映画「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」日穏(KANON)インタビュー「普通に生活してるつもりではあるんですが、変なヤツだと思います」
初の長編映画「恋愛依存症の女」が池袋シネマ・ロサで2018年度のレイトショー動員記録を更新。2023年には「違う惑星の変な恋人」が第36回東京国際映画祭アジアの未来部門に選出された木村聡志監督の新作「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」。風変わりな高校生・代々木ジョニーとミスマガジン2023受賞者の6人が演じる個性豊かなキャラクターによる止まらない屁理屈会話を軸にした一癖も二癖もある青春恋愛群像劇だ。気の強い彼女・熱子ちゃん(松田実桜)を怒らせてしまったり、引きこもりの幼馴染・神楽(一ノ瀬瑠菜)と焚火をしたり、スカッシュ部の個性溢れるメンバーと部室で無駄な話を展開し、気ままな放課後を過ごしている代々木ジョニーを演じるのは日穏(読み:かのん)。
SKY-HIがCEOを務めるBMSG所属の5人組グループ、STARGLOWのメンバーとして「Moonchaser」でプレデビューを飾ったばかりのKANONとして知られる。幼い頃からそもそも俳優を目指し、劇団に所属。今年初のワールドツアーを開催した7人組ダンス&ボーカルグループ、BE:FIRSTが誕生したオーディション「THE FIRST」を見てアーティストを目指すようにとなった。映画初出演にして主演に抜擢された今作で、日々を気ままに満喫はしているが、いまいち感情が読み辛い難役・代々木ジョニーをナチュラルに演じ切った。インタビューでさまざまなことを聞いた。
――「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」のオファーが来た時、どう思いましたか?
まさか映画初出演で主演をやらせていただけるなんて信じられませんでしたし、 本当にありがたいなって思いましたね。
――BMSG TRAINEEとしてアーティストデビューを目指す中で、映画に主演することに対してどんな想いがありましたか?
そもそもは俳優を目指して劇団に入って、「THE FIRST」というオーディションを見てアーティストを目指し始めました。でも演技のお仕事もやりたいと思っていたし、他のTRAINEEも同じ気持ちを持っていました。もし機会がなかったとしてもアーティストとしての表現力が鍛えられると思ったので自分からお願いして演技レッスンを月2回程度入れてもらっていました。演技レッスンのおかげで、自分のセリフのシーンだけではなく、その前後に何が起きているのかをイメージしたり、そのセリフがどんな意味を持つのかを一つひとつ考えられるようになりました。そういう時間があったことで「代々木ジョニー~」の出演が決まった時から、高いモチベーションで向き合えましたね。
――直井卓俊プロデューサーは知り合いに「代々木ジョニーぽい人がいる」と聞いて日穏さんとお会いして実際に「代々木ジョニーがいた!」と感じたそうですが、ご自身ではどう思いますか?
多少共通点はありますが、正直「俺ジョニーなのかな?」とは思います(笑)。実際に演じてみても難しかったですね。まずセリフの量がすごく多いですし、どういう感情で言っているセリフなのかわかり辛いところが多くて。
――本心が読み辛いですよね。
そうなんです。不思議なところを掘り下げることも多いですし、自分がこれまで観た作品には出てこないような言い回しも多くて最初はセリフのニュアンスを掴むのに苦労しました。でも脚本を読み込んでいく内に、「そこを突くんだ?」って思わせる性格が自分の兄と共通していることに気付いて、兄のことを思い浮かべながら「こういう言い方をすればジョニーっぽいかもな」って思って演じていく中で掴めていきました。「こういうこと言う!言う!」って思ったり(笑)。兄とは一緒に住んでいるので、撮影時期は会話の量を増やしてみました。
――役作りのためにという(笑)。
はい。兄にはそのことを話さなかったので、「なんかたくさん喋ってくるな」って思われてたと思います(笑)。
――座長として意識してやったことはありましたか?
