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2023年1月29日に74歳でこの世を去った鮎川誠さん。本作は1987年に“シーナ&ロケッツ”を結成して以来、最後まで現役のロックミュージシャンとしてステージに立ち続けた彼の素顔に迫ったドキュメンタリーだ。今年3月のTBSドキュメンタリー映画祭において上映された、『シーナ&ロケッツ 鮎川誠と家族が見た夢』をベースに、縁の深い人物へのインタビューやプライベート映像、貴重な音源などを加え再編集。シーナ&ロケッツのファンでもある俳優・松重豊が新たにナレーションを担当した。
鮎川さんと同郷の福岡県出身であり、鮎川さんが亡くなる前の最後のシーナ&ロケッツのライブを観戦したという小峠。ライブで買ったという“シーナ&ロケッツ”シャツを着て登壇した。普段はコウテイペンギンのドキュメンタリーしか見ないというも、本作に関しては「今まで見たことのないようなものすごくプライベートなところも流れる。皆さんもきっと楽しめるはず」と太鼓判。この好反応に寺井監督も「鮎川さんの話であると同時に、家族の話でもある。鮎川さんの優しい人となりを知ってもらえるのは嬉しい」と喜んだ。
福岡時代に『レモンティー』を聴いたのがシーナ&ロケッツとの出会いという小峠は「曲がカッコいいから入って、ライブも何度も観ました。鮎川さんはギターを弾いているときは鬼気迫っているけれど、MCになると温かい人間味が出て、この人いい人だと思った。そのギャップが素晴らしい」と鮎川さんの魅力を分析。寺井監督も「ONとOFFがない人で、喋りにそれが出る。ステージ上でもそれ以外でもそのまま。こんなに一貫してブレないのかと驚かされました」と鮎川さんの飾らない人柄に触れていた。
また小峠は、本作を通して“シーナ&ロケッツ”の楽曲の中にある魅力を再発見したようで「鮎川さんは家族愛にあふれた方で、それが曲にも投影されている。速くて尖っていた曲であったとしても、伝わり方がマイルドでトゲの先端は実は丸い。それは鮎川さんの温かい人間味があるから。そのハートの部分が、悪いだけのロックではない曲を作ったのだと思う」と分析した。
劇中では土屋昌巳、浅井健一、甲本ヒロト、松重豊ら著名人が鮎川さんについて語る。小峠は甲本の言う「鮎川さんとシーナが死んだことは大したことじゃない。“いた”ってことがすごいんだ」という言葉に痺れたといい「確かにお亡くなりにはなった。でもあれだけカッコいい音源やライブを生んだこと自体が凄いことだと。僕もその言葉には納得しました」としみじみ。寺井監督も甲本のその言葉が本作の方向性を決定づけたと言い「追悼作品のようになるのは嫌だったので、あの言葉があって作品の方向性が定まった気がする。縁の人たちが語る鮎川さんのエピソードを集めれば、鮎川さんの人となりがわかると思った」と金言だと明かした。
鮎川さんは膵癌のために2023年1月29日に急逝。小峠は「福岡に仕事で帰った時に、天神にある行きつけのレコードショップに行ったら、カッコいい曲が流れていた。それはシーナ&ロケッツの曲で、店員から『今日鮎川さんが亡くなった』と聞かされた。たまたま店に寄って曲を聴いて店員から訃報を聞いて…驚きました」と予感めいたエピソードを披露。一方、寺井監督は「鮎川さんが亡くなったから僕はこの場に立てているということに複雑な思いがあります。シーナさんが亡くなられてもなお鮎川さんがバンドを続けている姿を撮りたくてカメラで追っていたので、その点では素直に喜べません」と複雑な心境ながらも「とはいえこの作品を通して鮎川さんの素敵さが多くの方に伝わるのは嬉しいこと」と劇場公開を歓迎していた。