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「音楽・エンタメ業界は盛り上がっている一方で、業界人の業界離れ、人手不足が深刻な問題になるフェーズに差し掛かっているとも言えます。働き方の変化や、コロナ禍における他業種への流出、また新しい人材の確保不足により、業界内のエキスパートの疲弊やトラブルが徐々に多くなっていきているという側面を、業界としても互いに知恵を絞り出し解決していくことが課題とも言えるでしょう」(鈴木さん/以下同)
業界が人材確保に動いても、具体的な仕事内容が分からないと不安です。実際、音楽・エンタメ業界のスタッフはどのような仕事をしているのか、ライブ制作運営を例に解説してもらいました。
「ライブイベント・コンサートを作り上げる仕事については、分野として大きく4つに分けられます。1つ目は、舞台監督・演出・音響・映像・照明・特殊効果などアーティストのライブを演出する『テクニカルスタッフ』。2つ目は、プロダクションと向き合い、コンサートやライブツアーの全体的な日程ブッキングやスタッフ統括、各地プロモーターとのやりとりをまとめ上げる、謂わばライブイベントの船頭とも言える『制作(ツアープロモーター)』。3つ目は、全国各地それぞれの会場ブッキングや地域のプロモーション、またチケッティング管理やお客様対応など運営面全体を司る『運営・イベンター(各地プロモーター)』。4つ目は、アーティストのオリジナルグッズの制作・販売を行う『グッズ会社』、CD/DVD/書籍等を販売する『レコード会社』、チケット販売と管理を行う『チケットプレイガイド』です。他にも様々な業務を行っているエキスパートの方々も存在しますが、大きく分類すると、この4つで成り立っているといえます」
現場では、どのような人たちが働いているのでしょうか。近年は業界に大きな変化があったといいます。
「2015年以降あたりから顕著に変化してきているのが『業界内の女性スタッフの増加』です。芸能プロダクションや制作・運営会社における女性スタッフの増加もさることながら、以前までは『男性の仕事』という印象があった、いわゆる力仕事とされる施工管理、大道具/美術、特殊な機構や大掛かりなセットの施工撤去の管理に従事する女性スタッフが業界内の人材の比率として増えてきているのは明らかです。ただ一方で男性スタッフの減少、特に新入社員や若手層の比率の低下も顕になってきているのは事実としてあります」
業界で働く年齢層にも変化があり、それが人材確保における問題につながっている側面もあるようです。
「業界すべてを一概に括ってお伝えすることはできませんが、傾向として<中間層の空洞化>が嘆かれているのは事実です。中間層というのは、業界を7〜8年経験した30代前半や、世間的にいうと課長や係長に就くであろう中堅層、次代を担うリーダー層が抜けてしまって、ベテラン層と若手層に二分されている職種や業種があるのは事実です。この現象によって、中間層や若手層に現場や案件を任せたいベテラン層がいまだに現場担当者となってしまっていることや、若手層の目線からしたら中間層が少ないことによってベテラン層とのコミュニケーションの取り方や文化の違い等に悩みや不安を感じて、すぐに業界を離れていってしまうというケースも発生していると方々で耳にします」
鈴木さんは、どのような経験と思いから「キャリアプロモーター」の道を目指し、MRC TOKYOを立ち上げるに至ったのでしょうか。
「私自身、旅行代理店の営業職3年、そしてコンサートプロモーター・イベンターとして11年間培った経験をもとに、今は国家資格である『キャリアコンサルタント』を取得するということの掛け合わせで設立した会社がMRC TOKYOであり、M=Music R=Re: C=Career という略でつまりは、音楽ライブエンタメ業界のエキスパートの方々向けのReキャリア支援・コンサルティング事業です」
一般的にはあまりなじみのない「キャリアプロモーター」の仕事はどんな内容なのでしょうか。
「様々な経験を経てきた業界のエキスパートの方々が抱く悩みや今後のキャリアに関して精一杯一緒に向き合い答えを導き出していくことが弊社の使命です。決して私が自分の思う方向に引っ張っていったり、劇的な提案をすることはしません。呼吸を合わせて同じ歩数で向かうべきゴールを定めて一緒に一歩ずつ歩んでいく補佐をするのが『キャリアプロモーター』の仕事ということができると思います」
そんな鈴木さんから見て、音楽・エンタメ業界におけるキャリアアップには大きな課題があるという。
「音楽・エンタメ業界に従事するエキスパートの方々は、どの業界の方々よりも『音楽・エンタメ・ライブ』を愛している方々が集まっています。その中で他の業界とは異なるキャリアの積み重ね方が存在します。例えばプロダクションやレーベル、プレイガイドやプロモーターのような世間的にも認知度がある会社については、見てわかりやすいキャリア形成というものが表現および言語化しづらい状況がございます。
企業ひいては業界としてわかりやすいキャリアアップや肩書を与えることが難しい側面があるので、そこに対して業界全体で人材を繋ぎ止めるという意味でも解決策や対策を練っていく必要があると考えております。
この問題はまだ私自身も答えを模索中の難しい問題であります」
音楽・エンタメ業界に従事する人々に寄り添い、一緒に模索しながら環境・待遇の改善を目指して奮闘している鈴木さん。人材不足が進んでいる音楽・エンタメ業界において、今後は「キャリアプロモーター」の存在価値が大きくなっていきそうだ。