主演ではありますが、座長っていう意識は全くなくて。初めての撮影現場だったのでずっとガチガチで、言葉通り右も左も分からないような状態でした。でもスタッフさんも共演者さんも、自分が初めての作品っていうことを知ってくださっていたのか、一つひとつのことを優しく教えてくださって、とても明るい雰囲気の現場でした。同年代の共演者の方たちと仲良くなって、集合場所から撮影現場までの移動車の中で他愛もない話とかをたくさんしました。
――撮影中は日穏さんも高校生でしたが、ご自身の高校生活と重なる部分はありましたか?
僕は高校1年生の時に「MISSIONx2」というオーディションを受けて、そのままBMSGに練習生として所属したので、高校のイベントに参加できないことがあったり、部活に入ってなかったんです。ジョニーみたいにスカッシュ部で活動したり、放課後に幼馴染と焚火をするようなことは経験したことがなかったので、撮影中は「今を噛みしめよう」と思ってました。
――劇中で共感する部分はありましたか?
ジョニーは幼馴染の神楽と毎日のように焚火をして、スカッシュ部に所属してはいるけど「練習って何?」みたいな状態が当たり前になっている生活を送っています。そこにひとつ変化が起こるだけで、周りも含めていろんなことが変わっていきます。当たり前のことってずっと続くわけじゃないんだなって改めて感じました。自分も周りの人もいつ死ぬか分からないわけですし、普通に道路を歩いてても、車が線を越えて走ってきたら大変な目に遭ってしまう。自分の母親とかがそういう目に遭ったらもう会えなくなってしまいます。そういうことを考えるようになったので、そんなことが起きないようにできるだけ安全に生きようと思い始めましたし、今を大切にしようって思いましたね。 あと、自分は今年3月に高校を卒業したんですが、学校に通うのが当たり前だった日常が大きく変わって、「高校生活って楽しかったな」って今でも思いますし、ちゃんと楽しめて良かったなと思います。
――大学生活と高校生活は全然違いますか?
僕は通信制なので大学に通ってないですし、自分が大学生である実感があまりないんですよね。たまに課題とかをやると思い出します(笑)。
――今作に主演するにあたって、SKY-HIさんから何かエールは送られましたか?
「すごい方々に囲まれてお芝居ができるわけだから本当頑張ってね!」って言ってもらえました。
――日穏さんと同じくBMSG TRAINEE からSTARGLOWのメンバーとなったRUIさんとTAIKIさんからは何か言葉はかけてもらいましたか?
まず「おめでとう」と言ってもらえました。でも、2人とも僕に対して羨ましい気持ちがあるっぽかったです(笑)。
――その後に、RUIさんとTAIKIさんとトリプル主演のドラマ「ゲート・オン・ザ・ホライズン〜GOTH〜」の制作が決まったという。
そうですね。「代々木ジョニー」の経験があったから「GOTH」の撮影で二人に教えられたことがあって良かったなって思います。
――映像作品を2作品経験して、お芝居の面白さをどう感じていますか?
自分じゃない自分が築かれていくのが面白いです。自分が普段やっていることをしなかったり、絶対言わないであろうセリフを言ったり、自分のレパートリーにないものをたくさんアウトプットすることで表現の幅が広がるっていう実感があります。
――アーティストとしての経験がお芝居に生きていると思うことはありますか?
アーティスト活動で身に付いた表情の作り方や声の使い方は活きてると思います。演技が歌に生きることもあると思いますし、どちらもやることで表現が豊かになりますね。
――逆に、ここはアーティストとしての表現とはっきり差別化しないといけないんだなと思うことはありましたか?
僕は音楽は楽しいものだと思っているので、パフォーマンスをしている時はずっと楽しいという感情に突き動かされているんですが、演技は楽しいという感情だけでなく、いろんな感情にならないといけないのが全く違うなと思います。しかもジョニーは、感情が見え辛い演技をしなければいけないけど、単に感情を見せないわけじゃなくて、表に見えている表情の奥にどんなことを感じているかっていうことを考えないといけないので、めちゃくちゃ難しかったです。
――STARGLOWを生んだオーディション「THE LAST PIECE」のプロフィールエントリーシートに音楽活動の目標に加えて、「月9に出たい」という夢が書いてありました。今もその夢はお持ちですか?
