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通常、映画の公開は各系列の基幹となる映画館から始まり、週末興行成績で品定めされ、上映期間が決められていく。封切り後2週間が最も上映館が多く、徐々に減っていくのが通例だ。
しかし、『この世界の片隅に』はその真逆を行っている。11月12日公開時点での上映館は63館。大手作品のような大規模な宣伝も行えていないにも関わらず、その卓越した作品性が口コミで広がり、2週連続で観客動員TOP10入りしたところから全国の映画館がこぞって参入を表明し、12月19日時点で当初の3倍を超える192館での公開が決定している。
大手映画会社の中で、いち早く上映を決めたのは東映だ。封切り3週間後の12月3日(土)に直営館である丸の内TOEIでの上映を開始。そして遂に、松竹もクリスマス商戦の肝となる12月24日(土)から松竹系本丸とも言える新宿ピカデリーでの公開を発表した。一方、年明けまでに『君の名は。』を売り尽くしたい東宝は予期せぬライバルの出現に警戒態勢。都心部のTOHOシネマズでは当面『この世界の片隅に』が上映されることはなさそうだ。
2016年は『シン・ゴジラ』等の大手系から『湯を沸かすほどの熱い愛』等の独立系まで、多くの名作が輩出されたまさに”邦画の当たり年”だった。『この世界の片隅に』はその締めくくりに相応しい、映画史に残すべきアニメーション映画の傑作だ。しかし、従来の業界構造で言えば、恐らく日本アカデミー賞を取ることはないだろし、テレビ放映されることもないだろう。是非、多くの方が劇場に足を運び語り継ぐことで、観客の”記憶に残る作品”にして欲しい。
◆ 映画『この世界の片隅に』ホームページ [リンク]
◆ 画像提供:「この世界の片隅に」製作委員会
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(執筆者: 荏谷美幸) ※あなたもガジェット通信で文章を執筆してみませんか