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父が歯科医院を営んでいた藤井院長は、周囲の思いとは裏腹に、将来のキャリアとして歯科医を目指すつもりはなかったと話す。「子どもの頃は、歯医者さんに怖いイメージを持っていたので、歯科医になろうという気持ちは毛頭ありませんでした。父の治療を受ける時も、多少痛くても我慢するのが当たり前という経験をしていたからでしょうね」と笑う。歯科大学へ進学したのも、家族からの強い勧めがあったことが一番の理由だという。入学後、藤井院長の気持ちに変化が生まれたのは、歯科大学の学習環境だった。随時実施されるテストをはじめ、国家試験の難易度が高度であったことから、自然と学習する気持ちが強くなっていったという。「私の大学はとても厳しくて、『勉強したくない人は辞めてもいい』という先生もいたほどです。その環境のおかげで自ずと学習する習慣が身につきました」
大学卒業後、1年間の研修医経験を経て、大学院へ進むことを決意。専門は、父と同じ口腔外科を選んだ。「歯科医療の中で、外傷を含めた幅広い治療に関わることができるのが口腔外科です。また、実践で学ぶことが多いため、大学院でしっかりと学ぼうという思いでしたね」また、大学院では、命に関わる腫瘍摘出手術などに関わる中で、歯科医としてのやり甲斐や意義を感じるようになり、将来は父の医院を継ぐという思いを強くしていく。
大学院を卒業後、2年間の診療医勤務を経て、父親が経営する「藤井歯科医院」の院長に就任。初めて父親と共に働き、診療方針や医療体制を間近で見る中で、ある思いに突き当たった。「50年近く開業医をやっていると、外部の情報を得ることが難しいため、治療方法を含めたさまざまな部分で改善が必要だと感じました」と話す。その考えから、父と何度も話し合いを重ね、新たな取り組みを積極的に取り入れていく。
その中で最も注力したのが、来院する患者とのコミュニケーションだ。どれだけ忙しい最中であっても、患者一人ひとりの思いに耳を傾け、ベストな治療方針を立てることを大切にした。「経験を重ねるとどうしても、自分が思う治療方法がベストだと思ってしまいます。しかし、患者様によって思いは千差万別。その人の思いに寄り添った治療を提供できることを心がけています」と、藤井院長。
さらに、大学院で学んだ最新の知識を生かし、機能と細菌を検査する「口腔機能管理」や、口腔がんのスクリーニング、口腔内スキャナーを活用するなど、充実した医療体制を構築。また、外傷や親知らずの治療をはじめ、高難度の外科手術にも対応している。藤井院長は、「近隣の病院と連携を取り合い、他の医院からの依頼で患者様を対応することも多くあります。口腔外科のスペシャリストとして、今後も新たな外科手術に対応できる環境を整えていきます」と、その意気込みを語ってくれた。