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1948年にリヒテンシュタイン公国で誕生したヒルティは、主に建設用の工具や材料を製造、販売する企業。世界120の国と地域で3万人を超える従業員が働くグループとして、約9500億円を売り上げ、ヨーロッパを中心に世界シェア60%をほこる。
ヒルティがかかげるコンセプトは「現場の生産性改善」と「安全品質施工」。職人技や経験が頼りにされがちな施工現場において、IOT化やロボテックスの技術を駆使したより安全で効率の高い現場を実現しており、施工時間の削減や人手不足の解消、災害現場においては迅速な救助活動に貢献している。
建設現場では長年、工具の電源確保が課題となってきた。長距離ケーブルやガス・ガソリン駆動が主流で10年ほど前からコードレス製品へ置き換えが進んでいるが、これを阻むのがバッテリーの電圧問題だ。工具サイズによってそれぞれ電圧が違うため現場には、常に複数のバッテリーが混在。さらにメーカーごとに仕様や種類も違うため、肝心なときに目的のバッテリーが見つからず、作業が中断してしまうのは建設現場の“あるある”だという。
ヒルティでは、このような課題を「NURON」で解決すべく、まず、自社の製品群を22Vの単一のバッテリーに対応、インパクトドライバーからはつり機まで、同一バッテリーでの使用を可能にした。さらに、この22Vバッテリーから安定的に大きな電力を取り出すため、バッテリーと工具をつなぐ新たなインターフェイスを開発。特許技術により22Vでも36Vやガス式・コード式に匹敵する充電力を実現させた。
じつは、建設現場のバッテリーは振動やインターフェイスに舞い込む粉塵の影響から、高い電流を流すと摩耗が激しく、焼けてコンタクトがとりにくくなるという理由から電流をわざと抑えるような造りになっているという。しかし、新しいインターフェィスでは、独自に開発したバネ機構が端子部分を空中に浮かせ振動を回避、導線が空中でも動きやすい仕様になっており、これにより従来の2倍の電流を流すことを可能にした。
さらに「NURON」では、保有工具のまったく新しいサービスとしてIOT技術を活用した「データドリブンサービス」の提供を開始。これは工具の使用情報が充電の度にバッテリーに蓄積されていくもので、データはクラウド上に反映され、工具の置かれた位置や場所を携帯やPCから確認できるようになっている。
広大な建設現場で工具が見つからない、誰かが使っているのかも分からないといった課題に対しソフトウエアの面からアプローチし、フリートマネジメントシステムなどと連携することで、どのような状態で工具が存在しているのかが分かるようになる。また、バッテリーのパフォーマンスが悪い際には自動的に管理者へ通知される他、未使用の工具を特定もできるため、必要とされる現場へ割り当てなどの資産管理にもつながるそうだ。
工具から始まる、安全でより良い現場づくり
ヒルティでは、先の22V単一バッテリーとコードレス性能の向上によるパワーの確保と同時に、より安全性に配慮したヘルス&セーフティな工具も開発中だ。
研磨や切削・研削を行うグラインダーに、キックバックを防ぐためのATC(アクティブ・トルク・コントロール)や、長時間の振動による作業員の疲れを低減するAVR(アクティブ・バイブレーション・リダクション)、現場で発生する粉塵への曝露を低減するDRS(一体型集塵システム)を採用。タッチセンサーにより手が外れるときは自動で工具が止まるといった安全と衛生の機能も搭載させている。
ヒルティでは、今後も「NURON」シリーズによる「22Vシングルプラットフォーム」「型破りなコードレス性能」「データドリブンサービス」を軸に、「次世代の安全と衛生」を模索。これら4つの新サービスによる作業現場の簡素化と最適化を実現していく予定だ。詳細は https://www.hilti.co.jp/ まで。