企業におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みは年々進んでいます。特に今年、2025年は、経済産業省がこれまでDXレポートなどで警鐘を鳴らし続けていた「2025年の崖」問題が顕在化する年でもあります。

そんな激動の時代が予測される2025年初頭にあたり、DXportal®の運営会社である株式会社MUの代表取締役社長である山田元樹(以下:山田)に「DX推進会社」としての考えと今年の展望についてインタビューしました。

今後ますます激化するビジネス環境を乗り切るためのヒントとして、どうぞ最後までお付き合いください。

DXの本質と企業が取り組む理由

DXは、現代の企業経営における重要なテーマとして注目されています。企業がなぜDXに取り組むのか、その本質的な理由について深掘りすることは、DXを成功させるための第一歩だと考えています。

この点について、まずは代表としての考えを教えてください。

山田

「企業がDXに取り組む理由としては、生産性や効率を高め、結果として収益を上げるという根本的な目的があります。

DX自体は義務付けられたものではありませんが、経営者の立場からすると、効率化のために有効な手段が存在するのであれば、それを採用しない理由はないでしょう。特に競争が激化している現代では、効率的で戦略的な業務運営が求められるため、DXは単なる流行ではなく、企業にとって必要不可欠な選択肢となっています。」

流行ではなく企業にとっての必要不可欠な選択肢ということですが、DXの本質とはどういうものなのでしょうか。

山田

DXの本質は、戦略的目標に向けた設計にあります。

DXとはなんなのかという問いに対して、DXportal®では『デジタル技術とデータを活用し、既存のモノやコトを変革させ、新たな価値創出で人々の生活をより良くすること』と定義していますが、つまりは、テクノロジーはあくまで手段であって、その導入目的は企業に真の価値をもたらすものでなければならない、という考え方です。

例えば、問い合わせを増やす目的でWEBサイトを制作する場合、その成果が問い合わせ対応の迅速化や顧客満足度の向上につながれば成功です。しかし、問い合わせ件数が増えたことでスタッフが対応に追われ、他の業務効率が悪化してしまったら、顧客満足度は下がってしまうかもしれません。それは本末転倒でしょう。そのような結果では、本当の意味でのDX、つまり価値を創出する取り組みとは呼べません。」

企業に真の価値を提供するDXを進めるためにはどうすればよいのでしょうか。

山田

「DXというのは、単なる改善施策の一環として捉えるべきものではありません。企業が直面する課題や目指すべき目標に対して、どのように解決策を導き出すのかを考える必要があります。この視点を設計段階で持てるかどうかが、DXの成功を左右すると言っても過言ではないでしょう。

DXという概念を、単なるツールやシステムの導入と考えてしまっては意味がありません。DXの取り組みを、企業の目指すべきゴールと密接に関連させ、それを正しく理解し、戦略的に取り組むことで初めて、DXは企業にとって真の価値を提供するものになるのです。」

2025年の崖とDXの必要性

DXに関連して、「2025年の崖」という言葉をよく耳にするようになりました。

経済産業省が2018年に発表したDXレポートによると、2025年までに十分な対策が取られないと、日本ビジネス界は年間最大12兆円の経済損失が発生すると言われています。

株式会社MUとしては、この「2025年の崖」問題をどのように捉えているでしょうか。

山田

「まず『2025年の崖』とは、レガシーシステムと呼ばれる1970~1990年代に導入された古い基幹業務の維持が限界を迎えることと、それを扱えるエンジニアが減少していくという2つの問題を指します。この状況が重なることで、企業の競争力に深刻な影響を及ぼすリスクが高まっていくわけです。

これはなにも2025年という1年に限って発生する話ではなく、当然ながら2025年を過ぎたらDXはいらなくなるという話ではありません。それよりも『2025年ごろに過去の遺物が新しい時代に適応できなくなる時代がやってくる』という、ある種の警鐘を鳴らす意味合いが込められた言葉だと私は捉えています。

そもそもレガシーシステムは、古いプログラミング言語やフレームワークで構築されており、2025年頃にその耐用年数を超えてしまう物が多いのです。それを境にどんどん魔境化していき、企業としては負の遺産になってしまうと考えられています。それと同時に、それを保守・運用できる技術者の引退や不足が進行しています。

その結果、企業はシステム更新に多大なコストをかけざるを得なくなることに加えて、適応の遅れによってビジネスチャンスの喪失というリスクに直面していくだろう、という問題ですね。」

システムの問題と人的資本の問題。この2つの大きな課題に、2025年は直面するというわけですね。そんな中、DX界隈にとっての2025年はどんな年になっていくと予測していますか。

