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「Galaxy Fold」(SCV44)発売から4ヶ月、Galaxy折り畳みスマホ第2弾として、ついに「Galaxy Z Flip」(SCV47)が発売されました。
GalaxyFoldは、画面を横に折り畳めて、小さいタブレット並みの使い方ができるスマートフォンでした。一方、今回のGalaxy Z Flipでは、画面を『縦』に折りたためる機構で、画面を広げれば普通のスマートフォンと同じ形になります。
そんなGalaxy Z Flipをしばらく触れる機会がありましたので、その折り畳み機構による利点やしばらく触ってみた感想などを以下にまとめてみました。
まずはスペックを中心に観察していきます。
ディスプレイは、解像度2636×1080の約22:9の縦長画面となります。
これはXperia1などの「21:9」よりもさらに縦長となりますが、パンチホールのインカメラがある分どちらも同じぐらいと見れるかもしれません。
ちなみに画面を縦に2分割すれば、片方1318×1080の約11:9となり、たとえば画面を折り曲げた状態でアプリを2画面同時起動する際に、両方とも正方形に近い画面比率で操作できます。
背面にはサブディプレイがあるものの、1.1インチの非常に小さい画面で、GalaxyFoldのように「画面を閉じてもアプリを操作できる」ものではありません。表示されるのは、時計や通知、充電中は電池残量と充電残り時間、そしてアウトカメラのプレビュー等で、ガラケーのサブディスプレイと同じ扱いです。ただしタッチは可能で、通知の詳細などの確認ができます。
なおカメラ・センサー・CPUなどの基盤部分は、本体上半分にあります。
<写真:標準撮影>
<写真:拡大撮影>
カメラは、GalaxyFoldやS10シリーズよりもグレードが落とされています。アウトカメラからは望遠カメラが無くなっており、遠くのものを拡大して撮るのに弱くなっています。手持ちのGalaxy Note8と比較してみましたが、そちらの方がノイズは多いものの細かく撮れていた印象です。
SoCは「Snapdragon855+」となり、GalaxyFoldの855無印と比べて動作クロック等の性能が若干上がっています。
一方でRAMは「8GB」とGalaxyFoldの12GBから2/3に減りました。しかし、そもそもそのGalaxyFoldが化け物なだけで、他のハイエンドスマホと同等かそれ以上に積んでいます。
ストレージは「256GB」ありますが、GalaxyFold同様にMicroSDなどの外部ストレージは挿せません。
重量は約「183g」とGalaxyFoldの約276gと比べて93gも軽くなりました。GalaxyFoldは折り畳んで普通のスマホとして使うには重すぎましたが、Galaxy Z Flipは普通のスマートフォンと同等の重さになりました。
以上のように、スペックは十分にハイエンドスマホのレベルです。GalaxyFoldが規格外の化け物なのに対し、Galaxy Z Flipは程よい強さの化け物と言えます。
そしてGalaxy Z Flipの価格は「約18万円」と最上位のiPhone並の価格となりました。
GalaxyFoldが約25万円と、そう簡単に手が出るものではありませんでしたが、これなら何とか手が出せるかな……という印象です。
画面を閉じているときは、ほぼ正方形の形に収まり、胸ポケットにもすっぽり入ります。やわらかい画面を閉じて保護する姿は、まるで貝のようです。
なお、閉じた時でも画面は完全に密閉されず、側面から覗くと1mm程の隙間があります。
画面を180度完全に広げれば、普通の縦長スマートフォンとして使えます。ベゼルのちょっと太い、ごく普通のスマートフォンです。
画面を消している状態では、真ん中の折り目はよく見えますが、画面表示させているときには、この折り目はさほど気になりません。また、折り目に引っかかることなく、スワイプなどの操作もできます。
これこそ、Galaxy Z Flipならではの姿ですね。しかも、画面を折り曲げた状態のまま自立が可能です。カメラを使っての撮影や配信をする際に、スタンド不要で角度調整もできます。
本体の上半分と下半分の重量は大体同じぐらいで、どちらを下に置いても自立可能です。それどころか、V字に置いた状態でも自立できます。重さの比率については、頭でっかちにならないように考えられて作られてそうです。
はい、というわけで、画面を閉じているときの外観は、確かにゲームボーイアドバンスSPを思い浮かべる姿です。サイズ感も大体同じ位です。近くに置いた後にふと眺め、どっちがGalaxy Z Flipだったか一瞬分からなくなるぐらいには雰囲気が似ています。
そして本体にイヤホンジャックが無いので、イヤホンジャックが必要な場合には充電端子(USBコネクタ)に変換ジャックを繋げる必要があるところまでそっくりです。
