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「未来を創造する。」をキャッチフレーズに、日本にも新世代の蝶がやってきました。
「GalaxyFold」が、auから「SCV44」として、10月25日から発売されました。シームレスな画面をダイナミックに折りたためる機構が話題となっており、発売前からも何かと騒がれておりました。
横に折り畳む機構で大画面にできるスマートフォンといえば、ドコモから2機種出ておりましたが、今回の折り畳み端末はまさかのauからの発売です。
しかし、GalaxyFoldの価格は約25万円。普通のスマホとして買うにはものすごく高価と感じる人が多いのではないでしょうか。まさに、選ばれしものにしか舞い降りない伝説の蝶のような存在です。
幸いなことに、その蝶がこちらにもしばらく舞い降りてくれましたので、大切に可愛がりつつ、じっくり“観察”してみました。
関連記事:GalaxyFold発売! ここで過去の“変態端末”3機種を振り返りましょう
https://getnews.jp/archives/2252803
GalaxyFold(SCV44)の主なスペックは、以下の通りです。
プロセッサ: Snapdragon855(8コア)
RAM: 12GB
ストレージ:512GB
バッテリー: 4,380mAh
OS: Android9(Pie)
今の時代の最上位プロセッサーを搭載、RAMもモリモリ、バッテリーも多めに積まれており、ゲーミングスマホもびっくりの大盛りハイスペックです。これなら、複数のアプリを起動させ放題です。もし、普通のスマホがこのスペック分を積んだ場合、価格は10万円を余裕で超えるでしょう。
GalaxyFoldの画面は、折り畳める大画面と、その背面についている小画面の、計2画面あります。今までの2画面折り畳み端末とは全く異なる画面構成で、「2画面合わせて大画面」ではなく「大きい1画面を折り畳める」という構成です。
折り畳める大きい画面は「メインディスプレイ」、閉じた時に使う小さい画面は「カバーディスプレイ」と呼びます。メイン・カバー共にAMOLEDです。
メインディスプレイは、2152×1536の7.3インチと、4:3に近い比率で、タブレット並に大きいです。右上にカメラなどを搭載するための切り欠けがあります。黒い画面では折り目が見えますが、普通に使う分にはさほど目立ちませんし、むしろ指紋の方が目立つくらいです。
カバーディスプレイは、1680×720の4.6インチと、21:9の縦長比率です。結構小さめの画面で、片手で縦に持ちながら親指が端まで届くサイズです。
解像度は、最近のハイエンドスマホとは違い、画面サイズの割にさほど細かくはありません。メインディスプレイのピクセル数は、WQHD(2560×1440)未満です。しかし、普通にいじっていても画面の荒さは感じず、「ちょうどいい」解像度です。カバーディスプレイは横720ピクセルと粗目に感じますが、そもそも画面が小さいのでそれどころではありません。
メインディスプレイは内側に折り畳む機構となっており、SONY Tablet Pのように画面を保護できます。
<写真:SONY Tablet P>
折り畳んだとき、メインディスプレイは使えませんが、代わりに背面のカバーディスプレイで、普通のスマホとしての操作が可能です。
スペックについては、現行のハイエンドスマホよりも大盛りな仕様となっており、かつての「MEDIAS W」のようにスペック不足で困ることは無さそうです。
<写真:MEDIAS W>
カメラについては、メイン・カバーディスプレイ面にインカメラ、その後ろにはアウトカメラがあり、画面を広げた時でも閉じた時でも、常にインカメラ・アウトカメラがある状態です。そのため、「ZTE M」のように撮影時にいちいちひっくり返す必要がありません。
<写真:ZTE M>
このようにGalaxyFoldは、今までの折り畳み端末の利点は継承しつつも欠点は全て解決した、まさに「理想の折り畳みスマホ」と呼べます。
この変態機構でありながら、問題なく遊ぶことができます。しかも「AR+」にも対応しており、ポケモンとリアル世界との融合を大画面で楽しめます。好きなポケモンとの触れ合いを楽しむのに、この変態端末は最高にぴったりです。
メイン・カバーディスプレイ両方でプレイしてみましたが、どちらでもジャイロの検出は正常で、快適にプレイ可能です。ポケモンを捕まえるときには、何度も画面をひっくり返す必要も無ければ、大画面の際に自分の顔とにらめっこする必要もありません。背面にカメラが必ずあるという構造が、ここで活かされます。
レアなポケモンのゲット時やスナップ時はメインディスプレイ、ポケストップ巡りやバトル時はカバーディスプレイと、場面に応じて画面を使い分けられるのも、折り畳み端末ならではの利点です。
周囲を見渡しやすく、快適に遊べます。両手で横持ちするタイプのゲームですが、4:3に近い画面比率が、ここで活かされます。画面サイズの割には、親指が画面真ん中に届くぐらいの絶妙な大きさで、建物の構築や敵をタッチで攻撃する際などに、自然と指が届きます。