山田

「先ほども述べた通り、2025年の崖を考える際には、システムの問題と人的資本の2つの問題が大きく関わっているので、この両方を解決しなければならないことは間違いありません。具体的には、古いシステムが新しいトランザクション(処理の一貫性を持たせるためにデータベース管理システムで利用されるソフトウェアの処理方式)をどう支えられるか、あるいはその代替手段をどれだけ迅速に構築できるかがポイントでしょう。このあたりは今の技術だけではかなり難しい問題です。

とはいえ、AIが以前の予測より3年くらい前倒しでAGI(汎用人工知能)へと進化してきています。AGIというのは文脈を意識して判断することができる、人間のような汎用的な知能を持つ人工知能(AI)を指します。さらにその上にASI(人工超知能)というものがあって、組織的にAIが連携していき、人間の知能を遥かに超えた能力を持つ段階が来ると言われています。このASIも実現可能な状況へと近づいているため、人的リソースの不足問題などは、早い段階で解決するのではないかと考えています。

また、古いシステム、例えば今は使用されることが少ないCOBOL言語で書かれていた当時のシステムの維持や改修の課題についても、進化したAIを活用すれば今のエンジニアがCOBOLを扱うことも難しいことではなくなっているでしょう。

そうだとすると、『2025年の崖』で問題になってくるのは、実はシステムの老朽化や人的資本の問題ではなく、より本質的な問題として、やはり組織がその変化に追いつくことができるか否かになってくるのではないでしょうか。」

DXの今後と企業のアクションプラン

「2025年の崖」を目の前にして、企業はどのようにアクションを起こしていけばよいのでしょう。

山田

「2025年の崖を乗り越えるために、まず自社の現状を正確に把握することが重要です。これには、既存のレガシーシステムがどのように業務に影響を与えているかを理解し、その代替手段を検討することがあげられます。同時に、経営陣がDX推進にコミットし、現場との連携を強化することも欠かせません。

また、長期的な視点でDXを進めるための計画を立てることが必要です。その際、目標を明確にし、KPI(重要業績評価指標)やKGI(重要目標達成指標)を設定することで、具体的なアクションプランを構築できます。これにより、単なる効率化ではなく、持続的な成長を実現するDXが可能になるのです。」

先ほど今後期待されるAIのさらなる進化が話題に上がりましたが、現在すでに実用化されているAIがDX推進に果たす役割についてはどのように考えていますか。

山田

「例えば、生成AIは業務の効率化やデータの分析を自動化するための強力なツールです。ただし、AIが有効に機能するためには、前提条件を正確にインプットする必要があります。現時点では、AIだけで全てを解決することは難しく、人間の感性や判断力が求められる場面も多いです。

生成AIは、業務効率化や戦略的判断を補助する役割を担ってくれます。こうした点でのAIの強みは積極的に取り入れつつも、AIが行ったデータ分析の結果をもとに、どのような戦略を立てるかは、最終的に人間が判断する必要があります。AIと人間が互いに補完し合うことで、DXを成功に導けると考えています。」

今後の展望とメッセージ

最後に、DXを推進する企業に向けてメッセージをお願いします。

山田

「DXはまだ成熟していない分野であり、成功のためには多くの試行錯誤が必要です。つまり、DX推進には柔軟に対応する機動力や課題解決能力が求められます。私たちMUは、DXを依頼企業の伴走者として、課題解決と利益最大化を支援することを使命としています。二人三脚のサポートで企業様をお支えしますので、ぜひ一緒にDXを成功させましょう。」

取材を終えて

DXの未来は、まだ形作られている最中です。しかし、DXが企業の成長にとって不可欠な存在であることに疑いの余地はありません。また、今回のインタビューを通じて、その可能性が無限大であることを感じました。

企業がDXに取り組むことで、未来の競争力を構築する道筋を描くことができます。その道筋には多くの課題が待ち構えていますが、テクノロジーと人間の協働が、これらの課題を乗り越える鍵となるでしょう。

DXとは特別な企業だけが取り組むものではなく、すべての企業にとって今こそ必要な変革だということです。一歩踏み出す勇気が、新たな成長の扉を開きます。

2025年はDX推進においてエポックメイキングな1年となるはずです。それは新たな挑戦への出発点でもあるでしょう。

DXportal®では、今年も皆さまがその挑戦を成功に導くための情報と知見を提供し続けることをお約束します。

(DXportal®編集長:町田英伸)

株式会社MU

会社名:株式会社MU

所在地:神奈川県横浜市中区花咲町3-103-2 アマデウスビル7F

代表者:代表取締役社長 山田元樹

顧問:株式会社モコカコンサルティング 福田大真(https://mococa.info/

主な事業内容:DX推進事業、マーケティング支援事業、デザイン制作事業、システム開発事業、他

ホームページ:https://minority-united.com/

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情報提供元: DXportal
記事名:「 【2025年最前線】DX推進会社MU代表が語るDXの未来と成功の鍵