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その結果、「仕事よりもプライベートを優先する」仕事観や、転職理由に「自分にとってプラスになる」ことよりも「現状の職場への不満」が多いなど、日本には他国と異なる傾向が見られました。
一方、他国と共通することとしては、転職自体にポジティブなイメージを持っており、「仕事へのやりがいを感じたい」など前向きな期待をしていることなどがありました。実際に日本の転職経験者の8割以上が転職による何らかのメリットを感じていることもわかりました。
内閣府が2023年6月に公表した「新しい資本主義」の実行計画案。この中では、日本経済の好循環に向けて賃金上昇を伴う成長産業への労働移動や雇用の流動化に重点が置かれており、社会的にも転職への関心が高まってきています。
また、少子高齢化やコロナ禍、DX化など社会環境の変化を背景に、労働市場では人材不足がますます進んでおり、それによって転職時の賃金が上昇傾向であることも、就業者の転職への意識向上を後押ししていると考えられます。
とは言え、新卒一括採用、年功序列、終身雇用という日本型雇用が定着している日本では、新卒で入社した会社で定年まで勤め上げる人もまだまだ多く、他の先進国と比較して転職する人の割合が低い状況にあります。
雇用システムや制度、労働環境、社会環境が異なる国の間では、働く人々の仕事観、転職やキャリア形成への意識や価値観も異なるのでしょうか。
調査結果からまず『仕事観』を見ると、日本人の4人中3人が「仕事よりもプライベート優先」「仕事はあくまでお金を稼ぐため」だとし、プライベートを優先する考えが一番強いのが日本という結果に。
「仕事で、昇進・昇格したい」はドイツが79.7%で最も高く、アメリカ・イギリス・韓国でも7割前後である一方、日本は46.4%で最下位となっています。
また、『勤務先への満足度』について日本は「満足」している人はわずか4割。アメリカは8割超で日本の 2倍以上、他4ヵ国も7割以上が「満足」で、日本の勤務先に対する満足度の低さが浮き彫りとなりました。
日本人はよく働く、働きすぎとまで言われていますが、実はそんな日本よりも他国の方が仕事に対するモチベーションが高いというのは意外に思われる方も多いのではないでしょうか。
ここで『転職経験』を見ると、日本の転職経験率59.7%に対し、イギリスは 92.7%、アメリカは90.1%、ドイツは84.2%、韓国は75.8%で日本は最下位でした。終身雇用のイメージもあり転職する人がまだまだ少ない印象の日本。半数以上が転職経験があると回答しているので「転職する人が少ない」と言い切れるかはわかりませんが、やはり他国と比べると少々差があります。
『転職へのイメージ』について日本は「新しいことにチャレンジできる」が1位、次いで「職場環境を変えられる」 「スキルアップできる」などこちらは他4ヵ国と共通してポジティブ。
一方、『転職したい理由・転職への期待』については、日本以外の4ヵ国が「不満はないが、自分にとってプラスになる」 だったのに対し、日本は「職場に不満や嫌なことがある」が多い傾向でした。
とは言え、日本でも、転職には「やりがいを感じたい」といった前向きな期待を持つ人も多く、3人に1人(34.9%)は「やりがいを感じたい」と回答しています。
続いて『転職時に求める給与』についての調査で日本は、74.6%が「今の給与と概ね同程度の求人」であれば応募してもよい・したいという結果に。これはアメリカと比べると約1.5倍の数字です。
また「今の給与より1割程度低い求人」でも応募する割合も42.8%で、いずれも5ヵ国で最も割合が高く、転職の動機が給与ではない人が多くいるということができそうです。
実際に『転職して良かったこと』を見ても、「給与があがった」が5ヵ国共通で上位ではあるものの、日本は「プライベートの時間が取りやすい」と働きやすさや環境について重視している人が多いことがわかりました。
そのほかにも、日本では転職経験者の8割以上が何らかの転職によるメリットを感じている結果となりました。