Galaxy Z Flipは、USB端子からの充電のほかQiでのワイヤレス充電にも対応しています。充電台に置きながら、画面を起こして動画を楽しむ、といった使い方もできます。
そして、ワイヤレスパワーシェア機能もあり、逆にGalaxy Z FlipからQi対応デバイスへの充電もできます。
土台と滑らない床があればワイヤレス充電スタンドにもなりますが、載せるものによっては安定性が悪くなるためバランスを取るのにコツが必要になる場合があります。
Galaxy Z FlipにいろんなUSBデバイスを繋いでみて、どんな挙動になるかを試してみました。
DAC非内蔵型(Audio Adapter Accessory Mode準拠)の変換アダプタを差したところ、「接続されたUSBデバイスは対応していません」と出て、通知音がむなしくもスピーカーから出ました。DAC内蔵型なら使えました。
DeX Stationは、Galaxy端末を差すと別モニターにデスクトップ画面が表示されて、パソコンのように使えるようになるアクセサリーです。USB2口・有線LAN端子・HDMI端子を持ちます。
これにGalaxy Z Flipを差すと端末は充電され、DeX Stationに繋いだUSBデバイスも認識します。そして別モニターにデスクトップが映し出され……ません。
なんと、HDMI端子から映像が出ません。設定にもDeXに関する項目がなく(少なくとも検証を行った時点では)DeX非対応の様子です。ちなみに、GalaxyFoldは以前の検証地点でちゃんとDeXしていました。スペックは十分足りているので、今後のアップデートで対応されるのでしょうか。
手持ちのUSBストレージデバイスと繋いだところ、無事に1.44MBのストレージとして正常認識しました。1.2Mフォーマットでは要初期化と言われ、使えませんでした。ドライブ自体は対応しWindows10では読めるものの、Android10ではダメらしいです。
本体から、OTGケーブル→充電ケーブルとつないで、機器を充電できます。いざという時のコンパクトモバイルバッテリーにもなります。
画面を折り曲げられる機構は、他のスマホではできない利用方法を見つけてこそ、その真価が発揮されるもの。そこで、いくつかの有効活用法を編み出してみました。
これは公式でもよく推される使い方です。机などの上に置いて撮影する際、スタンドがなくても上下の角度を自由に変えられます。標準のカメラアプリも、折り曲げているときはプレビュー画面を上半分だけに映したりと、気の利いた挙動をします。個人的には、近くの物を拡大して虫メガネ代わりとし、半田付け作業する際に役に立ちそうです。
画面を90度以下に折り曲げ、画面の左右を手で覆うように、両手で持ちます。これで、自分の視点以外の角度からは見えなくなります。これも地味ながら、他のスマホではできない活用法です。
画面を90度ぐらいに折り曲げ、下半分を片手で普通に持ちます。
下半分を握って操作する場合、画面下半分は文字が打てるぐらいに親指を動かせますが、180度開いた状態では、画面上半分に親指がなかなか届いてくれません。
しかし、90度折り曲げた状態なら、親指がそのまま上部にも届きます。画面2分割でアプリを同時起動させている場合に、特にその効果を発揮します。
画面を90~150度ぐらいに折り曲げ、本体片側を両手で横に持ちます。アプリは均等に2画面分割で同時起動させます。
本体の背面真ん中を側面のように持つことができ、両手の親指も上まで届きやすくなります。そのまま、2画面同時起動中のアプリの片方を、両手で操作することができます。また、両手で操作していない方のアプリにも親指が届くため、ほぼそのままの持ち方で別アプリも操作できます。
画面を広げてしまえば、縦に長い普通のスマホです。そのため、折り畳み機構によるアプリ動作への影響は少ないです。また、16:9の互換表示で起動することもできるため、大体のアプリは問題なく動作します。
問題なく動作します。AR+も正常に使えます。ジャイロセンサーはカメラのある上半分にあるので、どう折り曲げてもAR内のポケモンは背景に追従できます。
スマホを持たずに机に置いたまま、AR+で自分の相棒ポケモンと戯れる、というのも、この端末ならではの使い方の一つです。
また、ポケモン一覧画面では約22:9の画面比率が活かされ、全画面表示を有効にすれば、1画面に縦6行分が収まるぐらいに広くなります。
約22:9の画面でやるマイクラは、臨場感あふれますねー。
マインクラフトのスマホ版は、両手で遊ぶ横持ちのゲームですが、画面分割することで縦画面でも遊べます。ここまでなら普通のスマホでもできますが、画面分割しながら両手で遊ぶとなれば、Galaxy Z Flipの機構が活きます。
縦持ちで両手で遊ぶ場合。画面を折り曲げた状態なら、下画面でマイクラしながらでも、上画面の別アプリにも手が届きます。
