中国で大人気の火鍋チェーン、「海底撈火鍋」(かいていろうひなべ)。アミューズメント施設のように楽しいお店だと聞いていたので、先日、上野店に行ってみました。上野広小路駅からすぐのビルの3階にあります。17時前に行ったのでスッと入れましたが、食事時には行列ができているようです。

入ってすぐのところにアワビたちがひしめき合う水槽が。そして天井にはシャンデリアが下がっています。一見高級だけれど、エメラルドグリーンを基調とした内装はキッチュさもあり、新しさと懐かしさが入り交じった不思議な居心地の良さが。最近流行っているガチ中華のお店に比べると、新しくてきれいな空間です。

入り口横にはネイルコーナーもありました。待ち時間が発生した場合、無料でネイリストさんのサービスを受けられるようです。また、お子さんを遊ばせられるキッズスペースもあり、タブレットからカメラで様子を見られたりと、至れり尽くせりです。

席はファミレスっぽいボックス席というのも落ち着きます。匂いがつかないように、席に置いたコートやバッグに布をかけてくれるサービスも。ガチ中華の無愛想な接客に慣れた身には新鮮な感動がありました。

そしてお通しは、謎のキュウリとグレープフルーツの組み合わせ。「たれバー(429円)」のオプションサービスを付ければ、たれコーナーにあるキュウリやグレープフルーツ、バナナも食べ放題なので、その伏線のようなお通しです。たれがないと味が淋しいことになりそうなのでこちらも付けることに。

今どきの店なのでスープの組み合わせはタブレットでセレクト。「マーラースープ」「豚骨入り白湯スープ」「高菜スープ」「トマトスープ」などから最大4種の味(同じ種類でもOK)を選びます。スープはだいたい600円前後する中、「たこのみ入りお湯」0円がありがたいです。写真を見る限りでは「たこのみ」ではなく「クコの実」のようですが……。お湯にしても具材からダシが出て、有料のタレがあれば味も無限に広がります。節約したい人にはおすすめです。

「たこのみ」以外にも不思議な日本語表記がところどころにあって味わい深いです。メニューの具材の大根はなぜか「白夢ト」という詩的な名前になっていました。注文状況を見られるページには「賞賛と意見の収集」というコーナーが。「提供の遅延」とか、直訳っぽい表記も気になります。日常から離れてプチ旅行気分に。お客さんは日本人の若者と中国人が入り交じっている印象でした。

言語は違っても、味のおいしさは万国共通。たれバーがとにかく大充実していて「ポン酢」「豆腐たれ」「サーチャージャン」「ニラのたれ」「ゴマたれ」「海鮮たれ」などのたれや、にんにく、自家製七味、万能ねぎといった薬味など、組み合わせの可能性が広がります。食事中たびたびたれバーに通うので結構忙しいです。

人気の組み合わせの表記もあり、「海鮮たれ」「きのこたれ」「自家製醤油」に「パクチー」「にんにく」「万能ねぎ」を混ぜるのがNo.1の組み合わせだそうです。初心者なので「ゴマたれ」と「万能ねぎ」、「海鮮たれ」に「パクチー」 など単品同士で混ぜてみましたが、さすが中国の人気チェーン店だけあって、かなり本格的な味わいに。

具は、糸ジャガ、餅しゃぶ、魚肉団子、野菜盛り合わせなどオーダー。店員さんにハーフサイズを薦められましたが、微妙に少ないので次々頼みたくなってしまいます。個人的に肉を食べないので魚中心になりましたが、もちろん肉も各種揃っています。「豚の腎臓」「牛の血管」「鴨の血」「豚の脳ミソ」なんて上級者向けの具も。豚の脳ミソは429円と、重要部位なのに意外な安さでした。

気付いたら店内は満席状態でした。シメは麺といきたいところですが、この「海底撈火鍋」だからこそ体験できるのが「カンフー麺」400円。オーダーしてみたら、しばらくしてポータブルスピーカーを持った若い男性店員(麺職人)がテーブルに来て、Hip Hopの曲を流しました。何がはじまるのかと思ったら、カンフーを取り入れたダンスを踊りながら麺を伸ばすパフォーマンスが披露。伸ばした麺を振り回してかなりの注目度でしたが、これが429円とはコスパが高いです。そして小麦粉のかたまりから伸ばされた平打ち麺がスープに投入され、終了。けだるげに踊っていましたがさすが中国の麺職人、絶妙な太さと手伸ばし感がある麺がおいしかったです。

つい節約メンタルで、自制しながらオーダーしたので2人で8000円位の会計になりましたが、たれが有料というのもあり、楽しい雰囲気に乗せられて具材を次々頼んだら普通に1万円以上になりそうです。アミューズメント感でテンションが上がり、多少高くても許容範囲に。都内に店舗が増えているのも納得です。店を出るときには既に入店待ちの行列が。Z世代やミレニアル世代は「体験」にお金を使うと聞きますが、まさにこの「海底撈火鍋」は若い世代の消費傾向を研究してできたお店なのかもしれません。同じく楽しめたということは、感覚がまだ若さを保っているから……? と希望を胸に店を後にしました。

(イラスト・文:辛酸なめ子)

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 「海底撈火鍋」で新時代の鍋奉行体験(辛酸なめ子)