NMF(天然保湿因子)とは?




NMFとはNatural Moisturizing Factorという言葉の頭文字をとったもので、日本語に訳すと天然保湿因子となります。

天然保湿因子という言葉の通り、元々人の肌に備わった保湿成分で、肌の一番表面である「角質層」の細胞の中にあります。




NMFは強力に水分を引き付けて保持する




NMFの役割は、水分を引き付け(吸湿性)て細胞の中に貯め込み(保湿性)、肌の細胞が潤いを保つ状態にする事にあります。

人は通常体内から体外に向けて少しずつ水分が蒸発しているため、この水分をくっつけて留まらせる事で、肌の水分量を維持しつつ、肌のバリア機能を働かせているのです。




NMFはアミノ酸が主要成分




NMFはその40%がアミノ酸で出来ていて、その他に尿素などの成分が含まれています。

具体的には、下記の表のような成分で作られた保湿成分です。



NMF(天然保湿因子)の組成










成分名割合
遊離アミノ酸40%
ピロリドンカルボン酸(PCA)12%
乳酸塩12%
尿素7%
ミネラル19%
その他10%

NMF(天然保湿因子)内にあるアミノ酸それぞれの割合










アミノ酸の種類割合
セリン30%
グリシン18%
アラニン9%
スレオニン7%
アスパラギン酸5%
その他31%



NMFは肌の細胞が角質細胞になる時に作られる




以上のように肌の保湿機能として働くNMFですが、NMFが存在するのは肌の一番表面側である角質層の細胞だけです。

というのも、NMFは肌がターンオーバーによって徐々に表面に押し上げられてくる過程で作られるもので、細胞が顆粒層の位置から、細胞として死んで角質層に移動した後に出来るためです。



具体的には、肌の細胞が顆粒層に来た際に作られる「ケラトヒアリン顆粒」というものの中にある「プロフィラグリン」という成分が、顆粒層から角質層に移動する際に「フィラグリン」という成分に分解されます。

角質層にある細胞が「死んだ細胞」である事は前述の通りですが、細胞が死んでいてもこのフィラグリンが細胞の組織をくっつける働きをしているため、バラバラにならず一つの「角質細胞」として存在し続けます。



そして、さらにこのフィラグリンは「BH」と呼ばれる角質層にある酵素によって細かく分解され、ウロカニン酸という紫外線吸収剤の働きをする成分や、NMFとなります。




スキンケアコスメでNMFを補給しても細胞の中には入らない




NMFが肌の潤いを保つために重要なら、スキンケアコスメなどで補給すればいいように思えるのですが、NMFは細胞の中で働くため、コスメで補給してもそのまま有効な働きをするとは言えません。

そのため、NMFを増やすためにはどちらかというとNMFを作るための酵素をしっかりと働かせるためのコスメなどを利用した方が良いでしょう。

NMFの産生を補助するものとしては資生堂から発売されているコスメなどがあります。



ただし、細胞の外側でNMFと同じような働き方をさせる事は可能です。

例えばナノ化ヒアルロン酸などは肌の内部に浸透し、周囲の水分を吸着して留まらせるという効果があるため、角質細胞の外側ではありますがNMFと同じように肌の水分量を保持する事が可能です。




ピーリングや紫外線の影響でNMFは減少する




ピーリングを行った後は肌が乾燥しやすくなるという事は知られていますが、その原因の一つがNMFの減少です。

酸によって肌を溶かすピーリングのような施術は、肌表面のNMFなども減少させて一時的に乾燥しやすい状態を引き起こしますので、行った後の保湿ケアがとても重要になります。



また、紫外線の影響でもNMFが減少する事は分かっています。

紫外線を浴びると肌の細胞自体もダメージを受けますが、それだけではなく肌の細胞を支えている基底膜という部分を分解する酵素が活発化。これにより、肌の角質細胞やNMFがしっかりと作られなくなってしまうため、肌が保湿されなくなり乾燥しやすくなります。

紫外線のケアはこういった点からもしっかりと行うようにしましょう。




細胞間脂質とは?