最後に『キャリア形成に関する習慣』を見ると、キャリア形成のためにかけるお金は、日本は半数以上が月に「0 円」で、月収に占める割合は5ヵ国中最下位。最もお金をかける韓国は月収に占める割合が日本の3倍。
キャリア形成のためにかける金額は、日本では1ヶ月あたり平均7,479円で、半数以上が「0円」と回答。 月収に占める割合は1.6%と5ヵ国中最下位。最も割合が大きかったのは韓国の4.8%で日本の3倍、日本円で換算すると平均31,946 円。日本ではキャリア形成に向けた自己投資が低い傾向にあることも明らかとなりました。
日本の経済成長および個人の働き方やキャリア構築の面でも、適切な賃金上昇を伴う労働移動は重要であると考えられますが、日本は他の先進国と比較しても転職する正社員の割合が少ない状況にあります。実際に 今回の調査でも、日本の正社員の転職経験割合は5ヵ国中最下位で、約4割が転職経験がないことが明らか となりました。イギリス、米国では正社員の9割以上が転職経験があることからも、日本の転職割合は低い ことが改めて示唆されました。
転職理由をみると、他の4ヵ国は「不満はないが自分にとってプラスになる」が多い傾向であるのに対し、 日本では「職場への不満や嫌なことがある」が多いことが明らかになりました。日本では「今ある不満を解 消する」ための手段として転職が行われている傾向にあり、自らキャリア形成を意識し、希望する未来のた めの選択肢として転職をする人がまだ少ない状況にありそうです。
それには、日本型雇用が大きく影響していると考えられます。アメリカをはじめジョブ型雇用をベースに自 身で自律的にキャリアを描き、転職によって柔軟に自分に合った働き方や仕事を選択していく習慣が根付い ている国と、長らく終身雇用の慣習が続いてきた日本とでは社会構造上の違いがあると言えます。
しかし一方で、日本人が転職に期待することは「給与」に次いで、「やりがいを感じたい」が2位になりま した。また、転職に対するイメージも「新しいことにチャレンジできる」、「スキルアップや経験を積むこと ができる」など、前向きな回答が上位を占めました。
現状の転職理由としては職場への不満が多い一方で、これからの転職に対する期待としては、自分の仕事や 働き方の新たな選択肢やキャリアの可能性が広がると前向きに捉えている人も多いと考えられます。
人々の仕事に対する価値観やライフスタイルが多様化する中、今後、新たな仕事や働き方、人生を見つける ために転職を選択する人も増えてくるでしょう。
Indeed はそうした方々に、 “求人検索エンジン”としてだけではなく、“人生や働き方を見つける場”として Indeed を活用いただくと共に、「いい未来は探せる」というメッセージを届けていきたいと考えています。
Indeed Japan 株式会社 マーケティング本部 シニアディレクター 田尻 祥一
2004 年にアクセンチュア株式会社に入社。国内外の様々な経営戦略・事業改革プロジェ クトに従事。2009 年にデル・テクノロジーズ株式会社に入社。アジア太平洋地域におけ る営業企画や日本法人経営企画室室長を歴任。2013 年からマーケティング統括本部にて 本部長として B2B 及び B2C 向けマーケティングを統括。2022 年 Indeed Japan 株式会 社のマーケティング本部のシニアディレクターに就任。
「転職」に関する 5 ヵ国比較調査 概要
・調査主体:Indeed Japan株式会社
・調査対象:
日本、アメリカ、イギリス、ドイツ、韓国で現在就業中の正社員(無期雇用・フルタイム就業者)20代~50代男女
日本4,368名、アメリカ1,600名、イギリス・ドイツ・韓国 各960名(計8,848名)
・調査方法:インターネット調査
・調査期間:
日本 2023年3月8日(水)~3月10日(金)
アメリカ 2023年3月22日(水)~3月31日(金)
イギリス 2023年3月22日(水)~4月2日(日)
ドイツ 2023年3月23日(木)~3月30日(木)
韓国 2023年3月24日(金)~3月31日(金)
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合があります。