民間ロケット開発をテーマにしたWEBTOON(スマホ特化型の縦読み漫画)作品『晴天のデルタブイ』が、2023年2月7日から配信開始されました。この物語は、事実に基づく設定が舞台になっています。実際、宇宙開発はどこまで進んでいるのでしょうか? 企画制作を担当した方にインタビューをして探ってみました。

■『晴天のデルタブイ』って?

『晴天のデルタブイ』は、現在、シリーズ1の全30話が、「LINEマンガ」と「eBookJapan」で配信中の作品です。

北海道大樹町を舞台に、民間のベンチャーロケット会社がロケットを開発し、宇宙に到達させるまでの波乱万丈な道のりを、挫折と挑戦の群像劇として描いているもの。

北海道大樹町にて民間ロケット開発を行うインターステラテクノロジズ株式会社と、北海道大樹町で宇宙港「北海道スペースポート」を推進するSPACE COTAN株式会社の全面協力のもと制作されている、本格的な宇宙開発の物語になっています。

この漫画を企画したのは、INCLUSIVE株式会社とその子会社である株式会社ナンバーナインのWEBTOON制作スタジオ「StudioNo.9」です。

今回は、企画制作に携わったナンバーナインの代表取締役社長 小林琢磨さんにお話を伺いました。

――「晴天のデルタブイ」と実際の宇宙開発はどこまで同期しているのですか?

「分かりやすいところで言うと、『MOMO(作中ではMOZ)』という民間ロケットの打ち上げ成功・失敗は、史実と完全に一致するようにしています。細かい部分では、ロケット打ち上げの結果である、失敗原因、飛行時間や到達点なども史実と同じです。
逆に、『資金難』や、燃焼試験の省略をするかしないかなどの『答えが誰もわからない問い』など、実際に直面した壁でも、オリジナルキャラクターとフィクションを絡めてアツくなれるドラマになっています」

「『晴天のデルタブイ』は“フィクション”と“ノンフィクション”を絶妙なバランスで配合したエンタメになっていると思っており、私たちはそれを”シンセフィクション”と呼んでいます。リアルの完全再現ではなく、事実に基づく設定を舞台に、実在人物が持つ本質的な役割、魅力を新解釈し、よりドラマティックな世界観を演出する再現ドラマとなっています」

■民間ロケット開発などの宇宙開発はどこまで進んでいるの?

――現状、どこまで宇宙開発が進んでいるか教えてください。

「民間企業によるロケットの打ち上げについては、直近でもアメリカのスペースX社などによる打ち上げが目立っていますが、日本では2019年の5月に、インターステラテクノロジズ社が民間単独で、初めてロケットを宇宙空間に到達させ、その後も複数回打ち上げを成功させています。

それまで日本ではJAXAによる官主導の宇宙開発が進んでいましたが、インターステラテクノロジズ社はより低コストで宇宙輸送を実現する民主導のロケットの開発を進めており、直近では超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」の開発に取り組んでいます。

人工衛星を民間企業の手によってより多く宇宙に送り込めるようになると、衛星データを活用した既存産業の効率化や、通信環境のさらなる向上が期待できますので、宇宙利用が私たちの生活により身近なものになると思います」

■『晴天のデルタブイ』の見どころと読者に知ってほしい宇宙開発のこと

――『晴天のデルタブイ』の見どころをお教えください。

「見どころは『“未踏”へ挑戦するキャラクター達のドラマ』という点です。今でこそインターステラテクノロジズ社がロケットの打ち上げに成功していますが、『民間企業がロケットを宇宙空間に到達させる』ということは夢物語と笑われてもおかしくないくらい大きな目標だったと思います。

誰も答えを知らない。なぜなら誰も成し遂げたことがないから。考えに考え抜いて答えを出してそれが間違っていて…の繰り返し。普通の社会人生活をしていてもこれだけ多くの壁にぶち当たることはなかなかないと思います。壁を地道に一つ一つ乗り越えていく主人公と仲間たちのアツいヒューマンドラマは、見どころだと思います。

努力・失敗・挑戦を繰り返すキャラクターたちの、“失敗から立ち上がる様”を見て、『明日からまた仕事を頑張ろう』と思ってもらえたら幸いです」

――物語を通して、読者に宇宙開発のどんな部分を特に知って欲しいですか?

「『宇宙はもう手が届くところにある現実である』ということです。『ロケットは、国とか偉い人が作って、エリートの人が宇宙飛行士で…』と、これまでは自分ごとになりにくかったと思うのですが、今はもうそんなことはない。実際に民間企業が宇宙にロケットを到達させています。答えのわからない問いと向き合い続け、戦い続けた人たちの努力が宇宙を身近にしてくれたことを感じてほしいです。

また、宇宙と言えば宇宙飛行士が小学生の夢などで語られると思うのですが、その宇宙飛行士が乗る“ロケットを作る仕事”も、こんなにアツくてカッコよくて意義のあることなんだというのが伝わると嬉しいです。ロケットは本当にたくさんの人の力でできていて、たくさんの人の想いをのせて飛んでいます」

私たちの知らないところで、ロケットをはじめとした宇宙開発は進んでいたのですね。作品を通じて、ぜひ宇宙産業の無限大の可能性をいち早く感じてみましょう。

【取材協力】
株式会社ナンバーナイン
2016年11月に創業し、「すべての漫画を、すべての人に。」をMissionに掲げるデジタルコミックエージェンシー。デジタル配信サービス「ナンバーナイン」や確定申告代行サービス「no9tax」、WEBTOONの編集企画など、デジタル領域で活躍する漫画家さんが活動の幅を広げるためにさまざまな事業を展開している。
(https://corp.no9.co.jp/)

情報提供元: マガジンサミット
記事名:「 宇宙ロケット開発の実話に基づく漫画連載がスタート!宇宙開発はどこまで進んでいるの?