細胞間脂質は角質細胞の間を埋めるように存在する成分の事で、よく保湿成分として名前が出てくるセラミドが主要な成分のものです。

細胞間脂質は水と脂が交互に積み重なるような構造をしていて、保湿と肌のバリア機能として働いています。




細胞間脂質の高い保湿機能




細胞間脂質は水分を油分がサンドイッチするような形で積み重なっています。

脂は水を通さないので、こうする事で水分が肌の外に蒸発する事無く、肌内部に留まるようになります。

もちろん、挟み込んだ水分だけではなく体内から蒸発していく水分も通さないため、細胞間脂質が十分に存在していれば肌は乾燥せずに潤った状態が保たれます。



NMFは細胞の中で水分を貯め込む働きであるのに対し、細胞間脂質はラップのように水分を閉じ込めるフタの役割を果たします。




肌の表面から害のある成分が侵入するのを防ぐ




細胞間脂質は肌のバリア機能としても非常に重要です。

水と脂を混ぜた事があればわかるかと思いますが、世の中の多くの成分は水に溶ける(水溶性)か、油に溶けるか(脂溶性)かのどちらかの性質を持っています。

細胞間脂質は水の層と脂の層が交互に積み重なる事で、このどちらの性質のものも侵入を許さず、肌表面から体内に危険な成分が侵入してくるのを防ぎます。

逆に言えば、例えば美白を目的としてコスメに配合されるビタミンCは水溶性のものと脂溶性のものがそれぞれありますが、そのどちらもこの細胞間脂質の壁に阻まれて肌の奥まで届ける事は難しいなど、スキンケアコスメの効果も充分に発揮しにくくなる原因となっています。




角質の細胞を繋ぎ合わせる働きをする




角質にある細胞は、細胞自体が死んでいるためそれ自体が活動は行いません。そのため、何もなければ細胞がすぐに剥がれて落ちていってしまいます。

これを解消し、角質層を成り立たせているのが細胞間脂質で、細胞間脂質によって角質層の細胞は強固に繋がり、ウィルスなどの侵入を防ぎ、体内の水分蒸発を防いでいます。




細胞間脂質はセラミドだけで出来ているわけではない




細胞間脂質というとセラミドばかりが重視されがちですが、細胞間脂質はセラミドだけで出来ているわけではありません。

具体的な構成としては下記のようになっています。








細胞間脂質を構成する成分割合
セラミド50%
遊離脂肪酸25%
コレステロール20%
糖脂質5%

ただし、上記は重量の比率。細胞間脂質の中での大きさとしてはセラミドとコレステロールと遊離脂肪酸が1:1:1で存在しています。

そのため、スキンケアではセラミド補給がよく行われますが、細胞間脂質として十分な働きを得るためにはセラミドだけを外部から補給しても完全ではないと言えます。




細胞間脂質も顆粒層で作られ始める




前述のNMFは肌の細胞が有棘層→顆粒層→角質層と移動していく時に作られると紹介しましたが、細胞間脂質もNMFを同じようなタイミングで作られます。



具体的には、顆粒層にある肌の細胞の内部では「層板顆粒」というものが作られ、この中にセラミドなど細胞間脂質の材料となるものが準備されます。

そして、細胞が死んで顆粒層から角質層に移動する際、この層板顆粒から細胞の外に成分が放出され、細胞間脂質として働くようになります。




NMFも細胞間脂質も、十分に作られるためには適切な肌の代謝が重要




ここまでのように、角質層の内部で肌の潤いを保ったり、肌のバリア機能として働いたりしているNMFと細胞間脂質。

これらはどちらも肌の細胞がターンオーバーによって移動してくる時に作られる成分ですので、肌がしっかりと生まれ変わるサイクルが出来ていない限りは量が減少し、保湿機能が低下していってしまいます。

保湿というと肌の表面でのケアばかりに意識が向きがちですが、肌の代謝を高めて正常なターンオーバーを促す事も保湿成分がしっかり存在する肌を作るためには重要なポイントとなりますので、生活習慣や食生活など広い視点でケアを行うようにしましょう。


情報提供元: 女美会
記事名:「 細胞の角化で作られる保湿成分「NMF」と「細胞間脂質」