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IoTとは、デバイスなどの物理的な「モノ」をインターネットに接続することで通信機能を持たせ、データの収集および分析する仕組みのことです。適切に運用すれば、大幅な業務効率化が実現できる一方で、インターネットとの接続によるリスクには注意が必要です。インターネットを利用する際に考えなければならないセキュリティの問題が、IoTを導入する際には常につきまとっているのです。
IoTではセンサーやカメラなどを設置し、顧客情報を含めた多くの重要なデータを取り扱うこともあります。リアルタイムで顧客動向を把握できたり、店舗内の顧客の移動経路を正確にデータ化できたりとメリットは多い反面、これまでにはない膨大な個人のデータをオンライン上で扱うことになるため、デバイスのセキュリティとプライバシーへの配慮は、中小企業がIoT技術を導入する際に特に注意すべき重要な要素です。
これらのことを軽視してしまうと、企業の社会的信用の失墜をはじめとした重大な損失を被りかねません。つまり、IoTの導入にあたっては、セキュリティリスクを最小限に抑え、プライバシー保護の対策も講じるなど、ビジネスの安全を保つための取り組みが必須条件なのです。
ここでは、IoT導入時のセキュリティとプライバシーの保護に関する主要なポイントを解説します。
まず重要なのはインターネットに接続するデバイスのセキュリティ対策です。IoT化のためにインターネットに接続するデバイスが、多くのセキュリティ脆弱性を持っている可能性があります。
そのため、IoT導入前の段階でデバイスのセキュリティ機能を確認して必要な対策を講じた上で、運用開始後も常に最新のファームウェアやセキュリティパッチを適用することが重要です。
デバイスとインターネットの間で送受信されるデータを暗号化することで、セキュリティは格段に強化できます。暗号化を行えば、データの漏洩や不正アクセスのリスクを大幅に下げることが可能です。
システムの導入時には、データの送受信がどのような形で行われるのかを予めしっかりと確認してから導入を決定することが求められます。
不正アクセスを防ぐためには、IoTデバイスへのアクセスが厳格に管理されなければなりません。そのためには、適切な認証メカニズムを設定することが求められます。
例えば、二重認証を利用したり、登録されたスタッフしかアクセスできないように設定しておいたりと、アクセスを管理する仕組みづくりが重要となるでしょう。
繰り返しになりますが、IoTデバイスはネットワーク経由で操作されます。そのため、ネットワーク自体のセキュリティも重要なポイントとなります。
オープンなWi-Fiを介してシステムにネットワークにアクセスするなどもっての外ですが、ファイアウォールや侵入検知システムを適切に設定するなど、必要に応じたセキュリティソフトの導入も重要です。
セキュリティ状況は常に変化します。悪意を持った外部からのアクセスやそれに対応するセキュリティシステムの進歩はまさにイタチごっこです。
そのため、IoTシステムを継続的に監視し、必要に応じてセキュリティ対策を更新することが求められます。
上記のようなデバイスやネットワークの対策といったハード面のセキュリティだけでなく、「大切なデータをしっかりと保護する」という社会的責任に基づくソフト面の対策も重要です。
こうした観点からみると、企業として顧客のプライバシーを保護するために、データの収集と利用に関する明確なポリシーを設定し遵守する姿勢は、企業がデジタル社会でビジネスを行う上で最も基本となる考え方だと言って良いでしょう。
IoTの導入というと、ハード面に目が向きがちですが、同時にこうしたソフト面の整備を進めることも欠かせません。
どれだけ優れたシステムであろうと、それを扱うのは最終的に人間です。そのため、システムを扱う従業員の教育こそが、セキュリティ対策として最も基本的な戦略でもあります。
実際、多くの情報漏えいは、ヒューマンエラーが原因で引き起こされています。
機密データを扱う責任とその重要性を従業員1人ひとりがしっかりと理解したうえで、適切にシステムを使いこなせる環境を整えなければ、本当の意味でセキュリティ環境が確保されることはありえないのです。
