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中村氏は患者の口の中の健康だけでなく、顔や体の健康も守ることをポリシーとして診療している。なぜなら、それらは全てつながっているからだ。例えば前傾姿勢が癖になっている人は、前傾で歩くと腰や膝へ負荷がかかり、最終的に歩くのが困難になることは想像できるかもしれないが、実は口や顔にも悪影響があるという。
「まず口の中への悪影響ですが、前傾姿勢で食事をすると歯にとっても歯を支える歯周組織にとっても良い力として働きません。また舌の位置がずれて動きも悪くなります。そういう状態が続くことで、飲み込み(嚥下)が上手くできなくなったり、飲み込む(嚥下の)力が弱くなってきて誤嚥をしやすくなります。放っておけば要介護の状態に。次に顔への悪影響ですが、前傾姿勢が続くと顔のたるみを引き起こしやすくなります。顔のたるみは、40代から起こると言われる頭蓋骨の萎縮が大きく関与するので、何もしなければ進行する一方です。しかし正しい姿勢で正しく咀嚼・嚥下ができれば、たるみの進行を抑えることができます。」
治療が終わって定期的なメインテナンス期間に入っても、良くない噛み方(歯の使い方)や習慣があると、口腔環境の老化が早くなるという。そのため同院では、正しい噛み方や飲み込み方をするための姿勢から指導している。また、顕微鏡で口内の菌を観察、管理を行い、薬を使わず独自の方法で悪玉菌のみ除菌を行うのも特徴だ。そして歯を治療するだけでなく、ブラッシングのアドバイスからよくない癖の改善指導、正しい姿勢や咀嚼・嚥下の指導、希望者には表情筋エクササイズまで、口・顔を含めた全身の健康美を保つために必要なことを患者に伝えている。
同院は2003年に開業。幼児から90歳近い方まで幅広い年代の患者から愛され、親子三代で通い続ける患者や遠方から車で1時間以上かけて来院される患者もいるほど、患者からの信頼が厚い。ここまで順風満帆にきたのかと思いきや、開業当初は必死だったと中村氏は笑い飛ばすように語る。
「会社を経営して負債を抱えていた父が病気で倒れたんですよ。当時私は、まだ幼い二人の娘の子育てのために、仕事をセーブしながら歯科診療所で勤務医として働き、大阪大学歯学部附属病院でも非常勤で働いていました。仮に勤務時間を増やしても、父から引き継いだ多額の借金の利息すら返せない。『開業医になるしかない』と思い、夫の両親が建てた家を担保に開業資金を工面し、当院をスタートさせたんです」 開業後は、一日を無事に終えることしか考えられない日々を過ごしながらも続けてこられた背景には、家族に加えて「患者」の存在があった。
「治療して患者さんの症状がよくなった時の喜びは何事にも代え難いんです。噛み合わせが悪く、真っすぐ立てず、身体の不調で毎日辛くて『死にたい』と苦しんでいた患者さんが、歯の治療の末に回復されて感謝の涙を流されることもありました。自分の診療が患者さんの役に立っているのだと確信する、『もっと患者さんの役に立ちたい、頑張ろう』と情熱が湧き上がる瞬間です。そのパワーをまた次の患者さんに還元し、私自身も患者さんからパワーをもらって。本当に患者さんに育てて頂いてここまできたと思います。」
歯に関する患者の知識を底上げし、正しい姿勢やエクササイズなど、自宅ケアの習慣化にも注力する同院。その理由は、毎月1回メインテナンスに通ったとしても、残りの30日ほどは、歯・口を含む全身の健康を維持するのは患者自身だからだ。今後も自宅ケアの重要性を伝えていきたいと話す中村氏。そしてさらに力を入れていきたいのが「全身を診る予防医療」だという。 「基本的に病院って、健康診断で病気を指摘された時や日常生活に困難をもたらす症状が出た時にしか行かないですよね。
だから、病院に行った時には重症化しているケースも多い。でも歯科は『歯をきれいにしたくて』『親知らずを抜きたくて』など、比較的健康な方が来院することが多いのが特徴だと思います。今後は、骨量や血糖値、自律神経バランス測定などの検査をルーティン化し、歯科以外の病気の兆候がみられた場合には、専門の医療機関を紹介する体制を作りたいですね」 また予防医療には、若い世代へのアプローチが欠かせない。特に未就学児の年齢から健康な歯を作る習慣を身につければ、歯並びや噛み合わせが悪くなったり、むし歯や歯周病になったりする確率を大幅に減らせるという。
今後は子育て世代向けのセミナーを開くことも検討中だ。
きみえ歯科
院長 中村 喜美恵 (なかむら きみえ)
https://www.kimie-shika.com/
一般社団法人日本ホームヘルスコーチ協会認定ホームヘルスコーチ
アンチエイジング歯科学会認定医
糖尿病協会登録歯科医
ビューティーアドバイザー メディカルアロマコーディネーター
ホワイトニングエキスパート認定 ペリオフードコーディネーター