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取り壊しの決まった学生寮に住む若者たちの最後の5日間を描いた映画『うかうかと終焉』より、主演・西岡星汰さんの撮り下ろしインタビューをお届けします。
大田雄史監督の長編デビュー作となる映画『うかうかと終焉』は、大田監督が結成した社会人演劇ユニット、芝熊(shiba-kuma)の旗揚げ作品として出口明氏と共同執筆した戯曲が原作。将来への希望と不安、友情と恋愛――廃寮となる学生寮でのちょっぴり切なく、心温まる青春物語です。
大田監督は京都大学在学中に今年で結成30年目を迎えた京大公認の演劇サークル劇団ケッペキに所属。母校の学生自治寮“吉田寮”などをモチーフにした同名戯曲は、演劇界の重鎮たちから絶賛され、第23回日本劇作家協会新人戯曲賞を受賞。今回、映画化にあたり、大田監督自らの手で脚本を作り直しました。
映画『うかうかと終焉』W主演の一人、西島伸太郎役には、「高一ミスターコン2019」及び「男子高生ミスターコン2019」でWグランプリ受賞の快挙を成し遂げ、日本テレビ系列ZIP!朝ドラマ「サヨウナラのその前に」の公開オーディションで主演を勝ちとった期待の新鋭、西岡星汰さん。
西岡さんに本作の見どころや学生寮への憧れなどお話を伺いました。
――元々舞台作品として上演されてきた原作ですが、脚本を読んだ印象や感想を教えてください。
西岡:台本を読ませて頂いて、自分でもすごく共感できる部分や、「こういう考え方もあるんだな」といった発見もたくさんありました。綺麗事を書いているのではなく、現実を突きつけられる部分も結構あって。そこは個人的に好きでした。
今回、舞台原作の映画化ということで、大田監督さんにお願いして舞台の公演映像も観させていただきました。その舞台セットや、とても高い熱量で演技をされていてる俳優さんたちを観て、映画化するということで自分もその意志をちゃんと受け継いで、しっかり向き合っていきたいなと思って挑みました。
――脚本を読んでから舞台映像を観て、印象が変わった部分はありましたか?
西岡:舞台の台本に書いてあるセリフと、映画の台本では少しセリフが変わっている部分があったりして。撮影が始まる前に打ち合わせや台本の読み合わせを何度かさせていただいたときに、監督から「舞台のほうで好きなセリフがあったら、映画に入れるので言ってね」と言ってくださったので、「ここすごく好きなんです」と自分が舞台を観て個人的に刺さったセリフを伝えたら、すぐに映画の台本に入れてくださいました。一緒に共同で1つの作品を作っているという感じがして嬉しかったです。
――ちなみに、その好きなセリフとは……?
西岡:(渡辺佑太朗さん演じる)美濃部さんと話すシーンで、僕が演じる西島伸太郎が「たぶん僕はこの寮を出たら普通に幸せなんだと思います。普通に仕事をして、給料を貰って、気づいたら歳を取っていって……そういうのが嫌なんですよね」というセリフで、舞台の映像を観たときに自分も「確かにな」と思ったというか。少し目を逸したい部分だけど現実的なことで、誰しもが心の中に持っていることなんじゃないかなと感じたんです。
――そのセリフは最初の台本には入っていなかったということですか?
西岡:そうです、映画の台本には最初は入っていなかったです。急遽入れてもらって。
――そうなのですね! 私も映画の中でそのセリフがとても印象的で、若い人や何かに憧れを持っている人はみんな刺さるセリフなのではないかなと感じました。
西岡:自分もまだ大学生で19歳なので、やっぱり若いからその言葉がすごく刺さったのもあると思います。このセリフは予告編にも少し使われていました。
――主人公の西島伸太郎をどのような人物だと捉えて演じましたか?
西岡:劇中の伸太郎は結構何を考えているのかわからない部分が多くて。オーディションを受けるときにいただいた台本には色々な役があったのですが、その中で伸太郎を演じたときは、完全に自分の中に落とし込んで役に臨めたかというと、そうではなくて、わからない部分を抱えたままオーディションに行ったんです。でも、それが逆に良かったのかなと思いました。そうやって少し考え事を抱えている様子が伸太郎に合っていたのかなと。
でも、伸太郎は寮に対しての思いなど人よりも少し考えすぎてしまう部分があったり、映画の中でも序盤は本心が見えない部分が多いんですけど、みんなが寮を出て行った後に、美濃部さんと腹を割って話していく中で、段々と実は伸太郎もたくさん不安があったり、やるせない気持ちを抱えていることが見えて。そんな彼と自分は少し似ている部分があると思いました。
あまり感情を表に出さないとかもあるんですけど、誰しも実は何か抱えているものがあると思うので、そこは観てくださる方に伝わるように演技しようと思いました。
――他の役柄でもオーディションを受けたんですか?