なお、カバーディスプレイで楽しむマイクラも、21:9のパノラマ表示で一味違った雰囲気が楽しめます。
GalaxyFoldを可愛がっている間に、ちょうど配信開始されておりましたので、こちらも動作確認してみました。ジャイロ含めて問題なく快適に動作しますが、端末形状から察しの通り残念ながら「VR非対応」です。ただし、いつでもどこでも、カノジョと大画面で会いたいのであれば、GalaxyFoldは最高の選択肢になります。メインディスプレイで見るラブプラスは、なかなかに迫力があります。
なお、このゲームは分割表示やポップアップ表示に非対応です。
とりあえず、AnTuTuベンチマーク(v8)を回してみました。隣でファンを回し、風を当てて冷却しながらの測定です。
結果は、総合スコア「452553点」でした。Snapdragon855のスコアとしては平均以上ぐらいでしょうか。
ちなみに、手持ちの端末では、Snapdragon845のAQUOS R2が「326156点」、Snapdragon835のGalaxyNote8が「260966点」でした。
なお、風を当てずに自然冷却でベンチマークした場合は、総合スコア「446504点」でした。
GalaxyFoldの一番の魅力はここにあると思います。Galaxyが昔から強かった部分であり、今までの折り畳み端末から比べて、できることが格段に増えました。
Android7.0からの画面分割によるマルチ表示については、どの向きでも左右にアプリが分割されます。しかも、境界線を左右に動かして、比率も変えられます。これは、今までの2画面スマホでは実現できなかった、GalaxyFoldならではの画面分割です。
さらに、画面右側を上下にも分割でき、左・右上・右下と、計3アプリを分割して1画面に表示できます。これは今までのGalaxyにもありませんでした。
そして、Galaxyならではの機能として、「ポップアップ表示」を使って、アプリをウィンドウ表示できます。これは他のGalaxy端末でもできるのですが、ここで大画面かつスペックモリモリなGalaxyFoldの見せ所です。7.3インチの大画面をデスクトップ画面として広々と使うことができ、余裕のスペックでアプリも快適に動作します。これにマウスやキーボードをつければ、もはやパソコンです。ホーム画面は設定で画面回転可能なので、状況とUSBポートに応じて、縦持ちか横持ちかを選択できます。
Androidバージョンが9(Pie)であるため、一部アプリは非アクティブ時に動きが止まってしまいます。しかし、Android10からはマルチ表示に強くなり、非アクティブなアプリも動き続けるようになっております。GalaxyFoldの本気は、Android10のバージョンアップ後に発揮されるかもしれません。
なお、カバーディスプレイでのマルチ表示は一切行えません。
アウトカメラについては、GalaxyS10シリーズと同じでしょうか。ただし、インカメラについては2種類あります。
背面についている3つのアウトカメラは「メインカメラ」、メインディスプレイ側にある2つのインカメラは「サブカメラ」、カバーディスプレイ側にある1つのインカメラは「カバーカメラ」と呼びます。
メインカメラについては、0.5倍の超広角から、10倍ズームの望遠まで対応しており、スーパースローモーション等の撮影も可能です。
サブ・カバーカメラでは、AR絵文字機能などのGalaxyならではの機能が使えます。
この辺りも、GalaxyS10シリーズと同じでしょうか。
GalaxyFoldは急速ワイヤレス充電に対応しており、Qi対応のワイヤレス充電台に置けば充電されます。急速充電対応の充電台なら、5Wを超える電力で充電可能です。auのアクセサリとしては、「急速ワイヤレス充電パッド 15W」が対応しております。
GalaxyFoldは、ワイヤレス充電を「させる」こともできます。「ワイヤレスパワーシェア」を有効にし、ワイヤレス充電対応機器を背面にくっつけると、GalaxyFoldから対応機器への充電ができます。さすがに急速充電ではありませんが、USBポートで自身を充電しながらワイヤレスチャージもさせるという、2重充電が可能です。
メインカメラの付いた面の下部側面にUSB Type-Cポートが付いており、充電やデータ通信、付属のOTG変換アダプタでのUSBデバイス接続などができます。
他の変換アダプタ等とつないだ場合は、以下のような動作をしました。
「SAMSUNG DeX」が起動し、デスクトップPCのように使えるモードになりました。
GalaxyS8から対応している機能で、これはGalaxyFoldでも対応しているようです。
筆者の検証環境では使えました。
今回使用したのは変換アダプタ内にサウンドチップがあって、USBオーディオデバイスとして機能するタイプのものです。変換アダプタは割高ですが、OTG対応しているType-C機器でドライバが合えば、PCだろうとスマホだろうと大体使えます。
