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埼玉県さいたま市にある「にっしん皮フ科・形成外科」の平岩亮一院長は、国内外13個の特許を持つ生体皮膜剤「栴檀海斗(せんだんかいと)」を開発。同院長は、小児・成人の皮膚疾患、形成外科、美容皮膚科と幅広く診療。自身が開発した生体皮膜剤「栴檀海斗」を診療に取り入れ、病気の予防と再発防止を目指した独自の治療を実践している。今回は、「栴檀海斗」開発の背景や今後の展望について聞いた。
医療を目指して 私は大学病院での診療を通じて、治療の効果が不確実で患者さんの不満が起こりやすい状況にあることや、患者さんが求める治療のゴールと、自分の提供する医療との間に隔たりがあることに気付きました。そして、「やりたい医療をやるには自分で道を切り開かなくては!」と決意し、2017年に開業しました。
開業後、患者さんの悩みを深く聞くと、従来の医療の枠組みや学んできた知識だけでは説明がつかないことが多くありました。そして、大学病院時代に患者さんから言われて引っかかっていた「きちんと医師の指示に従っているのに、薬の効果を感じられない」や「一時的に薬でよくなるが、再発してしまう」という言葉を思い出しました。私は幼少の頃から、すぐに解決できない問題に対して「後で必ず解決するリスト」を作り、時間をかけて検証して解決するのが得意でした。開業後の診療では、これまで引っかかっていた部分を解決しなければ、患者さんの求めているゴールはないと感じ、リストの解決に注力したのです。
これまでの経験から、患者さんが抱く疑問や違和感がすべての答えだと感じています。「患者さんの言葉を1つも聞き逃さず、皮膚が教えてくれることを決して見逃さないこと」を意識して診療し、自分の学んできた常識を押し付けないことが大切だと実感しています。患者さんとの信頼関係を築くには、患者さんに伝わりやすい説明をすることが重要です。そのため資料ではなく、自分が実体験で得た情報を用いて説明することを心掛けています。
「栴檀海斗」の開発のきっかけは研究者である父です。「後で必ず解決するリスト」をどう解決するか考えていたときに、父から「特許にできるアイデアはないのか」と問われたのです。そしてリストの中で一番機序を解明しやすそうだった「汗の痒み」の解決方法の研究を開始しました。
薬でも、患者さんによって効果の出方が異なります。研究費はなかったので、「よく言われていることは本当か」を検証するため、作用が明らかになっている成分を自分自身に塗り、実験しました。また、患者さんに薬の使い方の説明をするときにも、実体験に基づいて説明することを大切にしています。そのため、塗る量を変えてどんな変化があるのか検証し、「足りないものは何か」などを日々模索しました。
そして、汗と皮脂が混じって乳化物になったときに、べたつきや臭いが出現し、痒みが増加するということを発見して「痒み防止剤」の特許を取得しました。皮膚科には、「痒みは炎症が治る過程に起こる」という概念があるため、特許取得後も傷に効くかどうか実験しました。趣味の登山をしながら、「痒み防止剤」を擦り傷に塗ってみたところ、腫れや出血、痛み、浸出液などを抑制できることが確認できました。そのような実験を通じて作用機序を解明し、「痒み防止剤」から「生体皮膜材」という名前に改名し、「栴檀海斗(せんだんかいと)」と名付けました。
「栴檀海斗」という名前には、「栴檀(白檀)は双葉よりかんばし」ということわざと、航海中の北斗七星の位置を掛け、「病気の発症と治療」という人々の不安と苦痛を解消する、病気にさせない医学の要となり、望まれる多くの人々の役に立てるという願いを込めました。
生体皮膜材「栴檀海斗」は保険適応外のため、現在は院内処方のみで提供しています。しかし、ありがたいことに「再発していた症状が改善した」「コントロールできた」などの口コミが広まり、利用者が増えています。今の制度だと保険適応にはなりませんが、今後も「栴檀海斗」を必要とする多くの人に届けたいと考えています。
また、昨今リモート勤務の増加に伴い、お風呂に入らない「風呂キャンセル」という概念を知りました。私も2024年の元旦から開始し、8か月が経過しましたが、「水ですすぐか、洗わないことが最もよい」ということを発見しました。中途半端な「風呂キャンセル」では、肌荒れや感染症のリスクが高まりますが、徹底的に行い、「栴檀海斗」を使用することで皮膚のバリア機能を最大化できると仮説を立てることができました。
現代は恵まれすぎていて、「これがないといけない」が多すぎる。風呂キャンセルをして「栴檀海斗」で過ごし、必要なときに対症療法を行うだけで問題ないことを立証し、「汚い」の概念も変えたいと思っています。
まださらなる実験が必要ですが、風呂に入らず「栴檀海斗」のみで過ごしても、ニキビや感染症の発症を防ぐことができることを立証し、今後は被災地支援や貧困問題(物価高や光熱費の価格高騰による問題)にも貢献したいと考えています。大きな目標を掲げていますが、まずは目の前の患者さん一人ひとりに寄り添い、その肌の声や希望を丁寧に聞き取り、最善の治療を提供していきます。
医療法人社団日進会 にっしん皮フ科・形成外科
https://nishicli.jp/
理事長 平岩 亮一