コントの笑い×シネマのストーリー性を合わせた、映画館で笑う新しいエンタメジャンル“コントシネマ”が誕生。映画『サンチョー』が11月19日より全国公開となります。人気コンビ「ジャルジャル」の2人を主演に迎え、倉本美津留監督がメガホンをとった話題作。登場人物が全員ジャルジャルという、全く新しい青春群像劇をいかに作り上げたのか、お話を伺いました。

ーー映画大変楽しく拝見いたしました!倉本さんは実際に監督をやられてれみていかがでしたか?

倉本 コントをどう繋げて映画としての作り上げていくのかを考えるのは、パズルみたいな作業なんですよね。ここ数年ジャルジャルの舞台も演出させてもらっているんですが、舞台は舞台のやり方があって映像はまた全然ちがうんです。世界観を組み上げていくのが楽しくて仕方なかったですね。

ーー今回の映画に入れるコントは、迷わなかったんですか?

福徳 いつも僕らは作家さんたちにネタ見せをして、その中から選んでもらう感じですね。これとこれとこれで…って。多ければ多いほどいいんだけどって(笑)

ーー倉本さんは選ぶのを迷われませんか?

倉本 簡単ではないですよね。どんどん新作コントを二人が見せてくれるネタ見せの日があって。セレクトしたあとに全体の繋がりやテーマを決め込んでいく順番です。

ーー意識はされていなかったけれど繋がっていくというか。

福徳 意識はしてないですね。僕の印象としては、倉本さんは、いつも「テーマ」をいうんですよ。「今回は◯◯だな」って。それが、いつも打ち合わせの始まりみたいな感じなんですよね。

倉本 本人たちは一個一個、面白いものを作ってくれたらいい。そこにある共通点やテーマを探していくのは、本人たちと作家たちと僕とのチームプレイですね。

ーーテーマは、例えば「出会い」とか「夏」の様な言葉なんですかね?

倉本 いろいろですね。今回は大阪弁の「ほたえ」が裏テーマとしてありました。じゃれ合う、というような意味です。どういう風に繋げたら面白くなるかなって考えて行った感じです。

ーー今回、ネタ見せはどれくらい?

福徳・後藤 5、60本くらい?

ーーその段階では映画化は決まってなかったんですね。

倉本 ネタ見せの段階では決まっていなかったのですが、舞台が始まる前に同時制作することを決めました。大阪公演が延期になったので、その空いたスケジュールで撮影してしまおうって。

ーー映像もすごく綺麗で、映画館で鑑賞するのにぴったりだなと思いました。

倉本 綺麗でしょ。多いときでカメラ4〜5台くらい仕込んでます。基本的には1テイクだけの撮影で生け捕る方法です。芸人のやり方を考えて、いちばんリアリティを追求できる方法を模索した結果です。

今回のコントシネマ、ジャルジャルのファンはもちろんなのですが、ファンじゃない人にも見ていただけたらなって思ってます。映画ファンが気まぐれにチョイスして「ジャルジャルの印象変わった!」って新鮮に楽しんでもらえたら最高ですね。

ーー映画ファンの方がたまたま観たら、おふたりで11役やられていて、びっくりしますよね。

後藤 気持ち悪いですよね。

福徳 自分らでも気持ち悪いですもん。大画面で見たら気持ち悪い世界だなと(笑)。

倉本 でも、見ているうちに違和感なくなっていきませんか? そんなにメイクもしていないのに全員違う人間に見えてくる。そこのエンタメも楽しんでもらいたいですね。

ーーおふたりは、演技を頑張ろうという意識は、あるのでしょうか?

福徳 まぁそうですね。コントでやってる感じです。根本的に自分たちで作ったネタをやるのと、誰かが考えたものをやるっていうのは気持ちが全然違いますね。自分たちで作ったネタではのびのびできるというか。何をやってもOKで。

後藤 自分たちで作ったものじゃないと、自分の意思ではみ出しちゃっていいのかわからないので。

倉本 僕はできるだけ自由にコントをやってもらえるように心がけているつもりです。だから、基本一発撮りなんです。普通の映画づくりとはまったくやり方が違うと思います。準備には時間がかかりますけど、演者が動く撮影時間はめちゃくちゃ短いんです。

福徳 ほぼ一発撮りはありがたいです。「3回以上やらなあかんのか」と思うと、力を逆算しちゃうので。リハもやらんでいいから。毎回本気でできるんです。

ーー倉本さんが撮られていて、撮影中に印象的だった場面はどちらですか?