これがGalaxy Z Flipの魅せ所。画面を折り曲げると、横画面でも両手で持ちやすくなるため、マイクラもほぼ違和感なく操作できます。動画やチャットを眺めながらマイクラを楽しむこともできます。
このアプリは、標準の設定では16:9表示となり、下部分がガラ空きの状態で起動されてしまいます。端末側の設定で全画面表示するように設定することで、画面に合わせた比率で起動できます。
また、このアプリはAndroidの分割画面表示機能をサポートしません。そのため、どうしても画面分割させたい場合は、開発者向けオプションから「アクティビティをサイズ変更可能にする」設定を有効にする必要があります。しかし、これを乗り越えれば、「折り曲げた画面内での、ポケGOとドラクエウォークの共存」という光景が見られます。
今回さわっていて気づいた点を挙げていきます。
片手だけで開けようとすると、時間をかけていくつかの手順を踏まないといけません。
ガラケーのように、親指を左右から入れるやり方だけで開けようとすると、爪によって内側の画面を傷つけてしまったり、本体に無理な力が加わる恐れがあります。故障の原因にならないよう、素直に両手で開けたほうが安全です。
なお、どうしても片手で開けたい場合は、親指で隙間を作って自分のアゴでこじ開ける方法であれば安心でしょう。
画面を閉じた状態で使える画面は、1.1インチのサブディスプレイだけです。時計や通知を確認するためのものですので、アプリの操作はできません。今までの折り畳みスマホは、片画面やサブ画面を使うことにより折り畳んだ状態でもアプリの操作ができましたが、Galaxy Z Flipにはそうした仕組みはありません。通知の詳細確認や文字を入力したりする作業の時も、画面を開ける必要があります。
3Dバリバリなゲームやアプリ同時起動など、マシンパワーを使うアプリをしばらく使っていると、本体の上半分が熱くなります。GalaxyFoldと比べると、本体が小さくCPUのクロックが高いGalaxy Z Flipの方が熱を持ちやすいようです。
しかし、すぐ熱くなるということはきちんと本体内の熱が逃げている証拠でもあります。内部で熱を持ち続けて一部機能が停止するよりは遥かにマシです。
ただし本体上半分にもサブバッテリーがあるようですので、バッテリーの寿命のためにも過度な発熱はできるだけ避けたほうが良さそうです。
これはGalaxyFoldも同じですが、この端末は防水・防塵機構を備えていません。特に開閉軸となるヒンジ部分にホコリを入れたくないという人は、ポケットの中をこまめに掃除しておいたほうが良さそうです。
これもGalaxyFoldと同じですが、折り畳めるほどに柔らかな画面ですので、傷をつけないためにも硬くて鋭いもので触るのは避けたいところ。そのため、爪の長い人は画面に爪がぶつからないよう、特に注意しなければなりません。
「約22:9」「画面上真ん中にパンチホール」という画面は、全画面表示のアプリを作る際は特に注意が必要です。「21:9」という比率も出ている中で、全画面ではそれよりも縦長にできるこの比率は、アプリの画面構成が甘いとボロが出ます。また、画面比率を16:9強制にしようとすると、範囲外部分が結構目立ち格好が悪いです。
この端末の機構を生かしたアプリを作るなら、画面を上下半分ずつに分け、下半分を操作部、上半分を表示部と分ける、Nintendo DSのような画面構成にするだけでも利便性が上がります。ただし折れ曲がる部分は視認性が落ち、タッチもしにくいため、画面中央部分に重要パーツを置かないよう配慮すると良さそうです。
なお、端末の開き具合を検出できそうなセンサー(name=”Folding Angle Non-wakeup”type=65686)の値を取得しようとしたところ、権限不足で弾かれてしまいました。
「画面を広げれば普通のスマホになるなら、別に普通のスマホでも構わないじゃないか。」と思っていましたが、実際はそんなことありませんでした。Galaxy Z Flipは画面を完全に広げると確かに普通のスマホと大差ないのですが、折り畳み機構によって、かゆい所に手が届くような使いやすさがありました。特にアプリ同時起動時には、折り畳み機構を活かした独特の使い方で、操作性が向上しました。
ほかにも、使うアプリによって様々な有効活用法があるはずです。折り畳み機構が活きるかどうかはユーザー次第です。
GalaxyFoldが玄人向け変態端末なら、Galaxy Z Flipは一般層向けの身近な変態端末でしょうか。価格も、GalaxyFoldの(庶民にとっては)絶望的な価格から現実的な額に少しずつ収まってきています。折り畳みスマホが普及する時代へと少しずつ近づいてきているのは確かです。
そういった意味でも、Galaxy Z Flipは“変態端末”と言われてきた「折り畳みスマホ」を「普通のスマホ」へとスライドさせうる機種の先駆けかもしれません。他社の動きも含め、折り畳みスマホの今後が気になるところです。