西岡:他の役も、男性が演じる役は全部受けました。自分では伸太郎役で受かるとは思っていなくて。前野中吉が関西弁という設定で僕は関西出身なので、オーディションのときは関西弁の役ができたらいいなと思っていました。
だから、主演に決まったと連絡をいただいてすごく嬉しかったですし、なんで自分が?という思いもありましたけど、主演ということで責任も伴い、自分がちゃんと役に向き合わないと良いものは作れないので、しっかりと覚悟を決めて撮影に臨みたいと思いました。
――作中では、寮生が退寮するときに壁にメッセージを書いて出ていくという流れがあり、寮内にたくさん書かれたメッセージが映り込んでいましたが、印象に残っているものや、心に刺さったメッセージはありましたか?
西岡:寮のセットに入ったときに、もうたくさんのメッセージが書かれた状態で、とても作り込まれていたので驚きました。すごく好きな言葉があって、僕が書いたメッセージの上に大きく書かれているんですけど、「向上心のないものは馬鹿だ」という言葉がすごく学生寮らしいなと思って。そういう熱い人が住んでいたんだろうな、と感じるような言葉が多くて、逆にふざけたネタっぽい言葉とかもあったり。劇中のように、本当に色々なことがあって、それら1つ1つの言葉すべてに学生寮の背景が出ているなと思って、見ていて楽しかったです。
――映像に映り込んだ中から、メッセージを探す楽しみもありますよね。
西岡:そうですね、部屋だけじゃなくて廊下とか他の壁にも美術さんが丁寧に作り込んでくれていて、そこでには有名漫画へのオマージュの言葉とかもあって、撮影中も見ていて楽しかったです楽しみました。
――今の西岡さんだったら、どんなメッセージを書きますか?
西岡:自分も作中で最後に窓ガラスに書いているんですけど、実はあのメッセージも大田監督と話して決めたんです。元々、最初にお会いしたときに、「壁に何て書きたいですか?」と聞かれて。そこから撮影まで1か月くらい考える時間をいただいて、台本を読んで他の人の言葉とか、それこそ舞台の映像も観て、監督に「この言葉を書きたいです」と伝えて最終的に決まりました。
だから、作中の窓ガラスに書いた言葉は、僕と伸太郎の両方の考えがあって出来たので、自分の想いも入っています。
――舞台版とは書いてあることが異なるのですね。
西岡:はい、一緒ではないです。
(※ぜひ映画でどんなメッセージを書いたのか確認してみてください!)
――学生寮のお話ですが、寮生活に憧れはありますか?
西岡:ありますね。滋賀県出身で京都が隣なので、京都大学の吉田寮は有名で昔から知っていて、その雰囲気も見ていました。アニメが好きで、テレビアニメ化された「四畳半神話大系」も京都を舞台にした大学生のお話で学生寮のような場所がでてきて好きでした(原作者の森見信美彦氏が吉田寮の元寮生)。学生だからこそ、ああいった暮らしができると思うので、だから小中学生のときは学生寮に憧れがありました。
でも、僕は寮ではないですけど、今シェアハウスに住んでいるんですよ。
――そうなのですね!!
西岡:同じ事務所の子たちと4年くらい住んでいます。もう4年も一緒に居たら、ただの友達とかそういう関係じゃなくなってきているので、そこは映画の寮で一緒に住んでいる人たちの関係性などを知る上で、自分がシェアハウスに住んでいることが助けになりました。
――本作は寮が取り壊されてしまう、という設定ですが、もし、4年も一緒に住んでいるみんなと離れ離れになることが決まったら……?
西岡:今は一緒に暮らしていることが日常になっているんですけど、それがそがれると決まったら、急に特別感を感じるようになるかもしれません。悲しいけれど、一緒に暮らしていることが、より楽しくなるのかなと思います。当たり前じゃないんだな、と感じるのではないかなと。
――シェアハウスしている中で印象に残っていることはありますか?
