シソンヌじろうによる同名小説を映画化した『甘いお酒でうがい』が現在公開中です。その主人公の川嶋佳子を、松雪泰子さんが好演しています。40代独身女性が何気ない日常を綴った1年5か月の日々の日記をベースに、恋、亡き母、人生という誰でも覚えがある人生の悲哀と日常の小さな喜びの数々を、松雪さんと大九明子監督が優しい目線で物語として紡いだ本作。感動誘う本作について主演の松雪さんにお話をうかがいました。



●もともとシソンヌじろうさんのキャラクターですが、オファーがあった時はいかがでしたか?


脚本をいただいて読み進めていくうちに、どんどん佳子さんの不思議な世界に引き込まれていく感覚がありました。映画の脚本なのに物語としてとても面白かったんですね。これが映像に立ち上がって、映画になったらどんな世界になるんだろうってすごく感じました。その後に原作を読み、その後にじろうさんのコントの映像を観て、「あ、ぜんぜん違う人だ」って、そこで初めて気がついた感じです(笑)。


●影響が出るので、観てほしくなかったそうで。


そうですね(笑)。プロデューサーさんに「何か参考にしたほうがいいのでしょうか?」と質問したら、「まったくないです」というお答えでした。でも実際、本当に別のキャラクターだったので、わたしは純粋に脚本から感じる人物像を紡いでいけたと思います。


●佳子さん像については、どのように受け止めましたか?


ユーモアがあって、独特の、変わった視点をお持ちですよね。独特の世界観です。人間らしいなと感じたのは、なんだかいつも後ろ向きに考えちゃうところ。それは彼女の持っているユ-モアで、あえてポジティブな方向に変換していって生きている人っていう感じがしました。後はすごくまわりの友人たちに支えられていますよね。それによってとても守られている人でもあったりするし、孤独なのかなと思いきや、最終的には穏やかな愛を得て幸せな方向に向かっていくお話だと思いますね。彼女なりの独特なユーモアが、とにかく面白かったというのはあります。ものをとにかく大切にするとか、そこに感情移入をしていくところとか、とても印象に残っています。


●共感するシーンはありましたか?


自転車に乗って暗い海に向かうシーンですね。自分の力では到底太刀打ちできないような圧倒的な自然の力に立ち向かうことによって、何かを見出そうとする意識は共感できるなって思いました。日常で煮詰まったりすると、自然の中に行きたいと思うことってありますよね。人の考えが及ばないところに行きたいなって思う人はいると思うんです。


●そうなったら、どこに行きたいすか?


山ですかね。山を歩く、いいですよね(笑)。


●また、松雪さんは上司とか刑事とかキャリアウーマンを演じているイメージが強いので、内勤のOL役はすごく新鮮でした。


まず大九監督からお話をいただいて、すごくうれしかったのですが、確かに役としてはトライしたことがない役でした。脚本を読み進めていくうちに面白いことがたくさんつまっていたので、そのクリエイションが無限で自由な感じがして、わくわくしました。約一年半前でしたが、純粋に作品の一部としてクリエイションしたいという想いが個人的にも強くあった時だったので、オファーをいただいてうれしかったです。


●その結果、すごくリアルな作品になりましたよね。


家に帰ってきて子どもの靴を見つめるシーンでは、撮っている時に監督も号泣されていて。というのも女性ってまもなく子どもが産めなくなる年齢に差し掛かって来た時に、どうしてもそういう感情になると思うんです。わたしには子どもがいますが、この年齢になると、そういうことがなくなるんだっていう、なんとも言えない感覚になります。佳子さんは産んでいないし、まだパートナーとどうなるかもわからないなか、ずっと派遣社員で生きていて、未来がどうなるかわからない状態で、女性としてもう触れられないことが出てくるっていう、それは観ている人に刺さるところであると同時に、とても悲しくもなりました。監督とも「受け入れなきゃいけない瞬間ってあるよね」って、話をしていました。


●多くの人たちに観てほしいですね。現実の残酷さもありつつ、それだけで終わらない映画ならではの温かみもあります。


そう思っていただけたら、本当にうれしいです。ほぼセリフがない状態で、モノローグで静かに淡々と詩的に進行していくけれども、いろいろなところに生きるアイデアとヒントと気づきが散りばめられていて、本当に観ていて心が温かくなる作品だと思います。穏やかに鑑賞していただける作品になりましたので、ぜひご覧ください。


公開中


(執筆者: ときたたかし)


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情報提供元: ガジェット通信
記事名:「 シソンヌじろうのキャラクター“川嶋佳子”を熱演 『甘いお酒でうがい』松雪泰子インタビュー「穏やかに鑑賞していただける作品に」