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角田「SNSの普及にともない2年前あたりから依頼が増えています。さらにコロナ禍で普及したWEB面接では、採用候補者の仕草や表情、雰囲気がつかみにくく、企業側は内定決定判断に、より慎重になっていると感じます」
中途採用であれば、以前の職場での人間関係や上司や会社への度を超した中傷など、またSNSで無差別に手当たり次第発信する傾向が見受けられる人は、情報漏えいなどのトラブルに発展するリスクを警戒するそうです。
角田「複数のアカウントをもっているのはかまわないのです。主義や主張をSNSで発言するのも問題ありません。人間ですから、たまに誰かの悪口を言いたくなることだってあります。ですが、あまりに偏った思想や差別発言などをするためにアカウントを使い分けたり、リテラシーを疑いたくなるような誹謗中傷を“くりかえす”ことで、ストレス発散や自己主張をしたりする方は問題視されます。そんな人と一緒に働きたいか?という考えですよね」
このような採用候補者のネットリテラシーの有無を事前に把握したいという動きは、いわゆる2013年頃に頻発したバイトテロ事件が転機のひとつ。飲食店等でアルバイト従業員による悪ふざけ写真の拡散により、営業停止に追い込まれるといった経済損失の大きさ起因します。また、最近では誹謗中傷が大きな社会問題となるなか、そのような発言を繰り返す人を採用したくない企業側の思いもあります。
では実際にどのようにして裏アカは特定されるのでしょうか。「企業調査センター」によるとアカウントの特定率は88%。専門スタッフが複数名で様々な角度から調査し情報の足跡を深堀していくそうで、早ければ10分以内で見つかるといいます。
角田「自分では完璧に裏アカ対策をしてもどこかに穴があるものです。裏アカを持つ人はSNSの交流関係もひろい場合が多く、たとえ実名やアイコンに本人写真を登録していなくても、職歴や学歴などを参考に同級生や同僚のアカウントをたどると何らかのヒントが発見できたりします」
例えば、つながっている友人がアカウント主の本名を呟いてしまう、「誕生日おめでとう!」といった書き込みをしてしまうなど、本人を探しても発見できない情報も周囲から探すと見つけやすいといいます。
角田「さらに、自分の裏アカをご自身が相互フォローしているケースもある他、なかには裏アカのリンク先をはり “こちらで本音発言していま~す”といった趣旨の裏アカもあります。非公開設定であっても公認のフォロワーからいつ情報が洩れるともかぎらず、リスクがともなうため注意が必要です」
いくら別名アカウントを使いわけても、無意識のうちに構成する文字や法則に共通点が現れるなど、本人が思っている以上にアカウントには様々な情報がつまっているそう。プロが解析すると意外なほど簡単に見抜けてしまうもののようです。
日々の調査を通じ対象者の履歴書写真の印象との違いを感じたり、表と裏の発言の使い分けにショックを受けたりする一方で「良い意味で対象者の個性を垣間見ることができるのもSNS」と角田さんは話します。
角田「ネガティブな要素が高い仕事ですが、逆に良い印象に変わることもあります。投稿写真から垣間見られる笑顔だったり周囲の方への発言だったり、私個人は、調査対象者の魅力的な面などが見つかれば、それとなく報告書に書き加えることもします」
なかには言葉の言い回しなどにセンスあって面白いな!と感じる部分もあるそう。日本人は実名公開をする人が多くないため、調査はそういった良い面を知れるきっかけにもなるのです。
総務省の「平成26年版情報通信白書」によるとSNSの実名公開について日本では、「抵抗がある」と回答した人は全体の40%以上を占め、「やや抵抗がある」という回答を加えると全体の65%以上がSNSの実名公開に抵抗感を覚えています。角田さんは、海外では実名登録や本人写真のアイコンが多いが、日本ではプライベートアカウントは、ほぼ実名がないイメージだと話します。
角田「プライバシーや匿名性は大切ですが、それを逆手にとって悪く使う人もいるわけで、アカウントをより特定しやすくするなど、規制は強化するべきだと個人的には思っています」
発言の自由が認められている日本では、企業は個人の見解に歯止めをかけることはできません。よほど会社の利益をそこなうようなことをしない限り、指導をおこなうくらいでやめさせることはできないのです。
角田「現在は入社前に事前調査についての誓約書をくみかわすことが多くなりましたが、だとしてもご自身のSNSを調べられるとは思っておらず、個人ツールだから何を言ってもいいと思っています。世の中的にSNSを調査するのが当然になれば誹謗中傷などが減るかも知れませんね。個人のツールをみて判断される世の中になってきていることを改めて自覚するべきではないでしょうか」
SNSを幼い頃から使う世代が増え、ネットリテラシーが備わった人が増える反面、裏の使い方に慣れてくる人も増えてくると予想される今後。SNSが情報ツールとして当たり前の存在になればなるほど、どんなアカウントでも、発信した内容には必ず受け取る側がいることを忘れてはいけません。