ることもミッションのひとつ。「雪道ではチェーンを着けて走行するという決まり事があるように、〇〇環境下では自動走行運転はしない。という線引きも必要だ」と渡部教授は話す。
実際に試乗! 万一に備え運転手さんが同乗しますがハンドルは握りません。
画面、白い文字が道路。緑の文字が走行予定ルート。
埼工大では、チームを発足し自動運転研究をはじめて3年目になる。まさに「自動運転自動車」は最先端の技術であり、今もっとも注目されている研究の一つ。AIをはじめ、幅広い分野でプロジェクトに関わることができるため興味のある学生も多い。現状では情報処理系の4年生が7人、3年生が5人、博士課程が1人 博士研究員(ポスドク)が1人の計14名が参加しているそうだ。
実験はTOYOTA「プリウス」の改造車体が使用され、LinuxとROSをベースとした自動運転システム用オープンソースソフトウェア「Autoware」を改造したものを使用。コンピューターを介して、操舵・制御・周辺機器を操作やシフトの切り替えなどが出来る仕組みだ。
まったくの無人走行ではなく、テストドライバーを乗車させ安全運転に最新の注意を払う。ちなみにドライバーは埼工大のスクールバスのベテラン運手が担当。月に平均4~5回の走行実験を行ってゆく予定だそうだ。
自動運転研究運転チームの皆さん。
現在、深谷市内において時速10キロくらい。お台場では25キロ~30キロくらいで走行しているが、今後はもっと早く走れるように改造を重ね、速度・時間・天気・交通量・道路環境によって自動運転がどこまで可能なのかを探る。
埼工大学の内山 俊一学長は、「高齢者社会において、活力ある街つくりに貢献できる若者を育てたい」とし、実証実験が、深谷市の発展にもつながることを期待していると話した。