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どうも特殊犯罪アナリスト&裏社会ライターの丸野裕行です。
昔からあった詐欺手口の中に、“寸借詐欺”というものがあります。
寸借詐欺とは「すいません、さっき財布を落としてしまって手持ちのお金がなくなりました。申し訳ありませんが、2千円ほど貸していただけないでしょうか? 必ずお返しいたしますので……」と話しかけ、2千円を貸したら二度と戻ってこないという典型的な手口のことです。
<画像はすべてイメージです>
人の慈悲につけ込んだこのような詐欺は決して許されることはないのですが、「返すつもりで借りた。でも、もう少し待ってほしい」という言い訳だけで、詐欺が成立することはないわけです。騙す意思の立証義務は、被害者側にあるためになかなか難しいのです。そこが詐欺師の狙い目になるのですね。
今回は、寸借詐欺歴32年の吉田恵子氏(仮名/77歳)にその手口や狙うべきターゲットの見分け方などを聞いていきたいと思います。
丸野(以下、丸)「もう32年も寸借詐欺をされているのですね」
吉田氏「そうねぇ。日本人は親切だから、困った顔をして茫然自失になって立ち尽くしていると、むこうから“おばあちゃん、どうしたの?”って声をかけてくるんですよね。そしたらかくかくしかじかで非常に困っていることを話すと、財布のヒモを緩めてくれるわけ。むこうは、千円、2千円くらいなら大丈夫と考えているからね。そしたら、まったくデタラメの住所と名前を書いた紙を渡すわけ。相手の電話番号と名前を聞いて……。まぁ二度と会うことはないんだけどね」
丸「はぁ」
吉田氏「でも、最近では“一緒に交番に行って、相談しましょう”という人もいてねぇ。めんどくさいこと言わないで、早く金寄こせって感じになるわよね」
丸「それは、逆ギレというやつですがね……。人の良心を逆手に取ることに罪悪感はないですか?」
吉田氏「そりゃないね。もうこれで32年もやってきてるわけだから……。国が悪いのよ。あれだけ働きづめで収めてきた国民の税金なのに、スズメの涙ほどの年金しか渡さないんだから、ね」
丸「ご家族はおられますか?」
吉田氏「いるよ。娘ね。バツ3で、黄金町でスナックやってる。孫もいるよ。もう30になるかね。昔は、私が考えた手口を教えたこともある」
丸「どんな手口ですか?」
吉田氏「昔は出会い系サイトが流行ったでしょ? 出会い系サイトって寸借詐欺にピッタリでね。孫娘をそのサイトに登録させて、知り合った男と会おうと……。で、交通費がないので、書留を局留めで現金を送らせてね。そのまま連絡が取れなくなるという寸法で……。でも、これはまだましな方。孫娘に何度もメールのやりとりをさせて、仲良くなったときに“父親の手術に20万円がかかる”と言わせて、送らせたりね」
丸「ひどいな」
吉田氏「その後も、リハビリなんかにお金がかかると追加で現金を送らせたりして、合計で120万円くらいになったかねぇ。しつこく電話がかかってくるから、孫の彼氏に“おまえが妹につきまとっているストーカー男か! これ以上電話をかけてくるのなら、警察に通報するぞ!”なんて言わせて……。金は返ってこないわ、怒鳴られるわ、最悪だわよね」
丸「一度も彼女に会っていないのであれば、その男が本当に兄なのかもわかりませんよね。しかし人が良すぎますよね、百何十万も会ってもいない相手に渡してしまうなんて……」
吉田氏「こいつらは本当のバカ。女が欲しくて仕方がなくて、下心丸出しなんだからね。“情けは人のためならず”という言葉を知らないのかね」
丸「このような詐欺に遭わないために詐欺師からのアドバイスはありますか?」
吉田氏「まず《金を貸してくれと言われたら、ちゃんと裏ドリをしないといけない》ということね。どこの誰なのか、どこに住んでいるのかをハッキリさせてからじゃないと、お金なんて貸しちゃダメ」
丸「それが基本ですね」
吉田氏「“犯人なので逮捕してください”と処罰の意思を示すのが告訴になるわけだから、警察に相談になんて言ったらダメ。ただ単に相談したのでは犯罪認知されないの。それじゃ警察は動いてくれない。被害者になったときには、少なくともちゃんと“被害届を出す”程度のことをしないと……。でも被害届って証拠集めをしっかりしないといけないから、警察に受理させるにはなかなか難しいわね」
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いかがでしたか? 実は筆者も、自宅の最寄り駅近くでみすぼらしい格好をした高齢者に「家に帰ることができないから金を貸してほしい」と声をかけられた経験があります。そのときは寸借詐欺だとすぐに分かったので、無視して通り過ぎました。
寸借詐欺被害に遭わないコツとしては、まずは「警察に相談に行きましょう」とひと言言ってしまうことです。被害に遭う人というのは、相手の話に耳を傾けてしまう傾向が強く、話を聞いて情にほだされてお金を払ってしまうわけです。
そのような傾向が強いと自覚しているあなた、長話になる前にその場を立ち去りましょう。
(C)写真AC
(執筆者: 丸野裕行)