そうですね。まだまだ演技のお仕事はやっていきたいです。それによってグループの名前も広がっていくと思いますし、グループに貢献していきたいですね。
――STARGLOWは5人それぞれのスタイルが尖ったグループとして結成しました。だからこそグループ活動と並行して個人活動も精力的にやっていくのかなと思っているのですが、メンバーとはどんな話をしているんですか?
まさに「それぞれがやりたいことをやっていこう」という話をしています。実際それぞれが個人でもやりたいことがありますし、既に決まっていることもあります。お互いのことをリスペクトしているからこそ、 個人の仕事も応援できる関係が築けています。僕もいろんなことにチャレンジしたいですし、小さい頃からの夢だった俳優のお仕事には特に思い入れがありますね。
――そもそも俳優に惹かれたのはどうしてだったんでしょう?
幼稚園の時に、親が録画したドラマをデッキの録画リストから漁って観るのがすごく好きで、そこで観た「コドモ警察」という深夜ドラマに惹かれて、「僕もこの中に入りたい」と思ってお母さんに伝えて劇団に入ることになりました。昔から人のことを笑わせることが好きだったこともあり、ちょっと変で一癖あるんだけど真面目みたいな作品に惹かれるんですよね。俳優さんもコミカルで存在感のある独特のお芝居をする方が好きです。ムロツヨシさんや佐藤二朗さん、阿部サダヲさん、堺雅人さんが好きですね。
――日穏さんは落ち着いているけどすごくエンターテイナーですよね。
ありがとうございます(笑)。普通に生活してるつもりではあるんですが、変なヤツではあって、他の変なヤツにもなってみたいっていう気持ちがあります。
――今、日穏さんの周りは変な人だらけですよね(笑)。
はい(笑)。うちの事務所(BMSG)は変人ばかりですね。だから自分のままでいられます。
――STARGLOWがプレデビューし、主演映画の稼働もあり、とても忙しいと思うんですが、忙しさを楽しむ秘訣はありますか?
自分がやりたいことばかりやらせていただいてるので、すごくありがたいです。もし面倒くさいとかネガティブな感情を一度でも前に出してしまうと、今の活動をやってる意味がなくなってしまうと思ってます。お仕事をいただいている身なんだという感謝の気持ちを噛みしめることで、「だからこそ今俺は生活ができてるんだよな」っていう感情が生まれて日々を楽しめる。次々と夢を叶えさせてもらえることってなかなかないことだと思いますし。
――今年中にプライベートとお仕事でそれぞれ成し遂げたいことはありますか?
今、一人暮らしをするためにお引越しの準備にかかっているんです。お部屋も決めて、あとは事務的な作業を終えれば住める状態になります。今年中に「自分がこれを求めてたんだ」っていう家具を揃えて、 めっちゃお気に入りの部屋にすることを目標にしたいです。自分の好きが詰まってるような空間にしたいですね。しっかりこだわりたいです。
――STAGLOWのメンバーだと既にRUIさんも一人暮らしですよね。
そうですね。でも5人で同じマンションの違う部屋に住むことになったのでRUIもまた引っ越します。みんなで「それぞれのプライベートを尊重しようね」って言ってます(笑)。お仕事の目標は何だろう? せっかくだったら具体的な目標を立てたいですね……海外のどこかのお店でSTARGLOWのプレデビュー曲の「Moonchaser」がかかるっていうことを目標にしておきます!
【インタビュー・執筆】小松香里
編集者。音楽・映画・アート等。ご連絡はDMまたは komkaori@gmail~ まで
https://x.com/komatsukaori_ [リンク]
https://www.instagram.com/_komatsukaori/ [リンク]
撮影:オサダコウジ
ヘアメイク:伊澤明日花(MASTER LIGHTS)/Asuka Izawa(MASTER LIGHTS)
スタイリスト :佐久間歩夢/AYUMU SAKUMA
ネックレス(68,200yen)/ブランイリス(ブランイリス トーキョー tel.03-6434-0210) ※税込
(C)「代々木ジョニーの憂鬱な放課後」製作委員会