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今回はぽんたさんのブログ『ぽんたのドイツ観測所』からご寄稿いただきました。
現在ドイツは依然として経済が好調な状態が続いているが、かなり前から叫ばれている問題として専門的労働力が不足していることが挙げられる。この為、ドイツでは現在労働力の不足及びその質の低下が著しく、ドイツ経済は本来持っているポテンシャルを出し切れていないとされている。また今後更に進行するであろう少子高齢化社会において、経済の持続的な発展にも大きな足かせになると見られている。まあ、先進国ではどこも似たような状況だろう。
そしてこの問題は、やはり優秀な外国人労働力を積極的に受け入れて解決すべきと言う声が大きく、ドイツでは現在の経済情勢に対応できる新たな移民法の策定が待ち望まれている。そういう訳で火曜日にひとまず、その新たに出来るであろう移民法の枠組みとなる要点が内閣により承認された。これは、将来的にドイツで職を見つけようと考えている若い人たちにとっては注目すべきニュースだろう。
その肝心の具体的な内容であるが、予想通りEU外からの外国人にドイツでの就労の門戸が広がるものとなった。まず既に母国で専門教育を受けたEU外からの外国人は、就職活動の為に最大6ヶ月間ドイツに滞在できることが将来的に可能になる。もちろん、その職は母国で受けた専門教育に適したものである事は言うまでもない。更に重要なポイントとして、その職業において必要なドイツ語能力を証明しなければらないことが挙げられる。
現行のルールでは大学卒であれば、そのような理由で最大6ヶ月間ドイツに滞在する事が既に認められているそうだが、必ずしも大学卒である必要はなくなる。
また、将来的には母国で受けた専門教育とそれに適したドイツでの労働契約を証明しさえすれば、ドイツでの労働が職種に限らず許可される。
現行のルールでは、仮にEU外の外国人がドイツでの労働契約にサインをしても、必ずしも労働許可が下りるとは限らない。なぜなら、その為にはまずその職種が市場で人手不足と労働局から認められている必要がある上に、他に国内で適した人材が居ないかチェックされるからだ(EUブルーカードは例外)。要するに余程の理由がない限り、近くのドイツ人を採用しろという話である。しかし、将来的にはそのような制限も無くなる。
何れにしても、将来的にドイツで働こうと考えている人にとっては、今後チャンスが確実に広がるのは間違いない。日本で受けた教育が認められない事は、ドイツで生活する上での絶望的なデメリットだと個人的には感じていたが、あくまで形式的にはそのようなデメリットも少なくなりつつある。
但し、今回の決定はあくまでも枠組みであるので、今後当然細部を詰めて行かなければならない。 例えば、専門教育を受けたと言っても、当然のことながら国によって教育システムはまちまちなので、母国で受けた専門教育の妥当性やレベルをどのような形でドイツで証明され得るのかはまだ不透明だ。因みにドイツは職探しの時点でかなり専門性を問われるので、日本のように新卒を一括に採用し、後は会社が育てるというスタイルではない。
ドイツ語に関しても、どの程度のレベルを求めるかはまだ未知数である。ドイツ語は基本的に英語と比べると複雑な文法などで最初の段階が結構難しいので、初心者にとってはハードルがかなり高い。しかし、外国人を受け入れ社会に適応させる上で、現地の言葉を習得させるのは不可欠であり、昨今のドイツでは非常に重視されているポイントである。郷に入って郷に従えない人間が社会の大きな問題になるのは、現在の情勢を見れば明らかだ。
そして、今後はこの枠組みの細部を詰めて、新たな移民法の作成へと繋がっていくことになるだろう。肝心なのは、これは同じ外国人関連でも、人道的な意味の大きい難民問題とは別のテーマであると言う点だ。あくまでも、経済成長の為に優秀な労働力を確保したいドイツと、より高い収入、労働環境を得たいEU外の外国人との利害が一致する事を目的とした経済政策である。
つまり、優秀な外国人を積極的に取り入れる一方で、自国経済の利益にならない、或いは社会に適応できない外国人をどうやってブロックし、そして排除するかと言う点も今後より一層大きなテーマになる事は確実だ。今後新しく出来るであろう移民法は、一見外国人に優しいように聞こえて、実は厳しい選別を伴ったシビアなものになると思っている。外国人の選別および、国内市場への流入を高いレベルでコントロールする事が目的だ。
そして、多くの有能な若者にとって就職活動というのは今後国内だけでなく、国外も含めた選択肢も今後増えていく筈だ。それどころか、有能な外国人は今後争奪戦にまでなると言われている。近い将来、身近でありふれた職業でも外国に就職する事は、おそらく特別な事ではなくなるだろう。
執筆: この記事はぽんたさんのブログ『ぽんたのドイツ観測所』からご寄稿いただきました。
寄稿いただいた記事は2018年11月02日時点のものです。