ここでは、AQUOS zero付属のものを使用して検証しましたが、難なく認識し、変換アダプタから有線イヤホンにてサウンド出力できました。イヤホンジャックがどうしても欲しいという方は、とりあえずこれでどうにかなりそうです。
残念ながら、今回の検証環境では非対応であると判断しました。
使用したのはUSB Type-Cの規格で言う「Audio Adapter Accessory Mode」準拠の物で、Type-Cポートから直接アナログのサウンドを入出力するタイプのものです。変換アダプタは安く買えますが、対応機器は限られます。DAC内蔵型の例で使用したAQUOS zeroでも非対応でした。
ここでは、MediaPad M5 8.4に付属のものを使用して検証しましたが、「接続されたUSBデバイスは対応していません」と表示され、使うことはできませんでした。
変態端末マニアにおなじみの「CAT S60」を使って、サーモグラフィーを撮ってみました。
GalaxyFoldでゲームや無茶をしているときには、メインカメラの右側が特に温かくなります。メインディスプレイ側から見ても、その部分は特に温かいです。なお、その反対側で若干熱を持っているのは、メインディスプレイのICチップでしょうか。
背面全体が熱くなるわけではないので、熱によってバッテリーの劣化を早めてしまう心配はなさそうです。
GalaxyFoldのメインディスプレイは「右側にノッチのある、スクエアに近い画面」、カバーディスプレイは「やたらと縦長な画面」となっております。アプリ開発者にとっては、ステータスバーとナビゲーションバーが常時表示されているタイプなら、画面サイズに臨機応変に対応できれば、GalaxyFoldでも問題なし、と見れます。全画面表示の場合は、メインディスプレイの右寄りノッチと、カバーディスプレイの四隅の丸まりに注意が必要かもしれません。
また、他の折り畳み端末と同じく、「アプリ起動中に画面サイズを変更可能」というところにも注意が必要です。画面回転やアプリ分割画面を許可しない構成でも、GalaxyFoldの場合はメイン←→カバーディスプレイの切り替えで、解像度変更が可能です。しかも、スクエアに近い画面と、やたら縦長な画面との切り替えになるので、構成が甘いとボロが出やすいです。
そもそも、Galaxyには「ポップアップ表示」という、縦長専用のアプリを超横長表示にもできてしまう悪魔の機能があります。アプリ側でうまく設定すれば、起動中のサイズ変更含めて無効化できますし、今の時代、サイズ変更に関する設定・対応はちゃんとしておくべきです。
・重量
当時重いと騒がれたiPhone11ProMax(226g)や、XperiaXZ2Premium(236g)よりも重い、276gです。実際に持ってみると、ずっしり来る重さです。とはいえ、7インチタブレットとして考えると全然軽いですし、折り畳んだ際は、横幅が小さく片手で持ちやすい形状ですから、さほど苦にはならないのではないでしょうか。
・イヤホンジャック、変換ケーブルが無い
GalaxyFold本体にはイヤホンジャックがどこにもなく、イヤホンジャック教の方には問題です。しかも、付属品に「Type-Cイヤホンジャック変換ケーブル」もありません。しかし、付属品としてワイヤレスイヤホンの「GalaxyBuds」があるので、普通に音楽を聴く分にはこれで十分です。ただし、ゲーム中は0.5秒ほどの遅延がありました。
・耐久性の実績懸念
まだ出たばっかりの画面折り曲げ技術ゆえ、この先末永く使えるかどうかは正直な所まだわかりません。無論、想像以上の耐久性を保持している可能性もあります。しかしながら前例のない技術ゆえ、若干の心配は付きまといます。
これまでのスマホとは異なりますため「故障紛失サポート」を付けたほうが精神衛生上いいでしょう。ただし、月額利用料や修理費などは、auの他のAndroid端末よりも倍近く高い設定です。
また、画面はAMOLEDであるため、焼き付きにも気をつけないといけません。明るさ・画面点灯時間・ダークテーマ等、焼き付き対策もしておきましょう。
GalaxyFoldの可能性について調べてみたところ、折り畳み端末の分野にGalaxyが参入したことで、未体験の驚きと感動とともに、想像を超える無限の可能性が、銀河級に広がっておりました。
境界線の無い折り畳み画面に、未来を創造する力は十分にありそうです。
ただし、その未来にたどり着くには、約25万円という端末価格が大きく立ちはだかります。今後の画面折り畳み端末については、価格をどれだけ抑えられるか、どれだけ耐久性を確保できるのかは課題のひとつ。逆に言うとこの価格差を乗り越えてしまった場合、非常にメリットの多い端末だと強く感じました。筆者は今回の10日間に及ぶレビュー体験により、かなりの愛着が湧いてしまったのも事実です。
メーカーのサムスンからは、縦に折りたたむタイプのスマートフォンに関する発表もありました。横に折り畳む“GalaxyFold系”を含め、折り畳み端末というジャンルの今後が気になるところです。
文章:おふがお
写真:おふがお、オサダコウジ