従業員がセキュリティのベストプラクティスを理解し、実行するための研修には十分な時間と費用をかけるように計画を立てましょう。
セキュリティ対策もしっかり講じた上で、どれだけ効果的に見えるIoTシステムを導入したとしても、それが実際に目標とする成果を挙げなければ目的は達成されません。効率化と生産性をしっかりと数値化し、その成果を評価して初めてIoTプロジェクトの成否がわかるのです。
ビジネスである以上、当然ながら「なんとなく便利になった」という感覚があるだけでは不十分です。では、どのように成果を測定すれば良いのでしょうか。
IoTの力を最大化するためには、具体的に成果を評価することが欠かせません。IoTの成果を測定するためには、ROI(投資収益率)をもとに定量的な評価を実施します。
ROIとは、「Return On Investment」の略で、投じた費用に対してどれだけの利益を上げたかを表す数値を指し、日本語では投資利益率などと訳されます。この数値が高いほど「投資効率が高い」。つまり、IoTを導入した「効果があった」と判断されるのです。
IoT投資のROIを正確に評価することで、中小企業はIoTプロジェクトの価値を把握し、今後のビジネス戦略をより効果的に立てることができるでしょう。
ここでは、ROIにおいて評価すべきポイントやその方法を説明します。
IoTを導入することで、運営コストがどの程度削減されたかを計算します。
自動化による人件費の削減や、エネルギー消費の最適化によるコストダウンなど、実際にどれだけのコスト削減効果があったのかを正確に計算することが重要です。
IoTの導入により売り上げが増加した場合は、その増加分を計測します。
IoTの導入は、既存の販売戦略の効率化だけでなく、顧客体験の向上によるリピート率の向上などの形でも売上増加に繋がる施策です。
また、IoTにより新しいサービスや製品を生み出し、新しい収入源を得ることもあります。当然ながら、IoT導入によって生まれた利益を包括的に計測することが重要です。
IoT導入により業務プロセスがどれだけ効率化されたかを評価します。
生産性の向上や業務の自動化による時間節約など、一見数値として計測しづらい成果もありますが、これらも出来る限り正確に数値化することで、IoT導入の成果をより明確に評価できます。
IoTプロジェクトを評価するには、短期的な利益向上やコスト削減効果だけでなく、長期的な影響も考慮に入れて評価することが求められます。
例えば、「顧客満足度の向上が今後の企業の評価にどのような影響を与えるか」など、必ずしも数値として表すことのできない基準値も評価することで、IoTがビジネスに与える影響をより深く理解することができるでしょう。
また、新たな市場の開拓や競争上の優位性の獲得など、IoT導入に伴うリスクや未来のビジネスチャンスも評価の対象に含める必要があります。
具体的に数値化できる成果の測定を正確に行った上で、それらを根拠に長期的な影響をしっかりと予測することで、総合的にIoTプロジェクトを評価しましょう。
中小企業にとって、DXはビジネスを革新する重要な戦略であり、その中でもIoT技術は革新の鍵です。
業務を自動化したり、重要なデータを収集・分析したりすることができるIoTを取り入れることにより、運営の効率化、顧客体験の向上、さらには新しいビジネス機会の発見の可能性を手にできるでしょう。
また、IoTを通じてリアルタイムデータの収集と分析が可能になり、これにより市場の変化に迅速に対応し、顧客の要望に合わせたサービスを提供することが可能になるのです。さらに、コスト削減を進めていくことも期待できます。
セキュリティとプライバシーへの配慮を行ったうえで、適切にIoTを導入することで、中小企業はより強固な市場競争力を築くことができるでしょう。
既に多くの企業が取り組み、導入しているIoT技術。いまだに取り組めていない企業は、大きく遅れを取っていると言わざるを得ません。
IoT技術は中小企業が持続可能な成長を遂げるための重要な鍵となり、ビジネスの未来に新たな道を開く可能性を秘めています。
未達の企業は、ぜひともこの機会にIoT導入を検討する機会としてください。
The post 中小企業におけるIoT技術の活用とビジネス利益【後編】注意点と評価 first appeared on DXportal.