西岡:最初はめちゃくちゃ喧嘩して。1回、仲が悪くなりました(笑)。自分が15歳の頃から知っている人たちで、同い年と2つ年上の子が今一緒に住んでいるんですけど、年齢は関係なくお互い意見を言い合ったり。でも、一緒に生活していると掃除とか家事で揉めることが最初は多くて。当時は「もう一緒に暮らすのは嫌だな」となった時期もあるんですけど、やっぱり4年も一緒に暮らしていると、慣れて喧嘩にならないです。今は仲良くなりました。
――皆さんが大人になったというのもありますよね。
西岡:そうですね、自分は19歳で、他の2人も20歳と22歳になったので、一緒に暮らし始めた当時とは考え方も変わったなと思います。
――みんなで行う恒例イベントはありますか?
西岡:3人で家に揃ったときは、ゲームのNintendo Switchをします(笑)。それがいつの間にか恒例になっていて。みんな生活リズムが違うので夜に大体揃うことが多くて、揃ったときは自然とリビングに集まるので、そうなると「一緒にゲームしよ」と言って、2時間くらいやっています(笑)。
――今回、舞台原作の作品ですが、今後、舞台作品に出てみたいという気持ちはありますか?
西岡:あります。今回、共演させていただいた三浦獠太さんが先日舞台に出演されていて観に行かせていただいたのですが、映像とはまた違った生の演技の迫力があって、没頭して観て、終わったらその世界観にすごく入り込んでいたので、舞台って素敵だなと思いました。
――どんな作品に出てみたいですか?
西岡:最近ちょうど韓国ドラマを観て、全20時間くらいあるんですけど、本当に面白すぎてすぐに見終わってしまいました。それはアクションシーンが多かったので、アクションが出来たらカッコいいなと思っています。
――また、西岡さんは中国語を習得したいそうですが、なぜ中国語なのですか?
西岡:やっぱり海外の作品も、とても面白い作品が多いので、自分の出演作品をいつか海外の人に観てもらいたいなという思いがあって。そうなると、中国語が出来ると観てくれる人も多いと思うし、自分が好きな世界観も多いので、いつかは中国語の作品に出られたら、と勉強しようと思っています。
――今はご自身で少し勉強されているんですか?
西岡:ちょっとはやっているんですけど、でも発音がやっぱり難しいです。
――今後は中国進出も見据えているということで、楽しみにしています!
西岡:それが出来たら最高ですね!
――では、本作は未来への不安や葛藤などが描かれている作品ですが、どんな方に観てもらいたいですか?
西岡:まず、今自分と同じ世代の方が観てもすごく考えさせられる部分があるし、将来に対しての考え方の参考になるのかなと思います。
また、実際に寮生活をされていた上の世代の方とか、その独特な空気感を知っている方が観たら、当時のことを思い出すというか。ただキラキラした青春時代じゃなかったことも思い出せるような作品になっていると思うので、そういった世代の方にも観ていただきたいです。
――西岡さんは作中の時代背景より世代としては少し若いですが、西岡さんの世代から観て、どのような部分が心に残ると思いますか?
西岡:最近は寮生活をしている人が少なくなってきているので、身近に感じないかもしれないんですけど、それぞれが寮を出ていくときに何を思っているか、寮に対して、また自分の将来について思っていることは、自分と同年代の人にも共感できる部分がすごく多いと思うのでおすすめです。
――ありがとうございました!
[撮影:周二郎]
映画『うかうかと終焉』は福山駅前シネマモードで11月10日(金)~、シモキタ-エキマエ-シネマ K2で11月17日(金)~他、神奈川、大阪、京都で12月より上映。
映画『うかうかと終焉』
西岡星汰 渡辺佑太朗 松本妃代 三浦獠太 乃中瑞生 中山翔貴
中村無何有 コウメ太夫 後藤剛範 森下能幸 池谷のぶえ
前野朋哉 草村礼子 平泉成
原作:『うかうかと終焉』第23回日本劇作家協会新人戯曲賞受賞作
監督・脚本:大田雄史
公式サイト https://ukauka-movie.com
劇場情報
【東京】シモキタ-エキマエ-シネマ K2 11月17日(金)~
【神奈川】横浜シネマリン 12月23日(土)~
【大阪】シネ・リーブル梅田 12月22日(金)~
【京都】出町座12月22日(金)~
【広島】福山駅前シネマモード 11月10日(金)~
ほか全国順次公開
(C)「うかうかと終焉」製作委員会
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