倉本 血を流すシーンですね。舞台だと見せられないディテールの作り込みで、映像ならではの笑いが作れたなって確信しました。

ーー狂気ですよね。血があるのと無いのとじゃ、すごく意味合いが変わってくる。

倉本 それから、山のシーンの撮影は印象に残ってますね。めちゃくちゃ素敵で。それとめちゃくちゃ遠くて(笑)。

後藤 確かに。高尾山のイメージでしたもんね。サクッと撮るくらいの。

福徳 あの山やから動画撮影できましたよね。

倉本 編集しながら、綺麗すぎてCGに見えないようにせんとなって思うくらいで。

福徳 撮ってても思いましたもんね。嘘みたいにきれいな山でした。

ーーみなさんは映画をよくご覧になりますか?

福徳 はい。Netflixをぼちぼち、ちょいちょい観ます。スリリングなやつも好きだし、ラブストーリーも好きやし、ミステリーも好きやし。ホラーはあんまり観ないですけど、ただただ痛快なやつとかも観るときは見るし。
最近、逆に面白かったのが韓国映画の…ラブストーリーなんですけど、朝起きたら男側が顔が変わってるっていう。人物というか、性別も年齢、人種も変わってるっていう。いろんな意味で面白かったです。これが名作とうたわれている振りも含めて面白かったです。

後藤 僕はこんなに何回も観て、こんなに理解できひんのやと思ったのが「TENET」です。

倉本 最近「MINAMATA」と「ドライブ・マイ・カー」を観ました。両方ともすごくよかった。休日ゆっくりしたいときに映画館で3本立て続けに鑑賞して過ごすこともあります。映画はやっぱり娯楽ですからね。

ーー今日は楽しいお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました!

『サンチョー』公開中

高校一年生の安田(福徳)は、ある日登山部の顧問(後藤)に呼び出される。三年の先輩たちが引退してたった一人の部活動となってし まった登山部を廃部にするため、退部届を出してくれという相談だった。顧問との山登りが学校生活で唯一の楽しみだった安田は失意の底に。その様子を、入学してから一人も友達ができずにいた生徒(後藤)が見ていた───。

一方、公園では駆け出しの漫才師(後藤、福徳)が、芸への向き合い方を巡って解散の危機に瀕していた。また同じころ別の場所では、若手俳優(福徳)が、自分の名字を変えるために女性にアプローチを繰り返していた。 オリジナルのカット技法を極めた美容師(福徳)、先輩に屈託なくいたずらをしかけようとする後輩(後藤)、家主に鉢合わせてしまう泥棒(後藤)、マジシャンの卵(後藤)、公演に人生をかける劇団の座長(後藤)……

それぞれの場所でそれぞれ必死に生きる奴ら。ときに苦く、 ときにおかしく、人生は進んでいく。山を愛する以外になにもなかった少年たちの人生は、果たしてどんな方向に転がりはじめるのか。

出演:後藤淳平(ジャルジャル) 、福徳秀介(ジャルジャル)
作:ジャルジャル(後藤淳平、福徳秀介)
監督:倉本美津留
構成:藤井直樹 川上潤也
企画構成:本多アシタ
音楽:窪田渡
ポスター写真:大金康平
プロデューサー:真砂陣
制作協力:株式会社ニンポップ 株式会社レゾナージュ
制作・配給:吉本興業

(C)2021 「THANC YOU ─JARUJARU TOWER 2021─」 吉本興業

撮影:オサダコウジ

情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 2人11役! コントシネマ『サンチョー』ジャルジャル &倉本美津留監督インタビュー「大画面で観たら気持ち悪い世界(笑)」「見ているうちに無くなる違和感」